プロフィール

モト冬樹(もと・ふゆき)
ドラマ、舞台、バラエティ番組などで活躍する俳優。68歳。祖父は、数々の迷宮入り事件を解決した刑事で、築地警察署長も務めた。父は産婦人科の開業医。小学校からの同級生であるグッチ裕三とバンド「ビジー・フォー」を結成して、芸能界入り。
光が走る症状に悩まされた
[別記事:白内障手術Q&A→]
2018年1月のこと、私は白内障の治療で「多焦点眼内レンズ」を入れる手術を受けました。
その数年前、ときおりパッと光が走ったように見える症状が出て、眼科に行きました。網膜がはがれかけているとのことで治療を受けたのですが、その際に「白内障も進んでいて、要注意です」と言われていました。
その後、テレビ番組『名医のTHE太鼓判!』(TBS系)で眼科医・深作秀春先生に診てもらう機会があり、「目の年齢が寿命に近く、白内障が進行しています」と言われ、手術を受ける決意をしたのです。
手術前は、コンタクトレンズが禁止になりました。詳しくは分かりませんが、深作先生いわく、目がゆがむらしいです。
私は、高校卒業直後から50年近くコンタクトを使っていたので、メガネで数週間を過ごすことになり、鼻のつけねのメガネが当たる部分に違和感がありました。

約50年ぶりにメガネで生活
手術前は不安もあり、かなり緊張しましたが、実際の手術は思ったよりもすぐに終わりました。時間にして10~20分くらいだったでしょうか。
麻酔をして行うので、「なんとなく目の上を水が流れているような感じだなぁ」とボーッと思っているうちに、気づいたらもう終わりでした。
たいへんだったのは、手術後の目の保護です。白内障の手術後は、感染症にならないように気を使わなければなりません。1週間は特殊な保護メガネをかけて過ごします。
加えて就寝時には、無意識に目をこすらないように、保護する専用ガードの上からさらにガーゼを当て、テープで顔に貼り付けて……なんとも不恰好な状態でした。また、術後1ヵ月間はお風呂にも入れないし、顔も洗えませんでした。

術後はガーゼで両目を覆って就寝
でも、それらの苦労も吹き飛ぶほど、治療による改善効果はすばらしいものだったのです。
手術後2~3日で、もうハッキリと見えるようになっていました。でも、本当に感激したのは1週間が過ぎ、外出時にかけていた保護メガネを外した後です。
まず、コンタクトレンズをつけたり、外したりする手間から解放されたこと。
私は10代から視力が悪く、ずっとコンタクトレンズを使用してきました。朝、コンタクトをつけて「ON」という感じになり、夜、入浴の前にコンタクトを取ると「OFF」になる。そんな生活を何十年も続けてきました。
それがお風呂に入って、浴槽の水の汚れが気になるようになりました。以前は、見えていないから、そんなことに気づかなかったのです。また、寝室でもよく見えるので、隣に寝ている妻のすごい寝顔が見えてしまい、ドキッとしたりも(笑)。
さらに、車を運転中に窓を開けたら、「風が目に当たる」のを感じました。コンタクトで目が覆われていたときには、感じたことがなかったので、新鮮な感覚でした。

感染症を防ぐため保護メガネをかけて外出するモト冬樹さんと奥様
普段の生活で見えづらいことが皆無に
手術前の視力は0.01で、近視、乱視に加え、年とともに老眼が進んで近くが見えにくく困っていましたが、手術後は遠くも近くも、ごく自然に見えるのです。
コンタクトで生活していたときより、遠くも断然よく見えます。本を読むときに、老眼鏡をかける手間もなくなりました。
普段の生活で、見えづらくて困ることは皆無です。ただ、私は左右の視力に少し差があるので、車の運転時に左だけ少し度が入ったメガネをかけるようにしています。
それと、私の場合は医療保険の先進医療特約に入っており、手術費用の全額が保険から出たのも助かりました。
白内障の治療で一般的な単焦点眼内レンズ(通常は遠くにピントが合うようにして、近くを見るときは老眼鏡を使用)は健康保険が適用ですが、多焦点眼内レンズは自由診療(治療費は自己負担)です。
私のときは、レンズ代と治療費が片目90万円でした。両目とも治療したので、180万円とかなり高額でした。備えがあってよかったと思いました(*2020年4月から先進医療ではなくなり一部が健康保険適用の選定療養となった)。
私自身としては、本当に受けて良かったと思える治療でしたから、ぜひ多くの人が気軽に受けられる治療になっていけばと思います。
[別記事:白内障手術Q&A→]

この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。
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