解説者のプロフィール

井澤由美子(いざわ・ゆみこ)
料理家。調理師、国際中医薬膳師・国際中医師。旬の食材の効能と素材の味を生かしたシンプルな料理を提案。発酵食レシピの開発はライフワーク、薬膳に造詣が深い。座右の銘は「心に通ずるものは胃を通る」。NHK「きょうの料理」「あさイチ」「趣味どきっ!」「ライフ」などの料理番組のほか、企業CM、商品開発、雑誌、カタログ、イベント、書籍、レストランなどのプロデュースを手掛ける。レモン塩ブームや乳酸キャベツの火付け役としても知られている。http://yumikoizawa138.jp/
ショウガが胃腸の冷えを取り免疫力を上げる!
手作りジンジャーエール
スパイシーな大人の辛さに、キリッとした炭酸が好相性。ショウガを煮込んで生まれる「ショウガオール」が体を芯から温めカゼ・感染症の予防に役立ちます。
シュワシュワ爽快!気分をリフレッシュ
暑い季節は、ショウガやフルーツビネガーのシロップを作り置きし、炭酸水で割って飲む「手作り炭酸ドリンク」がお勧めです。
炭酸水は、水と比べ、スッキリした飲み心地が特徴です。炭酸のシュワシュワで、気分をリフレッシュでき、ストレスを和らげてくれます。そこに、たくさんの効能が期待できるシロップを加えることで、健康増進効果も期待できるでしょう。
今回は、ご家庭で手軽にできる「手作り炭酸ドリンク」を3種類ご紹介します。冷房による冷えや、夏バテ予防に、ぜひご活用ください。
冷房による「夏の冷え」をたっぷりショウガで防ぐ
最初にご紹介するのは、「手作りジンジャーエール」です。
スパイシーで大人の辛さが楽しめるショウガシロップに、キリッとした炭酸が合う、爽快なドリンクです。
ショウガシロップは、紅茶などのお茶に入れたり、煮物やお菓子に入れたり、甘みと煮詰めたコクがあるので使いやすいでしょう。
冷房を使うようになると、怖いのが「夏の冷え」です。
手作りジンジャーエールでは、たっぷりのショウガを使いますが、ショウガには、胃腸の冷えを取り、血行を促進し、体を温める効果があります。
ショウガを加熱することで、「ショウガオール」という成分が生まれ、体の芯から熱を作り出してくれるのです。体が温まると、免疫力もアップし、カゼや感染症の予防にもなるでしょう。
シナモンスティック、唐辛子、八角といったスパイスも加えており、スパイスの香りで気(一種の生命エネルギー)の巡りもよくなります。シナモンは免疫力をアップし、唐辛子は発汗を促し、八角は胃腸を元気にしてくれます。
ほかにも、お好みのスパイスを加えるなど、自由にアレンジを楽しんでもいいでしょう。キビ砂糖は、黒砂糖にすると、さらに体が温まります。お酒が好きなかたは、ウイスキーを少し足すのもお勧めです。

●ショウガシロップ(6〜12杯分)
【材料】
ショウガ……3かけ(45g)
シナモンスティック……1本(粉末の場合は小さじ1)
唐辛子……1本
八角……1個(あれば。好みのスパイスでも可)
きび砂糖……180g(好みの砂糖でも可)
水……2カップ(400ml)
【作り方】
❶ショウガはタワシできれいにこすり洗いし、皮ごと薄切りにしておく。
❷鍋にショウガ、シナモンと、唐辛子、八角、きび砂糖を入れ、水を注ぎ、火にかける。
❸沸騰するまでは強火で、沸騰したら中弱火で5〜10分煮詰める。

煮詰める目安は、鍋の半量くらいのかさになるまで。味をみて、好みの辛さで火を止めてもいい
●手作りジンジャーエール(1杯分)
【材料】
ショウガシロップ……大さじ1〜2
炭酸水……150ml
氷……適宜
【作り方】
グラスにショウガシロップを大さじ1〜2杯と氷を入れ、炭酸水を注ぎ、さっとかき混ぜる。分量は好みで調整してもいい。
※ショウガシロップは、冷蔵庫に保管し、3カ月以内に使い切る
酢が疲労を回復させて脂肪の蓄積を抑える!
ベリーベリー酢の炭酸割り
2つのベリーとハチミツレモンに爽やかなリンゴ酢を加えた、女性にお勧めの華やかドリンクです。夏の疲れ、食欲不振を吹き飛ばし、腸の蠕動運動も促進します。
色味や香り、甘さで女性に喜ばれる
お酢と炭酸水の組み合わせで、今回ご紹介したいのが、ブルーベリーとクランベリーを使った「ベリーベリー酢の炭酸割り」です。
ベリーのダブル使いで、色味や香り、甘さに華やかさを出しました。見た目のかわいらしさから、女性に喜ばれるドリンクです。
ドライフルーツは、ブルーベリー、クランベリー以外でも、レーズン、プルーンなど、お好きな果実を使っていただいても大丈夫です。
生のフルーツではなく、ドライフルーツを使うメリットは、日持ちする点と、ドライフルーツそのものが凝縮した甘さなので、フルーツ酢を作る際に加える砂糖を控えられるところです。今回は砂糖を使用せず、ハチミツを加えましたが、じゅうぶんな甘みがあります。
お酢は、フルーツとの相性がいい、軽やかな味わいのリンゴ酢を使っていますが、米酢や白ワインビネガーでもおいしくできます。
ドレッシングや調味料としても使える
ベリーベリー酢の炭酸割りは、さまざまな健康効果が期待できます。
お酢には、疲労回復、食欲増進、脂肪の蓄積を抑制する、腸内環境を整えるなどの作用があります。さらに、ドライフルーツは、食物繊維が豊富です。お酢の便通作用と合わさって、腸の蠕動運動を促進してくれるでしょう。
今回使ったブルーベリーは、アントシアニンという含有物質が目の働きにいいと言われます。また、クランベリーには、ポリフェノールが豊富で、抗酸化作用があります。
残ったベリーベリー酢は、ドリンク以外でも楽しめます。例えば、オイルと塩を加えてドレッシングにしたり、酢豚の調味料や"具材〟として使ったりすることができます。
甘めが好きなかたは、2〜3日置き、味をみてハチミツを足してもいいでしょう。量が少なくなったら、お酢を追加する「追い酢」で、長い期間、楽しむことができます。

●ベリーベリー酢(10〜20杯分)
【材料】
ブルーベリー(ドライ)……40g
レモン……1/2個(皮をむいてくし切り)
クランベリー(ドライ)……20g
ハチミツ……大さじ2
リンゴ酢……300ml
※ドライフルーツは、好みのものでもOK
【作り方】
保存容器にブルーベリー、レモン、クランベリー、ハチミツの順に入れ、リンゴ酢を注ぐ。半日以上寝かせる。

半日寝かせると、ブルーベリーとクランベリーの色素が酢に溶けて、紅色になる
●ベリーベリー酢の炭酸割り(1杯分)
【材料】
ベリーベリー酢……大さじ1〜2
炭酸水……150ml
氷……適宜
【作り方】
保存容器にブルーベリー、レモン、クランベリー、ハチミツの順に入れ、リンゴ酢を注ぐ。半日以上寝かせる。グラスにベリーベリー酢と氷を入れ、炭酸水を注ぐ。写真のように漬けたベリーを数個加えてもいい。
※ベリーベリー酢は、冷蔵庫に保管し、3カ月以内に使い切る
夏バテの特効薬! 美肌になる!混ぜるだけでできる
甘酒とスダチの炭酸割り
体を整える飲み物・甘酒を炭酸で割り、スダチを搾ってさっぱりと仕上げました。甘酒の香りや甘さが苦手な人でも楽しめるスッキリとした味わいです。
甘酒は昔から暑いときに体を整える飲み物
「手作り炭酸ドリンク」の中でも最も簡単に作れるのが、「甘酒とスダチの炭酸割り」です。市販の甘酒(米麹で作られたもの)に、炭酸水を入れ、スダチやレモンなどの柑橘類を搾るだけです。
甘酒が苦手な人でも、炭酸水で割ると甘みが緩和されて、スッキリした味わいになるので、ぜひ試してみてください。甘酒と炭酸水の割合は、お好みですが、ここでは5対5で割るレシピで紹介しています。
甘酒は、冷凍しても酵素は生きたままなので、冷凍庫に常備しておいてもいいでしょう。
甘酒は、夏の季語で、昔から暑いときに体を整える飲み物として知られてきました。江戸時代には、市民の貴重な栄養源であり、現在も、″飲む点滴〟と呼ばれているほど、栄養たっぷり。お米のデンプンを麹が食べて分解して甘くなり、ブドウ糖とビタミンが豊富に含まれるので、滋養強壮に効くのです。
そのため、夏バテ時の疲労回復や、美肌効果が期待できます。また、発酵食品なので、腸内環境を整える作用もあります。
さらに、柑橘類を加えることで、ビタミンの補強のほか、爽やかな味わいになります。
ところで、スダチは半分に切った後、さらに1房分を切り取ると、果汁を搾りやすくなり、皮の香りまで入れることができます。これは和食調理のちょっとした知恵です。
気分や体調に合わせてお楽しみください
ここまで3つの手作りドリンクをご紹介してきましたが、炭酸水の種類はお好みで選んでください。
私自身は、ペットボトルよりも、瓶に入っている炭酸水のほうがおいしく感じ、好んで飲んでいます。
常温の炭酸水に氷を入れる、冷やした炭酸水を使う、常温で飲む──どれもおいしくいただけますので、ぜひお好みでどうぞ。
気分や体調に合わせて、手作り炭酸ドリンクを楽しんでください。

●甘酒とスダチの炭酸割り(1杯分)
【材料】
甘酒……150ml
スダチ……1/2個
炭酸水……150ml
【作り方】
❶グラスに甘酒を入れ、スダチを搾る。
❷炭酸水を、甘酒と5:5 の割合で注ぐ。炭酸は勢いよく入れると、より泡立つ。

スダチを搾り入れることで、甘酒にないビタミンもプラス。より爽やかな味わいが楽しめる

この記事は『ゆほびか』2020年7月号に掲載されています。
www.makino-g.jp