解説者のプロフィール

西川眞知子(にしかわ・まちこ)
西川眞知子ライフデザイン研究所代表。上智大学外国語学部を経て、佛教大学卒業。第24代ミス横浜。幼少期に病弱だったのを、自然療法で克服したことをきっかけに、大学時代にインドやアメリカを歴訪。ヨガや自然療法に出合う。その経験と研究を基に、「日本ならではのアーユルヴェーダ」を提唱している。『これ一冊できちんとわかるアーユルヴェーダ』(マイナビ出版)など、著書は40冊以上。
美容と健康に役立つ最高の組み合わせ
私は長年、インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」の研究を続けています。
アーユルヴェーダでは、食事の際、その人の消化力に合った質と量を大切にします。消化できないものを食べたり、食べ過ぎたりすると、アーマという毒素が体内に生じるからです。このアーマが体にたまると、マイナスな症状を引き起こすと考えられています。
また、食材の組み合わせも重要なポイント。この組み合わせによって、食材同士の力が大きく高まったり、逆に効果を打ち消し合ったりしてしまいます。
こうしたアーユルヴェーダの考え方で見ると、「干しブドウ酢」は、美容と健康に役立つ最高の食品と言えるでしょう。
[別記事:「干しブドウ酢」の作り方→]
例えば、干しブドウ酢の材料である、リンゴ酢。酢の酸味は、火の性質を持っているため、代謝を高め、体にたまった余分なものを燃えやすくする効果があります。また、体とともに心も燃えやすくなるため、鬱々とした気分がスッキリ解消されます。
次に、ハチミツ。精製した砂糖のような甘味は体を冷やすと考えられていますが、ハチミツは、体を温め代謝を高めます。
ただし、ハチミツは加熱によって毒素が発生するので、注意が必要です。干しブドウ酢を作る際も、熱を加えた料理に使う場合は、ハチミツを抜いた方がよいでしょう。
そして最後に、干しブドウ。これには、胃腸に負担をかけない良質な糖分が豊富です。体内で速やかにエネルギーへ変わるため、老化防止に役立ちます。
さらにインドでは、ブドウは夏の強い日差しで弱った目の調子を整えるとも考えられています。そのため、目に関する症状にも、効果が期待できます。
このように、栄養豊富な干しブドウ酢は、どの体質の人にも役立ちます。

干しぶどう酢は三つの体質(*後述)に合う最高の組み合わせ!
【干しブドウ】
胃腸に負担がかからず消化できる・老化防止・弱った目の調子を整える
→乾燥しやすいヴァータや、炎症を起こしやすいピッタに◎
【酢】
代謝を高める・マイナスな気分の解消・血圧や血糖値の上昇を防ぐ
→カパと酸味は合わないが、リンゴ酢は代謝が上がるので◎
【ハチミツ】
体を温めて代謝を高める・体にため込んだものを吐き出す
→ため込みやすいカパに◎
体質やその日の気分で「ちょい足し」がお勧め
アーユルヴェーダでは、人間の体質を三つに分けています。
一つ目は風の性質が強い「ヴァータ」、二つ目は火の性質が強い「ピッタ」、三つ目は地と水の性質が強い「カパ」。それぞれの特徴は、次の通りです。
1. ヴァータ(風の体質)
ヴァータの人は忙しく、疲れがたまりがち。肌は乾燥し、気持ちは不安定になりやすく、不眠や貧血も多いです。おなかには毒素がたまりやすいため、便秘や下痢をくり返します。
2. ピッタ(火の体質)
ピッタの人は、イライラしがちで、何事もきっちりしないと気が済みません。そのような性質上、炎症を起こしやすいので、胃潰瘍などになることが多いです。
3. カパ(地・水の体質)
カパの人は、いろいろなものをため込みがち。そのため、水分や脂肪がつきやすく、むくみやすかったり、太りやすかったりします。運動不足だったり、重だるい気分になったりすることも多いです。
干しブドウ酢は、これら全ての体質にお勧めですが、それぞれあるものを「ちょい足し」すると、より効果が高まります。
ヴァータの人にお勧めなのが、みそ。発酵食品であるみそを少し加えることで、整腸作用がより期待できるでしょう。
次に、ピッタの人。実は、干しブドウには炎症を鎮める作用があるため、ピッタの人にはとても相性がいい食材です。
しかし、ピッタには酸味が苦手な人が多いよう。そんなときは、重曹を少しまぶすのがお勧めです。酸味が抑えられて、食べやすくなります。
なお、この食べ方は、ピッタだけでなく、ハチミツの糖分が気になる人にもよいでしょう。ハチミツを入れずに作った干しブドウ酢に重曹をまぶすと、干しブドウの自然な甘味が引き立ち、おいしくいただけます。
最後に、カパの人。このタイプには、ガラムマサラがお勧めです。スパイスの力で、解毒作用と脂肪の代謝が高まるので、停滞しがちな気分もピリッと引き締まるはずです。
体質別に干しブドウ酢の食べ方をご紹介しましたが、どんな体質の人でも、季節や環境次第で異なる性質が高まります。例えば、カパの人でも、ストレスでヴァータの性質が高まる……といった具合にです。
そんなときは、その日の気分や体調に応じて、食べ方を変えてみてください。便秘や肩こり、腰痛、不安にはみそ。イライラには重曹。気分の落ち込みや運動不足にはガラムマサラ。これらを、それぞれ「ちょい足し」するのがお勧めです。
2日で便秘が解消!ウエスト周りもスッキリ
最後に、実際に干しブドウ酢を食べて、効果があった方の例をご紹介しましょう。
ある40代の女性は、見た目はスリムなのに、食事の油脂を完全に抜くなどして、熱心なダイエットに励んでいました。また、便秘症で、1週間お通じがない日もあったそうです。
そんな彼女に、干しブドウ酢と少量の良質の油脂の摂取を勧めたところ、たった2日で便秘が解消。ウエスト周りもスッキリし、ダイエットが必要なくなったと喜んでいました。
干しブドウ酢の材料には、それぞれ老化防止や生活習慣病の予防、お通じの解消などの効果があります。ですから、この組み合わせだけでも、十分効果が出たのでしょう。
そのまま食べてもよし、その日の気分や体質に合わせてちょい足しアレンジをするもよし。さまざまな組み合わせで、大きな美容・健康効果を発揮する干しブドウ酢を、皆さまもぜひ、お試しください。
その日の不調を解決する「干しブドウ酢」の食べ方
[別記事:「干しブドウ酢」の作り方→]
ヴァータ(風の体質)
「風(ヴァータ)」はこんな人
常に不安を感じる・焦りを感じる・気持ちが不安定だ・疲れやすい・不眠や貧血になることが多い・下痢や便秘をくり返す・肌が乾燥している
ヴァータの人は、おなかに毒素がたまりやすい傾向にあります。発酵食品であるみそと組み合わせれば、整腸作用が期待できるのでお勧めです。

干しブドウ酢 + みそ
【材料】
干しブドウ酢、みそ、ハチミツ……適量
【作り方】
①干しブドウ酢をペースト状にすりつぶす。
②①にみそを加え、混ぜる。
③ハチミツを加えて混ぜたら、出来上がり。
ピッタ(火の体質)
火(ピッタ)はこんな人
常にイライラしている・すぐに怒ってしまう・小さなことがすごく気になる・他人のアラが見えてしまう・炎症を起こしやすい・よく胃潰瘍になる
ピッタの人の多くは、酸味が苦手なようです。そんなときには、重曹を少しまぶすのがお勧め。酢の酸っぱさが抑えられ、干しブドウの自然な甘味が引き出されます。

干しブドウ酢 + 食用重曹
【材料】
干しブドウ酢、重曹……適量
【作り方】
干しブドウ酢に重曹をまぶして出来上がり。
※重曹をかけるだけで十分甘味が引き立つので、ハチミツなしの干しブドウ酢で作るのがお勧め。
カパ(地・水の体質)
地・水(カパ)はこんな人
やる気が出ない・重だるい気分が続く・なんとなく気分が落ち込む・外に出るのがおっくうだ・むくみがある・運動不足だ
カパの人は、水分や脂肪をため込みがちで、気分も重だるいことが多いです。解毒作用や脂肪燃焼効果のあるスパイスと合わせれば、心も体もピリッと引き締まります。

干しブドウ酢 + 食用重曹
【材料】
干しブドウ酢、スパイス……適量
【作り方】
干しブドウ酢にスパイスをかけて出来上がり。
※ガラムマサラの他、黒コショウやサンショウ、七味トウガラシともよく合う。
干しブドウ酢アレンジレシピ
[別記事:「干しブドウ酢」の作り方→]
干しブドウ酢の田楽みそ

優しい甘さで気分もほっこり
【材料】(2〜3人分)
厚揚げ(4等分に切る)……1枚
コンニャク(4等分に切る)……1枚
白ゴマ……少々
Ⓐ干しブドウ酢(細かく刻む)……大さじ3
※ハチミツ抜きのものを使う。
みそ……大さじ1と1/2
【作り方】
❶Ⓐの材料を混ぜ合わせ、干しブドウ酢みそを作る。
❷厚揚げを、オーブントースターでこんがりと焼く。コンニャクはゆでる。
❸②をそれぞれ串に刺して器に盛り、①を乗せる。白ゴマを振り、出来上がり。
【ポイント】
干しブドウ酢とみその割合は、2:1がお勧め。みそが干しブドウ酢に絶妙に絡むので、しっとりとした食感で食べやすい。
干しブドウ酢みそとサバ缶のリエット

パンや野菜スティックにはもちろん、白米にも合う
【材料】(2〜3人分)
サバ缶水煮(190g)……1缶
パン(スライス)、スティック野菜……各適量
Ⓐ干しブドウ酢(みじん切り)……大さじ2
みそ……大さじ1
マヨネーズ……大さじ2
ニンニクすりおろし……少々
あらびき黒コショウ……少々
【作り方】
❶サバ缶水煮は水気を切って身の部分をボウルに入れ、フォークで細かくほぐす。
❶①に、Ⓐの材料を加えてよく混ぜる。
❶パンやスティック野菜につけて食べる。
【ポイント】
ホカホカのご飯など、温かいものと一緒に食べる場合は、ハチミツ抜きの干しブドウ酢を使う。
干しブドウ酢とクリームチーズのバナナサンド

ヘルシーなのに満足感たっぷり!朝食やおやつに最適
【材料】(2人分)
干しブドウ酢……大さじ4
重曹……ごく少々
クリームチーズ……120h
※常温に置き、柔らかくしておく。
バナナ(縦半分に切る)……1本
食パン(8枚切り)……2枚
【作り方】
❶干しブドウ酢に重曹を混ぜた後、クリームチーズと混ぜる。
❶食パンに①を半量ぬる。その上にバナナを置き、残りの①をぬる。最後にパンで挟む。
❶4等分に切り、器に盛って出来上がり。
【ポイント】
干しブドウ酢と重曹を混ぜることで、酢の酸味がほぼなくなり甘味が出る。ハチミツ抜きの干しブドウ酢でも十分甘いので、糖分が気になる人にも◎。
干しブドウ酢カボチャのサラダ

優しい甘さがじんわり広がる
【材料】(2人分)
干しブドウ酢……大さじ2
重曹……ごく少々
カボチャ(種とワタは除く)……200g
イタリアンパセリ(あれば)……適量
Ⓐタマネギ(みじん切り)……大さじ3
塩、コショウ……各少々
マヨネーズ……大さじ1と1/2
【作り方】
❶干しブドウ酢に重曹を混ぜる。
❷カボチャは洗って皮ごとラップに包み、600Wの電子レンジで4分加熱する。粗熱が取れるまで置いておく。
❸②をフォークでつぶし、①とⒶを加えて混ぜる。
❹器に盛り、イタリアンパセリを添えて出来上がり。
【ポイント】
クリーミーな食感を味わいたければ、カボチャはしっかりつぶすのがお勧め。カボチャの身をある程度残しておくと、食べ応えのある仕上がりになる。好みに合わせて作ってもよい。
よだれ鶏干しブドウ酢スパイスソース

爽やかな辛味が癖になる!晩酌のお供にも
【材料】(2〜3人分)
鶏むね肉……200g
※軽く塩を振って置いておく。
モヤシ(200g)……1袋
塩、コショウ……各少々
キュウリ(太めの千切り)……1本
Ⓐ干しブドウ酢スパイスソース
干しブドウ酢(粗く刻む)……大さじ3
ガラムマサラ……小さじ1/2弱
しょうゆ、黒酢……各大さじ1
ニンニクすりおろし……1片分
ラー油……小さじ1
【作り方】
❶厚手の鍋に鶏むね肉がしっかり浸るくらいの湯を沸かし、鶏むね肉を入れふたをして火を止める。そのまましっかり冷めるまで置いておく。
❷モヤシは洗って耐熱容器に入れ、600Wの電子レンジで3分加熱する。ザルに上げて水気を切り、塩、コショウを振る。
❸Ⓐの材料をよく混ぜ、干しブドウ酢スパイスソースを作る。
❹鍋に②とキュウリを盛り、薄切りにした①をのせて出来上がり。
【ポイント】
鶏むね肉で野菜を巻いて食べると、しっとりとした肉とシャキシャキとした野菜の食感が同時に楽しめる。レタスで巻くなど、好みの野菜と合わせても◎。
ナスのキーマカレー

夏にぴったり!ピリリとからうま!
【材料】(2〜3人分)
ナス(3cm角に切る)……3本
サラダ油……大さじ2
塩……少々
サラダ油……小さじ1
タマネギ(粗みじん切り)……1/2個分
ニンニク(みじん切り)……1片分
合いびき肉……200g
しょうゆ……少々
ご飯……2~3人分
Ⓐカレー粉……大さじ2
干しブドウ酢(粗く刻む)……大さじ3
ガラムマサラ……小さじ1/2
トマト水煮缶(200g)……1/2缶
塩……小さじ1/2
【作り方】
❶ナスをフライパンに入れ、サラダ油をまんべんなくまぶす。ふたをして中火にかけ、ときどき混ぜながら、3〜4分蒸し焼きにする。ナスに火が通ったら取り出し、塩を振る。
❷フライパンにサラダ油を足し、強めの中火でタマネギとニンニクを炒める。タマネギがキツネ色になったら合いびき肉を加え、炒める。
❸合いびき肉の色が変わったら、Ⓐと水200ml(分量外)を加える。煮立ったら弱火にし、ときどき混ぜながら15分煮る。
❹しょうゆで味を調え、①を戻して軽く混ぜる。
❺器にご飯を盛り、④をかけて出来上がり。
■レシピ考案・料理製作・スタイリング/古澤靖子

この記事は『安心』2020年7月号に掲載されています。
www.makino-g.jp