解説者のプロフィール

平柳要(ひらやなぎ・かなめ)
食品医学研究所所長・医学博士。東京大学大学院医学研究科修了。ハーバード大学・マサチューセッツ工科大学客員研究員、日本大学医学部准教授などを経て、食品医学研究所を設立。科学的根拠に基づいた健康食品の研究、開発に携わる。ショウガ研究の第一人者として有名。
▼専門分野と研究論文(CiNii)
緑茶は海外でも研究される注目の的
私は20年以上、国内外の複数の大学や企業と共同で、ショウガの研究を続け、「ショウガ博士」とも呼ばれています。
そんな私が長年、探し求めていたものがあります。それは「ショウガのパートナー」です。
ショウガは薬にも負けない健康効果を持つ優れた食品です。今までいろいろなものを組み合わせてみたが、もっとも相性のよかった食材が、「緑茶」でした。
緑茶は、日本人にはなじみ深く、毎日飲んでいる人も多いでしょう。その緑茶とショウガを組み合わせたら、習慣づけてとるのにぴったりです。
しかも、緑茶には、ショウガと同じく多くの効用があります。そのことは、日本国内だけでなく、米国、イラン、サウジアラビアなど、海外の大学や研究機関でも調べられています。
なかでも、興味深い研究結果が中国で発表されています。浙江大学医学部付属病院による調査では、1日に2回以上の緑茶を飲む人は飲まない人に比べ、白内障の発症リスクが0.55倍になるという結果が出ています。
つまり、緑茶を飲むと、白内障の発症率が半減したということです。
そんな緑茶の健康成分の主役が、エピガロカテキンガレート(EGCG)です。EGCGは、緑茶の健康成分のなかでもっとも有名なカテキンの一種で、〝カテキンの王者〟とも言える健康効果の高さです。近年、注目度が高く、論文の数も急速に増えています。
ショウガは緑内障のリスクを下げる
そんな緑茶に負けないくらい、ショウガも目にいいです。
ショウガの中で、注目すべきは、「ジンゲロール」と「ショウガオール」という薬効成分です。これらには、抗炎症作用や、鎮痛作用など、さまざまな薬効がありますが、血行促進作用が緑内障のリスクを下げるといえます。
眼底の血流がよくないと、緑内障のリスクが高くなると考えられています。血流が悪くなることで、視神経に栄養や酸素が届きにくくなって弱くなってしまうことがあるのです。
その結果、眼圧が正常だとしても、弱った視神経が眼圧に耐えきれず、緑内障の発症リスクが高まると考えられています。
ですから、血流を上げてくれるショウガは、緑内障が気になる人は積極的にとっていただきたい食材です。
ただし、緑茶に含まれる「EGCG」は高温に弱く、ショウガが含む「ショウガオール」は適切な温度で効果が高まります。両方の健康成分を最大限に生かす方法が、下項で紹介する「ショウガ緑茶」の作り方です。
沸騰したお湯だと、温度が高すぎてEGCGが壊れてしまいますし、温度が低過ぎるとEGCGが抽出されにくくなります。また、ショウガオールは80℃のお湯で量が増えます。
ですから、ショウガ緑茶は、作り方を守って温度を管理することが大切です。
暑い季節は冷やしショウガ緑茶
ショウガ緑茶は、作るときに温度に気をつける必要はありますが、冷蔵庫に入れて冷やして飲んでもいいです。
冷やしても、薬効は変わりません。すっきりとしているので、ゴクゴク飲めますが、緑内障と白内障のリスクを下げる薬効を最大限に生かしたい人は、飲むタイミングにも、気をつけてください。
朝食、昼食、夕食の前後に1杯ずつ、1日に6杯飲むのが理想的です。
ポイントは、まとめてたくさん飲むのではなく、時間を開けて適量を飲むことです。茶葉は、緑茶のなかでも、煎茶を選んでください。玉露や抹茶は、健康成分が低いため向いていません。
またショウガは、ビニール袋入りの乾燥したものよりも、食品用ラップで密封された湿り気のあるものの方が、栄養価が高くてお勧めです。

食前食後に1杯ずつ、1日に6杯飲むのが理想的
ショウガ緑茶の基本の作り方

【用意するもの】(1杯分)
●茶葉(煎茶)…3g(小さじ1〜2)
※お茶は緑茶のなかでも、「煎茶」を選ぶ。玉露、かぶせ茶、抹茶、番茶、ほうじ茶はショウガ緑茶に向かない。
●ショウガ…5g(すりおろし小さじ1)
※ひねショウガを使う。新ショウガは避ける。
●お湯…150ml
●耐熱用計量カップ ●急須
●湯呑み ●おろし器 ●茶こし

【作り方】
❶ショウガをおろす
ショウガを水で洗い、皮ごとおろし器ですりおろす(皮の周りに栄養成分が多いので皮をむかない)。毎回すりおろさなくても、すりおろしたショウガは密閉容器に入れて冷蔵庫で保管してもOK。1週間ほど保存可能。

❷急須に茶葉を入れ、冷ましたお湯を注ぐ
急須(ポット)に茶葉3gを入れる。沸騰させたお湯150mlを計量カップなどの耐熱容器に入れる。冷めて80℃くらいになったら、急須に注ぐ。

湯沸かしポットで80℃に設定したお湯を使うと、熱湯を一度移して冷ます手間を減らせる

❸湯呑みに注ぐ
お湯を入れた急須を1分ほど置いたら、急須から湯呑みに緑茶を注ぐ。

❹茶こしを使ってショウガを混ぜる
茶こしを使って、①のおろしショウガ5gを緑茶と混ぜる。
※茶こしを使うと、ショウガの繊維をきれいに除ける。繊維の口当たりが気にならない人は茶こしを使わなくてもよい。

茶葉の量が3g以上のティーバッグであれば、代用が可能。急須で入れるのと同様に、お湯を冷まして入れる
【完成!】


この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。
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