足指をしっかり使って歩いていれば、爪は下から押されるため、丸まらずにゆるやかな曲線を保って伸びます。一方、足指を使わないと、爪はどんどん内側に丸まってしまいます。爪が食い込んで皮膚が傷つけば、そこから細菌が入って感染を起こします。【解説】菊池守(下北沢病院院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

菊池守(きくち・まもる)
下北沢病院院長。大阪大学医学部卒業。国内の医療機関に勤務後、米国ジョージタウン大学創傷治癒センターへの留学で、人の足に関する専門医学「足病学」に出合う。帰国後は、佐賀大学医学部附属病院形成外科診療准教授を経て、日本初の足の総合病院・下北沢病院の院長を務める。著書に『100歳までスタスタ歩ける足のつくり方』(アスコム)などがある。

約1000万人が巻き爪になっている

老化というものは、体のあらゆる部分に現れます。当然ながら、足も例外ではありません。

例えば、足の裏。他の部分より角質が多く、皮脂も分泌しないので、加齢とともに硬化や乾燥が進みます。そのため、年を取ると、ガサガサかかとになったり、たこやウオノメができやすくなったりするのです。

足の爪も同様、分厚くなって皮膚に食い込んだり、剥がれやすくなったりする肥厚爪(ひこうそう)や、白く濁ってもろくなる爪白癬(つめはくせん)(爪水虫)などが起こりがちです。

中でも、高齢者の爪トラブルで特に多いのが「巻き爪」。巻き爪とは、内側に丸まった爪の形のことです。

巻き爪が悪化すると、爪が皮膚に食い込み痛んだり、傷ができて炎症を起こしたりします。巻き爪が原因で、痛みや炎症が起こる状態を「陥入爪(かんにゅうそう)」と呼びます。

日本では、陥入爪を含めた巻き爪の人が、推定で約1000万人もいるといわれています。

私は以前、東京都世田谷区で訪問看護やデイサービスを利用している高齢者676人の爪を調べたことがあります。そこでは、全体の32.1%の方に、巻き爪や陥入爪がありました。

巻き爪の原因は足指を使えていないこと

巻き爪は、足の指を使わないと進行するといわれています。

爪は、もともと内側に巻きやすい性質を持っています。これは、指の腹側にかかる負荷を上から抑え込むという役割を持っているためです。

足指で地面を踏み込んで歩くと、地面からの反発で、足指に負荷がかかります。このとき、下から押し上げられる負荷に耐えるために、爪は内側に巻きやすくなっているのです。

足指をしっかり使って歩いていれば、爪は下から押されるため、丸まらずにゆるやかな曲線を保って伸びます。一方、足指を使わないと、爪はどんどん内側に丸まってしまいます

高齢者の多くは、病気や足腰の衰えなどで、あまり歩けません。また、体のバランスが取りづらくなるため、かかとに重心を乗せたペタペタ歩きになりがちです。その結果、足指が使われなくなり、巻き爪・陥入爪が増えるのでしょう。

巻き爪がひどくなると、輪っかのように全ての爪が丸まってしまうこともあります。

また、爪が食い込んで皮膚が傷つけば、そこから細菌が入って感染を起こします。傷が治りにくく重症化しがちな、糖尿病の患者さんの中には、陥入爪の傷が原因で、足の切断に至った人もいます。

その他にも、痛みをかばうために歩き方が不自然になり、ひざ痛や腰痛などが悪化することもあります。

画像: 巻き爪 爪が内側に丸まった状態。痛みがない場合もある。

巻き爪
爪が内側に丸まった状態。痛みがない場合もある。

画像: 陥入爪 爪が皮膚に食い込み、炎症を起こした状態。

陥入爪
爪が皮膚に食い込み、炎症を起こした状態。

日頃のケアが予防・改善のカギ

進行した巻き爪や陥入爪は、専用器具やワイヤーを爪に装着し、時間をかけて矯正しなければ治りません。炎症がひどければ、外科手術を施します。

ただ、巻き爪は日頃のケアで、十分予防が可能です。軽度であれば、自宅でのケアで改善します。

まず気を付けていただきたいのは、爪の切り方

爪は、先端だけをまっすぐ切ってください。全体が四角い、スクエア型の爪が理想です。

爪の左右の角は、切らずに爪やすりで軽く整えます。爪と皮膚の間に、爪やすりを入れて削ってください(爪切りと爪やすりの方法は下項を参照)。

爪の切り過ぎにも注意しましょう。深爪や爪の左右の角の切り過ぎは、足指に体重をかけたときに、指の肉に爪が食い込む原因になります。

また、この指の肉が盛り上がり、爪の伸びが阻まれると、爪の厚みが増す「肥厚爪」になることもあります。

爪を切る際は、上から見たときに指の肉がはみ出していない長さを目安にしてください。

硬くなった爪を切るのが怖い方は、毎日爪やすりで、全体を少しずつ削るとよいでしょう。入浴後は爪が柔らかくなっているため、削りやすいはずです。

すでに軽い巻き爪が進行している方は、市販の巻き爪矯正テープや、クリップを使うとよいでしょう。

もう一つ大事なのが、靴のはき方。ゆる過ぎる靴は、歩くときに靴の中で足がずれるため、爪の周辺が圧迫されて変形が進みます。髪の毛に寝癖がつくように、爪にも癖がつくのです。

靴をはく際は、かかとの位置を合わせてから、靴ひもをしっかりと結び、靴をフィットさせてください。

その他に、食生活の改善も有効です。爪の材料となるたんぱく質や、ビタミン、ミネラルの不足に注意して、栄養をとるようにしてください。

ただ、巻き爪・陥入爪の予防・改善に一番重要なのは、やはり足指を使うことです。歩くときに足指で地面をつかむことを意識したり、足指でタオルをつかむ体操などを習慣にしたりしてください。

爪トラブルを撃退する爪の切り方・削り方

巻き爪などの爪トラブルを回避するために、最も重要なのが爪の手入れ。爪の形や長さに気をつければ、十分予防が可能です!

今回は、正しい爪の切り方・削り方に加え、爪の手入れにお勧めなグッズもご紹介。痛~い巻き爪を撃退して、歩ける足を作りましょう!

爪の切り方

画像: 爪の切り方

カットライン
足の爪は、必ず「まっすぐ」切ること。爪の角を丸くしてしまうと、伸びてきた爪が皮膚に食い込み、陥入爪の原因になります。爪が割れるのを防ぐため、一度にたくさん切らないのもポイント。数mmずつ切りましょう。

画像: 先端の白い部分を残すのが正しい切り方。足指を横から見たとき、高さが揃っていると◎

先端の白い部分を残すのが正しい切り方。足指を横から見たとき、高さが揃っていると◎

爪の白い部分は1~2mm残すべし!
爪の白い部分を全て切る人が多く見受けられますが、それは完全に深爪です。白い部分は1~2mm残し、爪の先端と、足指の先端を同じ高さにしてください。爪が引っかからないよう、角はやすりなどを使ってなめらかにしておきましょう。

爪切りの選び方

足の爪を切るときは直線刃を!
爪切りには、主に刃先が真っすぐな「直線刃」と、刃先が丸くなっている「曲線刃」の2種類があります。足の爪を真っすぐ切れるのは、「直線刃」の方。爪切りを選ぶ際は、必ず刃先の形をチェックするようにしてください。

画像: 直線刃 刃先がまっすぐになっている。爪を切り過ぎてしまうことが少ないので、深爪の防止にもつながる。

直線刃
刃先がまっすぐになっている。爪を切り過ぎてしまうことが少ないので、深爪の防止にもつながる。

画像: 曲線刃 刃先がカーブを描いている。爪の形を整えながら切れるが、足の爪を切る際にはあまり向かない。

曲線刃
刃先がカーブを描いている。爪の形を整えながら切れるが、足の爪を切る際にはあまり向かない。

分厚い爪もらくらく切れるニッパー型の爪切りがお勧め
分厚くなった爪を切るなら、ニッパー型の爪切りがお勧め。適度な力で爪が切れるので、失敗も少ないです。お値段は平均3,000~5,000円とやや高めですが、高品質の物も多いので、買って損はないでしょう。Amazonなどの通販サイトやドラッグストア、ロフトなどの雑貨店で購入可能。

画像: 119 ニッパーツメキリ(Wスプリングタイプ) 3,000円(税抜)貝印株式会社 ドラッグストア、インターネットショップで販売。 https://www.kai-group.com/

119 ニッパーツメキリ(Wスプリングタイプ)3,000円(税抜)貝印株式会社
ドラッグストア、インターネットショップで販売。https://www.kai-group.com/

爪の削り方

硬くなった爪を切るのが怖い、自分でうまく切れない……という方は、毎日爪を削ることをお勧めします。足の爪は、1ヵ月に1~2mm程度しか伸びないので、お風呂上がりなどにこまめに削れば、爪切りが必要なほど伸びることもなくなります。

画像1: 爪の削り方

粗目の爪やすりで爪を削る。2枚爪を防ぐため、左右から中心に向かって一方向にやすりをかける。角の部分は、爪と皮膚の間に爪やすりを入れて削る。

画像2: 爪の削り方

爪の中央部や小さな爪は、足の甲側から足の裏側に向けて、一方向に削る。

画像3: 爪の削り方

細かい目の爪やすりで形を整えて完成。爪の切り方と同様、爪の白い部分は1~2mm残し、足指を横から見たときに高さが揃っているようにする。

爪やすりの種類

画像1: 爪やすりの種類

紙製
◎安価 ◎使い捨てできるので、衛生的 ◎手に入りやすい ◎値段:100円程度 ◎販売場所:100円ショップ、通販、大手ドラッグストアなど

画像2: 爪やすりの種類

ガラス製
◎肌触りが柔らかい ◎洗えばくり返し使える上、熱湯消毒できるので衛生的 ◎値段:100~800円程度 ◎販売場所:100円ショップ、通販、大手ドラッグストアなど

画像3: 爪やすりの種類

金属製
◎よく削れる ◎洗えばくり返し使える ◎薄いので、爪と皮膚の間に入れやすい ◎値段:300~500円程度 ◎販売場所:通販、大手ドラッグストアなど

軽い巻き爪の人にお勧め!
軽度の巻き爪の場合、市販のテープやサポーターを使えば改善することがあります。自分の巻き爪のタイプに合わせて、使ってみてください。

画像4: 爪やすりの種類

巻き爪テープ
指にはって爪と皮膚の間を引き離すタイプや、爪にはって皮膚への食い込みを防止するタイプなどさまざま。15~20枚入りで、500~1,000円ほどの物が多い。

画像5: 爪やすりの種類

巻き爪サポーター
指にはめるサポーター装着タイプや、爪に挟んで使うクリップタイプなどがある。爪が伸びていないと使えないものが多い。1,000円以上の物がほとんどだが、くり返し使える。

画像: この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。

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