解説者のプロフィール

新生暁子(しんじょう・ときこ)
管理栄養士。日本スポーツ協会 公認スポーツ栄養士。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程修了。東京健康科学専門学校栄養科講師。2008年には高橋尚子率いる「チームQ」で栄養・調理担当としてサポート。スポーツ選手への栄養サポートやスポーツ栄養の啓発に力を入れている。著書多数。炭酸水については『健康名人の炭酸水レシピ』(セブン&アイ出版)が参考になる。
炭酸水のすばらしさを多くの人に知ってほしい
炭酸とは、炭酸ガス(二酸化炭素)のことで、この炭酸ガスが水に溶け込んだものが、いわゆる「炭酸水」です。発泡水とも言われています。
私は子どもの頃から炭酸水が好きで、よく飲んでいましたが、調べていくうちに体への効用がたくさんあることがわかりました。
なかでもヨーロッパは、天然の炭酸泉が豊富で、古くから医学療法に用いられてきたほどです。
炭酸ガスが皮膚から毛細血管に入り込むことで、毛細血管が広がり血流が活発になります。こうした作用が、動脈硬化や心臓病の治療、リハビリなどに活用されているのです。
私は「炭酸水のすばらしさを、多くの人に知ってもらいたい!」という思いから、炭酸水レシピの本も出版しました。
炭酸水といえば、シュワシュワとした刺激が特徴です。この刺激が胃に届くと、胃の血管を拡張して血流がよくなり、胃の蠕動運動を活発にしてくれます。
ダイエットが目的なら食前に300~500ml
寝起きにお水をとる習慣のあるかたは、お水を炭酸水に変えてみてください。
100〜150mlくらいの量の炭酸水を飲むと、眠っていた胃が起き出して、夏バテなどで食欲がないときにも、空腹を感じるようになるでしょう。
また、胃だけではなく、腸が活発に動くようになるため、お通じがスムーズになる効果も期待できます。
炭酸水は、体内に二酸化炭素を入れるため、活性酸素の働きを抑制することもわかっています。活性酸素が増えると、老化の原因になるため、アンチエイジングや美肌にも炭酸水は役立つのです。
一方で、炭酸水をたくさん飲むと、おなかがいっぱいになり、食べ過ぎを防止できます。ダイエットのため食事量を抑えたい人は、食前に300〜500mlを飲むといいでしょう。
私は、水から炭酸水を作ることができる家庭用マシンを使用し、毎朝、1日分作っています。このマシンは、ずいぶん前にアメリカで見つけて買ったときは、日本ではまだ珍しかったのですが、最近は炭酸水ブームで、日本でもマシンを買えるようになりました。
炭酸水は、飲み物としてだけでなく、料理にも使えます。お米を炊くときに加えるとふっくらしたご飯が炊け、天ぷらの衣として小麦粉に加えると、サクサクした食感になります。
炭酸水で髪を洗うと、皮脂の汚れを洗い流し、頭皮の血行を促進してくれます。最近は、炭酸泉の温泉やヘッドスパが増えていて人気ですが、優れたクレンジングと血行を促進する効果が期待できるからです。
「天然」か「人工」かと、「強」「中」「弱」で選ぼう

炭酸水には、「天然」「人工」の別のほか、「強炭酸」「中炭酸」「弱炭酸」といった種類があります。
日本では、「炭酸飲料品質表示基準」によって法的に決められていて、「飲用に適した水に二酸化炭素を圧入した炭酸水、そしてこの炭酸水に甘味料、酸味料、フレーバリングなどを加えたもの」と定義されています。
こういった二酸化炭素を圧入したものは人工の炭酸水です。
一方、世界的に有名な炭酸水であるフランスのペリエやイタリアのサンペレグリノは天然の炭酸水です。ミネラルが多いのも特徴です。
また、炭酸濃度によって刺激の強弱が変わってきます。炭酸ガスの量が多ければ、「炭酸がキツイ」と感じるのです。
また、誤解されやすいのですが、「強炭酸」のものは泡が長持ちするわけではありません。蓋を開けると、どんな炭酸も時間とともに気が抜けてしまいます。
まずは、自分の好みの炭酸水を探し、飲み比べて、味やシュワシュワ感の違いを感じてみてください。
気分がスッキリしてストレス解消にもなる
炭酸水はそのまま飲んでもいいですが、シロップやお酢などと割ってもおいしいものです。
フルーツに含まれるビタミンで栄養価をアップ、スパイスで健康効果をアップするなど、プラスできるのも優れたところです。
お酒と割れば、リラックスする時間を持つこともできるでしょう。
炭酸水は飲む量を調節することで、食欲増進やダイエットと自分の思う方向に働いてくれます。刺激的な飲み心地で気分がスッキリするため、ストレス解消にもなるでしょう。
また、炭酸水で腸を刺激し、腸内環境を整えることが、免疫アップにつながるので、感染症予防を始め、健康の基本にもなります。おいしいので、毎日飲んでも飽きず、続けやすいのもいい点です。
気軽に楽しめる炭酸水のバリエーションを毎日の生活にぜひ取り入れてみてください。

この記事は『ゆほびか』2020年7月号に掲載されています。
www.makino-g.jp