緑内障と診断されて投薬治療を受けているにもかかわらず、なかなか検査数値や症状が改善しないケースがあります。それは、もしかしたら、目薬のさし方が間違っているのかもしれません。正しい目薬の使い方や注意点などを、眼科専門医に伺いました。【回答】平松類(二本松眼科病院医師)

回答者のプロフィール

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平松類(ひらまつ・るい)
二本松眼科病院医師。昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、彩の国東大宮メディカルセンター眼科などを経て2018年より現職。緑内障手術トラベクトーム指導医。テレビ、雑誌、新聞などでの分かりやすい医療解説に定評がある。『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』(SBクリエイティブ刊)、『「マス目」で気づく目の病気』(翔泳社)など著書多数。

緑内障の全てが分かる一問一答
Q. 飲み合わせに注意するべき薬はありますか?

A.
抗コリン作動薬」と呼ばれる薬は、特に閉塞隅角緑内障には使用してはいけません。眼圧を上昇させ、悪化させることがあるため慎重な投与が必要です。

ご自分がどのタイプの緑内障なのか、確認をしておいたほうがよいです。

抗コリン作用のある薬剤は、胃潰瘍や胃けいれん、頻尿、鼻炎やじんましんなどのアレルギー症状、うつやパニック障害などの精神症状、ぜんそく、パーキンソン病などの治療で処方されることが多いです。

緑内障の患者さんが眼科以外にかかる場合には、緑内障であることを医師に伝えておくか、お薬手帳を活用するなどして、薬剤師にチェックしてもらうといいでしょう。

市販の睡眠薬やカゼ薬、酔い止めにも抗コリン作用がある薬がありますから、きちんと添付文書を確認してください。

緑内障の全てが分かる一問一答
Q. 目薬の効果を最大限に得るさし方を教えてください。

A.
緑内障の治療に、目薬での眼圧コントロールは欠かせません。しかし、具体的に目薬のさし方を指導されたことがないという人も多いのです。

目薬のさし方を間違えると、副作用が起こりやすくなる上、薬の効果が期待通りに得られなくなってしまいます。

私の患者さんで、長年目薬を処方されていたけれども、今一つ効果が得られずに手術を勧められた方がいました。

詳しく話を聞くと、それまでかかっていた医師からは、目薬を処方されていたものの、さし方については何も言われなかったため、自己流でさしていたそうです。

そこで目薬は変えず、さし方だけを変えてもらったところ、非常に眼圧コントロールがうまくいくようになり、手術をせずに済みました。

このように薬の効果は、さし方だけでも大きく変わります。ぜひ正しい目薬のさし方を覚えてください。正しい目薬のさし方のポイントは四つあります。

最初に手をよく洗う。

下まぶたを軽く引き、容器が触れないようにして目薬を1滴落とす。

ゆっくりと軽く目をつぶり、目頭と鼻すじの間を30秒〜1分ほど軽く押さえる。

下まぶたにあふれた目薬を、清潔なティッシュやガーゼで軽くふき取る。

③で目頭を押さえるのは、目頭の涙点から鼻涙管を通って鼻に目薬が流れるのを防ぐためです。

目の表面に必要な分以上の涙は通常から、涙点から鼻を通ってのどに流れています。泣いたときに鼻水まで出てしまったり、目薬をさしたときに口の中に苦味を感じたりするのはこのためです。

目頭を押さえておくことで、薬剤が目の表面にとどまりやすくなり、効果を十分に得られるようになります。

画像: 緑内障の全てが分かる一問一答 Q. 目薬の効果を最大限に得るさし方を教えてください。

一方、よくありがちな間違いには、次のようなことがあります。

×効果を高めようと、指示された滴数以上にさす。
1滴でも目にとどまれる以上の量が入ります。2滴以上さしてもあふれる量が増えるだけで効果が高まるわけではありません。かえって副作用のリスクが上がります。

狙いが外れて1滴に足りない場合だけ、さし直してください。目の周囲に落ちた薬液を無理に目に入れようとするのはやめましょう。

×目薬をさしてから目をパチパチと何度もまばたきをする。
まばたきをすると目薬が目からあふれたり、鼻に流れたりして、効果が下がってしまいます。

×目薬をさした後、まぶたの上からティッシュなどで押さえる。
毛管現象で目の中に残るはずの目薬まで吸い出されてしまいます。

×目薬容器の先端を下まぶたや目じりなどにくっつけながらさす。
容器の中に雑菌が混入し、目薬が汚染されやすくなります。

緑内障の全てが分かる一問一答
Q. 複数の目薬が処方されています。さす順番に決まりはありますか?

A.
2種類以上の目薬をさす場合には、1種類目の目薬をさしてすぐに次の目薬をさすと、前の目薬が流れ出てしまい、十分な効果を得られなくなってしまいます。

そこで、間隔を5分以上空けるか、タイミングをずらしてさすようにしましょう。

特に、ドロッとしたタイプの目薬は、長く目の表面にとどめる必要があり、直後に他の目薬をさしてしまうと効果が減ってしまいます。粘度の低い目薬を先に粘度の高い目薬を5分以上後にさしましょう。

また、緑内障の目薬以外にも、ドライアイや白内障、疲れ目など、さまざまな種類の目薬を処方されていることもあるでしょう。

この場合は、ドライアイや白内障の目薬よりも緑内障の目薬の方が重要です。重要なものほど後にした方が効果が出やすいので、緑内障の目薬を一番最後にさします。

緑内障の全てが分かる一問一答
Q. 目薬をさしている側だけまつげが伸び、目の下のくまが濃くなりました。どうしたらいいですか?

A.
緑内障の治療にはさまざまな目薬が使われますが、その中には、房水の排出を促し眼圧を下げるのに有効と言われているプロスタグランジン系の関連薬があります。

キサラタン、トラバタンズ、タプロス、ルミガンなどがそれに当たります。

これらのプロスタグランジン関連薬を片目だけさしていたら、副作用でそちらだけまぶたがただれたり、黒ずんだり、まつげが伸びたりすることがあります。

そこで、これらの目薬を点眼するときには、目からあふれないように確実にさし、点眼後には目の周りをきれいに洗い流すようにしてください。

画像: 緑内障の全てが分かる一問一答 Q. 目薬をさしている側だけまつげが伸び、目の下のくまが濃くなりました。どうしたらいいですか?

また、医師に相談して、他の目薬に変えてもらうことも可能です。

医師は特に何も言われず治療効果が出ているようなら、そのまま目薬の処方を継続してしまいがちですが、率直に悩みを相談していただければ、代替案がある場合も多いのです。

画像: この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。

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