解説者のプロフィール

広江洋一(ひろえ・よういち)
くに整骨院院長。一般社団法人日本モルフォセラピー協会理事/公認指導員。スポーツ選手や運動愛好家、バレエダンサー、中高年の患者さんに支持される。過食や拒食をはじめ、食事面での相談も多く、来院するかたの役に立とうと、独学で食事療法を研究・実践した結果、運動ではなく食のみで自身が30kgやせる。整体術を活用しながら、食・運動・思考など、トータルに体を改善し、患者さんの知恵袋のような先生として活躍。
リンパの流れをよくするセルフケア
私の整骨院には、股関節痛に悩む多くの患者さんが訪れます。
例えば、整形外科で股関節の手術を勧められているかた、もはや手術は回避できないほどに股関節の状態が悪化しているものの、できれば手術の時期を少しでも遅らせたいというかたがいらっしゃいます。股関節の置換手術は若いうちに受けてしまうと、人工関節が劣化し、再度手術が必要になるからです。
また、バレリーナの患者さんも多く来院します。バレエは股関節を本来の可動域以上に広げて足を動かします。そのため、股関節を痛める人が少なくなく、相談を受けることがよくあります。
こうした若いかたから、手術が必要とされるような年配のかたまで、股関節痛に悩む多くのかたにお勧めして、大変好評を得ているセルフケアが、股関節の「コロコロ刺激」です。
コロコロ刺激は、100円ショップなどで売られているボディーローラーで股関節周辺を2〜3分コロコロこするだけ。
とても簡単ですが、毎日やっていただくと、「股関節の動きがよくなる」「痛みが和らぐ」「手術を少しでも先送りできる」といった多くの効果が期待できます。
なぜ、コロコロ刺激が効果をもたらすのでしょうか。股関節痛に悩む多くの皆さん、特に年配のかたは、加齢によって股関節の状態が年々悪化してきたと考えがちです。実は私は、そのようには考えていません。
むろん、加齢の影響が全くないとはいえませんが、私が着目しているのは別のポイントです。
股関節痛に悩む人の骨盤に触れてみると、左右の高さに違いがあることがわかります。骨盤がズレているのです。この骨盤のズレによって、そけい部にねじれが生じ、そけい部にあるリンパ節のリンパの流れが悪くなっているのです。
そけい部に触れると、通常へこんでいるはずなのに、そこがむくんで、ぷっくりふくらんでいることがあります。つまり、本来流れていくべきリンパが、そけい部でうっ滞しているのです。
リンパがうまく流れなければ、周辺の筋肉群の老廃物の排出もスムーズにはいきません。すると、股関節を支える筋肉群がかたくなり、股関節の可動域が狭くなったり、痛みなどを引き起こしたりする原因となるのです。
年を取るにつれて、だんだんと股関節の状態が悪化するのは、加齢というよりも、この悪い状態の積み重ねが症状の悪化をもたらしていると考えられます。
コロコロ刺激は、この骨盤のズレとリンパの流れをよくするために考案したセルフケアです。コロコロ刺激によって、骨盤のズレとリンパのうっ滞が改善されると、股関節の状態が格段によくなります。
朝の起き抜けがおすすめ
では、コロコロ刺激のやり方を説明しましょう。
用意する物は、100円ショップなどで売っているボディーローラーひとつです。それを持ち、立つか、床や布団に寝ころんで行います。
ギュッと押しつけたり、力を入れ過ぎないようにして軽く転がし、ローラー全体を使って皮膚を刺激するのがコツです。詳しいやり方は、下図を確認してください。
骨盤は必ず左側が上にズレるため、「①上から下にコロコロ」は必ず左側のみ行います。「②下から上にコロコロ」は痛みのあるほうの股関節に行います。
②を行い、痛い側だけのコロコロ刺激ではいまひとつと感じたかたは、両側にコロコロ刺激を行ってください。
コロコロ刺激は、朝の起き抜けに行うことがお勧めです。こわばりがちな股関節の動きをよくして、一日を軽快にスタートさせることができるでしょう。
余裕があれば、風呂上がりや寝る前など夜にも行えば、一日の疲れをほぐす効果もあって、理想的です。
コロコロ刺激は、わずか2〜3分、ローラーを転がすだけとお手軽です。ぜひお試しください。
コロコロ刺激のやり方

【用意するもの】
100円ショップなどで売っているボディーローラー
❶ 上から下にコロコロ

ウエストの左側から下に向かってなで、骨に引っかかる位置(ベルトが引っかかるところ)がスタート地点。そこから恥骨に向かって上から斜め下にローラーを転がす。1分ほどくり返す。
※左側のみ行う
❷ 下から上にコロコロ

そけい部からおへそに向かって下から斜め上にローラーを転がす。1分ほどくり返す。
※痛いほうに行う。刺激が足りなければ両側とも行う

この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。
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