解説者のプロフィール

小峰一雄(こみね・かずお)
小峰歯科医院理事長。歯学博士。元祖「削らない歯科医」。独自の予防歯科プログラムを考案し、食事療法や最先端医療を取り入れた治療を実践。歯を抜かずに虫歯を治す「ドックベストセメント療法」の日本における第一人者。著書に『自然治癒力が上がる食事』(株式会社ユサブル)など多数。
腎機能が低下している人は注意が必要です。特に人工透析を受けている人は、急に血管が広がって低血圧になる危険性がありますから、飲むのを控えてください。
マグネシウム不足が歯周病の一因だと判明!
歯周病は、歯周病菌による感染症というのが、従来の常識でした。ところが、アメリカの歯周病学会が、その原因として挙げたのは食事でした。マグネシウム不足、炭水化物やカルシウムの過剰摂取などが、歯周病を引き起こしていると報告しているのです。
私も以前から、歯周病や虫歯は生活習慣病の一つと考え、歯磨きよりも食事の指導に力を入れてきました。その結果、歯周病や虫歯の改善例はもちろん、全身のさまざまな病気の改善例も多数ありました。例えば、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、胆石症、アレルギー、うつ、各種ガンなどです。
私が歯周病や虫歯の改善のために指導している、食事療法の基本は簡単にいうと、次の4点です。
❶砂糖の多い物をできるだけとらない。
❷塩分摂取を控え、カリウムやビタミンの多い野菜や果物をしっかりとる。
❸抗炎症作用のあるアマニ油やエゴマ油をとる。
❹カルシウムを控え、マグネシウムを多くとる。
今回は、歯周病や虫歯の食事療法のなかでも、特に④についてお話をしましょう。そして、それに役立つのが、豆腐を作るときに使う「にがり」です。
にがりには、海のミネラルが豊富に含まれており、そのなかでも特に多いのがマグネシウムです。現代人は、マグネシウムの摂取が不足しており、その補給にはとても便利。歯周病の予防にも、とりわけ役立ちます。
一度にではなく何回かに分けてとるのがお勧め!
では、なぜマグネシウムが歯周病に有効なのか、カルシウムとの関係から説明しましょう。
日本人は長いことカルシウム不足が指摘され、骨や歯を強くするために、牛乳などからカルシウムをとることが奨励されてきました。
ところが、成長して体の骨格が出来上がると、実はカルシウムの必要性が少なくなります。とり過ぎると、むしろ体にとって危険なのです。
食べ物からとったカルシウムはいったん血液中に入り込みます。血液は、カルシウムのイオン濃度を一定に保つようになっているため、余分なカルシウムは別の組織や臓器に運ばれ、細胞内にたまります。
それがたまり過ぎると、石灰化して石のようにかたくなります。これを「異所性石灰化」といいます。石灰化が血管で起これば動脈硬化、脳細胞で起こればアルツハイマーなどの認知症、目の水晶体で起こると白内障になります。
そして、歯で石灰化が起こると歯石になり、それを放置すると歯周病になるのです。
こうしてカルシウムが別の組織に運ばれると、血液中のカルシウムが不足します。それを補うために、今度は骨や歯からカルシウムが溶け出すのです。最初に溶け出すのが、あごの骨といわれています。つまり、まず歯の土台がもろくなるのです。
30歳以降は、カルシウムはとればとるほど、骨や歯などでは不足します。そのため、中高年者はカルシウムの摂取をできるだけ控えてください。
別の組織や細胞にたまったカルシウムは、自力では細胞の外に出られません。それを助けるのがマグネシウムです。カルシウムはマグネシウムといっしょなら、体外に排出されます。ですから、マグネシウムを積極的にとることが大事なのです。
そうすれば、骨や歯からカルシウムが溶け出すことが減り、組織や臓器での石灰化も防いで、歯周病の予防にもなります。
先述のように、マグネシウムはにがりを利用すると、手軽に補給できます。
[別記事:にがりのとり方&活用法→]
一方で、にがりは商品の種類が多く、ミネラルの含有量やバランスも異なります。そのため、表示をよく見て選ぶことが大事です。
選ぶポイントは、もちろんマグネシウムの含有割合が多く、ナトリウムとカルシウムが少ない物です。
ナトリウムの摂取が多いと、ほかのミネラルやビタミンが細胞内に吸収されにくくなるという問題があります。カルシウムを多くとる必要がないことは、すでにご理解いただけたと思います。
にがりは、水や白湯、麦茶、コーヒー、みそ汁、スープなどに、数滴落としてとるといいでしょう。一度にたくさんとるのではなく、1日に何回かに分けてとってください。
マグネシウムは、にがり以外にも、海藻類やナッツ類に豊富に含まれています。こういった食品からとるのもお勧めです。
丈夫な歯や健康な体を維持するために、皆さんもぜひ、にがりをご活用ください。

マグネシウムはにがりで補給するとよい。マグネシウムの含有割合が多く、ナトリウムとカルシウムの少ない物がお勧め。水や白湯、麦茶、コーヒー、みそ汁などに数滴落とし、1日に何回かに分けてとる。

この記事は『壮快』2020年7月号に掲載されています。
www.makino-g.jp