解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)
済生会川口総合病院皮膚科主任部長。東京医科歯科大学附属病院にて、日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局。難治性の巻き爪、陥入爪、たこ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、根治を目指した原因の追究、診察、専門治療の他、セルフケアの指導を行っている。著書に『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』(マキノ出版)などがある。
足を見る習慣をつければ体の不調がすぐ分かる!
足には、体の弱点が現れやすいことをご存じでしょうか。
足のたこ、ウオノメ、指の変形、巻き爪、扁平足(土踏まずがない足)などは、それ自体が痛みや歩きにくさを招きます。さらに、これらが現在や未来の全身の不調を示していることもあるのです。
足の異変は、専門家でないと分からないものがある一方、少し注意深く観察すれば、一般の人でも分かる症状もあります。
普段から足を見る習慣をつければ、足や全身に起こりうるトラブルを知り、早くから予防や改善に努められます。
例えば、足にたこができると、その部分だけが悪いと思う方がほとんどです。私も、患者さんから「たこを取れば治りますか」と、よく聞かれます。
しかし、たこの原因は、歩き方や足の変形、靴選びなどにあることが多いので、局所的な治療だけでは治りません。たこの原因は局所ではなく、「あなた自身」にあるのです。
たこやウオノメの位置、爪の変化に要注意
足を見て、今の自分がどんな不調と関連しやすいかを知る一助として、「足診断」をご紹介しましょう。主な症状は、下記の通りです。

(A)外反母趾(親指の付け根が内側に突き出し、親指の先が人さし指側に曲がっている状態)の可能性あり。体の重心が親指側に倒れやすいので、ひざや腰を痛める原因にもなる。
(B)(B)開張足(足の横向きのアーチがくずれて指が広がっている状態)の可能性あり。外反母趾など、他のトラブルを招く危険が。
(C)内反小趾(小指の付け根が外側に突き出し、小指の先が薬指側に曲がっている状態)の可能性あり。体の重心が小指にかかるので、O脚やガニ股になっていることも。
(D)浮き指(指が地面につかず浮いている状態)の可能性あり。かかとに重心がかかっていて、足の指を上手に使えていない。ガサガサかかとや外反母趾、巻き爪などの原因にも。
(E)ハンマートゥ(足の親指以外の指が「く」の字状に曲がっている状態)の可能性あり。進行すると、指の関節や指先が靴に当たって痛みが生じる。
(F)巻き爪 ①くるりと巻いている……親指での踏み込みが弱い。かかと重心や、浮き指の可能性が高い。②直角に曲がる……体の重心が親指寄り。ひざや腰を痛める恐れがある。
(G)小指の爪が小さい 靴のサイズが合っていない。それ以外にも、足が地面から離れるとき、外側に力を入れ過ぎている可能性がある。足関節が硬い。
(H)かかとがガサガサ 足が乾燥している、かかとに体重が乗っていて体のバランスがくずれている、新陳代謝が衰えているなど、さまざまな原因によって起こる。水虫が発生しているなど、他の病気が隠れていることもあるので、注意が必要。
【たこの位置】
●第1指の内側(第2指と反対側)寄りや、付け根の膨らみ部分にある
外反母趾が起こっているか、これから起こる可能性があります。体の重心が親指側に倒れやすく、ひざや腰を痛める恐れがあります。
●指の付け根中央(人さし指・中指付近)にある
開張足の可能性があります。開張足は、外反母趾や内反小趾なども招きやすいので、注意が必要です。
【ウオノメの位置】
●足の甲側の人さし指の中央、中指の先などにある
ハンマートゥの可能性があります。進行すると、指の関節や指先が靴に当たって痛みます。
●足の裏側で、小指付近の指の付け根部分にある
浮き指の可能性があります。浮き指は、ガサガサかかとや外反母趾、巻き爪などの原因になります。
【爪の変化】
●足の小指の爪が小さい、分厚い、伸びにくい
主な原因は、靴が合っていないこと。それ以外にも、足が地面から離れるときに、足の外側を使い過ぎていることが疑われます。足関節の硬さが影響しています。
●爪の端が内側に巻き込んでいる(巻き爪)
巻き爪には、①くるりと巻くタイプと、②直角に曲がるタイプがあります。①は、親指での踏み込みが弱い人。かかとに重心がかかっていたり、浮き指になったりしている可能性が高いです。②は、外反母趾と合併する場合が多いです。体の重心が親指寄りになっていて、ひざや腰を痛める可能性があります。
以上のような症状は、生活習慣が大きく関わっています。
また、体幹(胴体)の筋肉や、それとつながる骨盤底筋群をバランスよく使えていないことも影響しています。そのため、ひざ痛・股関節痛・腰痛などを起こす可能性にもつながるのです。さらに、高齢の場合は、尿もれや転倒といったリスクも高まります。
このようなトラブルを避ける対策として、3つの方法を下にまとめました。これらを心がければ、全身の不調対策にも役立ちます。
足の不調を改善する3つの対策
対策① 日常的な足のケア
●足の指先や指の間を丁寧に洗う。
●お風呂上がりは、クリームなどで足を保湿する。
●青竹踏みやゴルフボール握りなど、足の運動を行う。

対策② 姿勢を改善
【姿勢のチェック】
❶直立姿勢で足を見下ろす。
❷おなかや胸で足の甲が隠れているなら、腰が反っている「かかと重心」の可能性あり!
【改善するためのセルフケア】
普段の位置より2cmほど、へそを内側に引っ込めるイメージで、おなかに力を入れずに、指でへそを押す。その姿勢をキープする。

対策③ 足に合う靴を正しくはく
【こんな靴が◎】
●かかとと足の甲が固定される。
●指先にゆとりがあり、指が靴の先に当たらない。
●指の付け根部分で靴底が曲がる。

足の裏で体の状況を診断:1
【安心編集部 I (26歳・女性)の足】

(A)深爪
爪の切り過ぎ。通常、深爪をすると歩くときに痛みを感じるが、これが平気な人は、指を使えていない。かかとに体重をかけていると考えられる。
(B)小指が曲がっている(内反小趾)
小指が靴の形に変わっている。これも、指が使えていないことが原因。

(C)浮き指
足のアーチがくずれて、指が地面から浮いている。かかとに重心がかかっているので、ひざ・腰・股関節に負担がかかりやすい。骨盤底筋群の弱りに注意。
(D)左親指の角質
足の状態に左右差があるのは、片足だけに負担をかけている証拠。体のバランスが悪い。
高山先生から一言
太りやすい「かかと重心」
指が地面から離れる「浮き指」や、爪の切り過ぎから、かかとに体重がかかっている「かかと重心」だと考えられます。
かかと重心だと、おなかが前に出てしまうので、この部分の筋肉が伸びます。そのため、おなかが引き締まらず、ポッコリおなかになる可能性が高いです。満腹感も少なくなるので、食べ過ぎで太ってしまう危険もあります。
このタイプの人は、骨盤が前傾してしまうことが多いので、姿勢の改善を心がけてください。へそを普段の位置から2cmほどへこませるようにして、骨盤をまっすぐに保つ姿勢をとるとよいでしょう。

足の裏で体の状況を診断:2
【ライターM(61歳・女性)の足】

(A)爪水虫
爪の下にある角質らしきものは、おそらく白癬(カビによって起こる感染症)。爪が分厚くなっているのも、加齢ではなく、爪水虫によるものかもしれない。このような症状が出たら、一度皮膚科で受診を。
(B)親指の関節が曲がらない
親指を反らすと痛みを感じる「強剛母趾」気味になっている。親指の先が人さし指側に曲がる「外反母趾」と形が似ているが、対処法は異なるので、自己診断は禁物。

(C)浮き指
第2〜4指が上がっていて、足首や第1指に負担がかかっている。足底腱膜炎(足の裏の筋やかかとが痛む病気)になりやすく、さらに扁平足なら、足の裏を痛めやすい。
(D)扁平足
扁平足とは、足の裏の土踏まずがなくなって、平べったくなった足のこと。足の裏にこのような変形がある人は、足の裏が疲れている傾向にある。
高山先生から一言
足が痛みやすい「扁平足」
土踏まずがない「扁平足」気味の足です。かかとの骨が内側に向いているので、足にうまく体重が乗せられません。そのため、足の裏が痛くなりやすく、足首・ひざ・腰などの関節に負担がかかっていると考えられます。
このタイプの人は、足の縦のアーチを支えるよう心がけましょう。インソールを入れたり、関節の硬いところをほぐしたりするのが効果的です。青竹踏みなどで、足の縦アーチを刺激するのもいいですね。

この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。
www.makino-g.jp