回答者のプロフィール

平松類(ひらまつ・るい)
二本松眼科病院医師。昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、彩の国東大宮メディカルセンター眼科などを経て2018年より現職。緑内障手術トラベクトーム指導医。テレビ、雑誌、新聞などでの分かりやすい医療解説に定評がある。『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』(SBクリエイティブ刊)、『「マス目」で気づく目の病気』(翔泳社)など著書多数。
緑内障の全てが分かる一問一答
Q. 緑内障によくない生活習慣はありますか?
A.
「目に水がたまりやすい姿勢」を、できるだけ避けるのがお勧めです。
例えば、立っている姿勢と、寝ている姿勢であれば、寝ている姿勢の方が眼圧が上がりやすくなります。特にうつぶせ寝は、眼球への物理的な圧迫が加わりやすいのでNG。横向き寝も、下になった側の眼圧が上がりやすくなります。
あおむけで頭を30度ほど上げて寝ると、就寝中の眼圧が3.2mmHg下がるという研究もあるので、リクライニングベッドなどをお持ちなら活用するとよいでしょう。ただし、しっかり睡眠が取れるのが第一なので、寝やすさを優先してください。

首の血流の悪さも眼圧上昇につながります。スマホをのぞき込むようなうつむき姿勢を長時間続けないようにしましょう。ネクタイをきつく締めるのもよくありません。
消灯後に布団の中でスマホを操作するのもNG。暗い中だと光を取り入れようと瞳孔が開き、隅角が狭くなりやすいうえ、手元にピントを合わせようと水晶体が厚くなるので、眼圧は上がりやすくなります。
もちろんタバコは百害あって一理なし。タバコは目の血流を悪くするので、視神経を弱くして眼圧への耐性がさらに下がってしまいます。
緑内障の全てが分かる一問一答
Q. 食事でとったほうがいい栄養素はありますか?
A.
まずお勧めしたい食品が、カシスです。カクテルの材料として用いられますが、ジャムやお菓子にもよく使われています。
ある研究によれば、カシスをとった人とそうでない人では、視野のダメージに2倍の差があったという結果が出ています。
これは、カシスに含まれるカシスアントシアニンという成分に、視神経のダメージを抑える抗酸化作用と目の血流をよくする作用があるからです。
その他のお勧めは、やはり抗酸化物質を含む食品です。
ホウレンソウにはルテイン、トマトにはリコピン、ブルーベリーにはアントシアニン、ブロッコリーなどの緑黄色野菜にはβカロテンといった抗酸化物質が豊富に含まれています。
抗酸化物質は視神経にダメージを与える活性酸素を消去してくれるので、緑内障の悪化防止に役立ちます。

緑内障は、目の血流が悪くなっている状態です。そのため、血管収縮作用があるカフェインが含まれているコーヒーなどを、大量に飲むのは要注意です。
また、お酒も大量に飲めば神経がダメージを受けますが、日本酒1~2合ほどなら血流改善効果が得られます。
緑内障の全てが分かる一問一答
Q. 運動はした方がいいですか?
A.
体に負担をかけない、ウォーキングなどの軽い有酸素運動がお勧めです。
実際、ウォーキングを行うと、一時的にせよ眼圧が4.6mmHg程度(20%くらい)下がるというデータがあるくらい有効な方法なので、無理せずに毎日コツコツと継続して行うようにしてください。
また、適度な運動は肥満を防止し、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの改善にもつながるので、緑内障の進行を防ぐ上でも大切です。また、日ごろたまりがちなストレスの発散にもなるでしょう。
ウォーキング以外には、ストレッチやヨガなどの運動も全身の血行を促すので、有効でしょう。ただし、倒立のような体勢を取る運動の場合は、逆に眼圧を高めてしまうので要注意です。

緑内障の全てが分かる一問一答
Q. 目を温めるのは有効ですか?
A.
血行の悪さは、視神経を弱くしてしまう原因の一つだということが分かっています。緑内障は、眼圧と視神経の強さのバランスで決まりますから、血行をよくして視神経を弱らせないことはとても重要です。
お勧めは、昔からよく行われている温罨法(おんあんぽう)です。
①タオルを水に浸して軽く絞り、電子レンジで熱過ぎない温度(40℃)に温める。またはお湯に浸して絞る。
②やけどをしないように、必ず手で触れて温度を確かめてから、目をつぶった上に押し付けずにフワッとのせる。

冷めてきたら温かいものと交換できるように、タオルを2枚用意して交互に温めておくとよいでしょう。5分間を目安に行います。バスタイムに、湯船のお湯を利用すると、簡単に適温のホットタオルが作れるので便利です。
こすって温めた手を軽く丸めてカップ状にして、目の周りを覆って温めるのも有効です。
朝行えば、目がシャキッとリフレッシュし、寝る前に行うと一日の目の疲れが取れ、とても気持ちがいいものです。
まぶたが腫れていたりかゆみがあったりするときは控えましょう。

この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。
www.makino-g.jp