食物繊維は腸内環境の改善に役立ちます。悪玉菌が減ると、悪玉菌が作る毒素も少なくなり、腎臓の負担も軽減されるはずです。また、生野菜には抗酸化物質が多く含まれ、血管や細胞の酸化を防ぐ働きがあるので、毛細血管の多い腎臓にはありがたいことです。【解説】山口貴也(山口醫院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

山口貴也(やまぐち・たかや)

山口醫院院長。1977年、愛知県生まれ。薬に頼らず、食事や生活習慣の指導によって体質を改善し、自然治癒力を上げるための診療を行っている。
▼山口醫院(公式サイト)

腎臓に負担をかける食品を避けよう

私のクリニックには、「薬をやめたい」という患者さんが少なくありません。そういう患者さんに私は、自然治癒力をあと押しするような、食事や生活習慣の指導を行っています。

私が勧める食事の基本は、全体の半分を野菜にし、4分の1をご飯などの穀類、残り4分の1をたんぱく質の多い肉や魚、大豆食品にするというものです(詳細は後述)。

基本的には、どの患者さんにもこの食事を勧めています。こうした食事を続けるうちに、メインの病気だけでなく、低下していた腎機能まで改善していくことがよくあります。まず、症例を紹介しましょう。

Aさん(70代・男性)は、間質性肺炎を患っていました。これは、肺の肺胞という組織の周囲にある間質に炎症が起こり、肺の機能が落ちる病気です。ご本人は腎機能のことを全く気にされていませんでしたが、クレアチニン値は1.13mg/dl(男性の基準値は0.6~1.1mg/dl)、腎機能(推算糸球体ろ過量=eGFR)は50.6と、やや悪い状態でした。

Aさんは昨年の10月から食事指導を始めたところ、間質性肺炎が改善し、半年ほどでクレアチニン値が0.71mg/dlに下がり、腎機能は83まで回復しました。

昨年夏、糖尿病の治療で来られたBさん(60代・男性)は、初診時のクレアチニン値が1.5mg/dl、腎機能が37.6とかなり低下していました。そこで、食事指導を行うとともに、糖尿病の薬をやめてもらいました。Bさんが飲んでいた薬は、腎臓での糖の再吸収を阻害する、腎臓に負担のかかる薬です。

半年後、7〜8%あったヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖状態を示す数値)は6.5%に降下(基準値は4.6~6.2%)。そして、クレアチニン値は0.9mg/dlに下がり、腎機能は65.7まで大改善しました。薬をやめても血糖値がコントロールでき、腎機能まで改善したのです。

糖尿病薬に限らず、腎臓に負担をかける薬はけっこうあります。自分がそういう薬を飲んでいないか、医師に聞いてみるといいでしょう。

では、私が指導している食事の内容を紹介しましょう。これは、自然治癒力をつけるための食事ですから、腎臓病の患者さんにもお勧めできます。

その前に、腎臓に負担をかける主な食品に触れておきます。代表的な物として、肉類、食塩、加工食品が挙げられます。

肉などのたんぱく質をとると、体内で代謝され、不要となった老廃物(尿素など)が血液中にたまります。腎臓はそれを、尿といっしょに体外に排泄しなければなりません。ですから、たんぱく質を過剰にとると、腎臓に負担がかかります

動物性たんばく質には、硫黄を多く含むアミノ酸(含硫アミノ酸など)もあります。これは体内で酸性物質に変化し、体を酸性に傾かせます。それがさらに腎臓の負担を大きくします。

食塩のとり過ぎもよくありません。体内で食塩濃度が上がると、それを薄めるために水分が多く必要になります。腎臓が元気な人なら、水をたくさんとることに問題ありませんが、慢性腎臓病の人が、腎臓を過剰に働かせると負担になります。

また、塩分をとり過ぎて血圧が上がれば、腎臓の糸球体(毛細血管の集合)に負担がかかり、その機能は低下します。

このように、腎臓にとって、肉や魚、塩分を過剰にとるのは、よくありません。

たんぱく質は、動物性より大豆などの植物性を中心にとります。肉や魚は1日80gまでなら食べてもかまいません。できれば、体内の炎症を抑える働きがある、オメガ3の脂肪酸が豊富な魚をとってください。

塩分の多い食品は、控えましょう。塩もとるなら、天然塩が望ましいのですが、これもとり過ぎは、腎臓の負担になります。酢やだし、ハーブなどを利用し、減塩するといいでしょう。

もう一つ、ぜひ避けたほうがいいのが加工食品です。加工食品にはいろいろな添加物が使われていますが、特に腎臓に悪いのが、防腐剤(pH調整剤と表示)などに使われているリン(無機リン)です。

腎機能が低下すると、リンは腎臓から排泄されにくくなり、微量でも腎臓に負担をかけるといわれています。ハムやソーセージ、インスタント食品など、できるだけ口にしないことです。

抗酸化物質や酵素をまるごと摂取できる

さて、私の食事指導で特に重要としているのが、生野菜をとることです。

生野菜は、食物繊維の宝庫です。食物繊維は、大腸で善玉菌のエサになり、腸内環境の改善に役立ちます。悪玉菌が減ると、悪玉菌が作る毒素(尿毒素)も少なくなり、腎臓の負担も軽減されるはずです。

また、生野菜には抗酸化物質が多く含まれています。血管や細胞の酸化を防ぐ働きがあるので、毛細血管の多い腎臓にはありがたいことです。

私たちが食べ物を消化するのに酵素が必要ですが、加齢とともに、体内の酵素が減ってきます。それを野菜や果物に含まれる酵素から補うことができます。ただし、50度以上に加熱すると活性を失います。だから、生でとることが大事なのです。

そこで、特にお勧めしたいのが生野菜ジュースです。

生野菜ジュースなら、何種類もの野菜や果物を同時に、抗酸化物質や酵素、熱に弱いビタミン類なども壊さずに、まるごと摂取することができます(作り方は下記)。

なお、慢性腎臓病の人は、野菜や果物に含まれるカリウムを心配される人もいると思います。しかし、カリウム制限が始まる前の段階なら、むしろとったほうがいいでしょう。生の野菜や果物は、動脈硬化の改善に必要です。

ちなみに、野菜は生野菜ジュース以外なら、サラダなどで食べるか、蒸す、煮る(ゆでる)などの方法でとるのがお勧めです。煮たり、ゆでたりする場合は、汁の中に水溶性の成分が溶け出しますから、汁ごととりましょう。

炒めたり、揚げたり、焼いたりして加熱するのは、酵素やビタミンが壊れるので、あまりお勧めできません。

生野菜ジュースは、朝飲むといいでしょう。朝食はジュースだけが望ましいですが、軽く食事をしてもかまいません。


生野菜ジュースの作り方

画像: 生野菜ジュースの作り方

【材料】(約200ml分)
野菜…次のなかから2~2種類を適量選ぶ。
《キャベツ、ブロッコリー、トマト、ハクサイ、レタス、セロリ、ミズナ、コマツナ、チンゲンサイ、カブ、クレソンなど》
果物…次のなかから1~2種類を適量選ぶ。
《リンゴ、バナナ、イチゴ、ナシ、ブドウなど》
豆乳…50ml
【作り方】
野菜と果物はよく洗う。リンゴやナシの皮はむかない。種は取り除く。
*農薬が気になる場合は、重曹を溶かした水で洗う。
①と豆乳をジューサーかミキサーで液状にする。


最後に、自然治癒力をつけるのにポイントとなる1日の食事のとり方について、触れておきます。

1日の最初の食事(朝食)から最後の食事(夕食)までの時間をなるべく短くし、食べない時間を長くします。腸を休ませる時間をつくることが、体を修復するためにも、大事なのです。

最初は12時間の中で1日の食事を済ませます。朝7時に食事をとったら、夜も7時までにとります。その時間を少しずつ短縮します。理想は、昼前に最初の食事をとり、夕方に夕食を食べ終えるというものです。

間食もできるだけ控えてください。とるなら、クルミやアーモンドなどの炭水化物の少ないナッツ類がお勧めです。

そして、主食となるご飯は、食物繊維が多く、ビタミンやミネラルも豊富な玄米を、よく噛んでゆっくり食べましょう。

画像: この記事は『壮快』2020年7月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年7月号に掲載されています。

www.makino-g.jp

This article is a sponsored article by
''.