冷えとは、気温や服装、食習慣などが原因で起こる血行不良です。便秘で排泄力が低下すると、肌荒れ、吹き出物、体臭、口臭などの原因になり、不安やうつ状態など精神的な不調も引き起こします。さらには、免疫力の低下を招くのです。【解説】松生恒夫(松生クリニック院長)

解説者のプロフィール

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松生恒夫(まついけ・つねお)
松生クリニック院長。東京慈恵会医科大学卒業。同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て、2004年より現職。日本内科学会認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器病学会認定専門医。著書に『腸の冷えを取ると病気は勝手に治る』(マキノ出版)など多数。

豆や雑穀、野菜入りのほうが体が温まる

私は35年近くにわたり、5万人以上の大腸内視鏡検査を行い、腸を診てきました。その経験から、年々、日本人の腸への負担が増えていると感じています。

とりわけ深刻なのが、「冷え」による負担です。

そもそも冷えとは、気温や服装、食習慣などが原因で起こる血行不良です。血行不良によって栄養素や酸素が全身に行き渡らなくなると、臓器や細胞の働きも低下して、さまざまな不調につながるのです。

腸も例にもれず、冷えが長引くと、働きが悪くなり、さまざまな不調を引き起こします。その代表格が、便秘や下痢、腹痛、おなかの張りなどです。

便秘で排泄力が低下すると、腸内環境が悪化し、有害物質が体内に吸収され、肌荒れ、吹き出物、体臭、口臭などの原因になります。

また、不安やうつ状態など精神的な不調も引き起こします。さらには、小腸に免疫細胞が多くあることから、免疫力の低下を招くのです。

ですから、腸を日ごろから温めておくことは、心身の健康を保つうえで大切です。

では、腸を温めるにはどうすればよいのでしょうか。私が重要視しているのは、「食べ物」です。

冷たい飲み物や食べ物のとり過ぎ、朝食抜きの食習慣、ダイエットを気にして主食を抜いたり、食事の量を極端に減らしたりすることは、いずれも腸を冷やして働きを低下させます。

特に、大腸の働きを活発にするために欠かせないのは、朝食です。朝は、大腸が内容物を排出するために押し出す「ぜん動」運動のなかでも、最も大きな「大ぜん動」が起こりやすい時間帯です。

朝食をしっかり食べると、胃から大腸へ刺激が伝わり、排便を促すことができるのです。

そこで、この大切な朝食で、どのような食べ物がいいのかを検証するために、食べ物と腸の温度の関連性を調べました。

20代の女性を被験者に、
❶具のない温かいコンソメスープと、
❷豆や雑穀、野菜が入った温かい「具だくさんスープ」
を飲んだあとの、体の温度変化をサーモグラフィー(物体の熱分布を図として表し分析する装置)でそれぞれ測定したのです。

その結果、①具のないコンソメスープでは、食後30分で温度のピークを迎え、その後はしだいに下がっていきました。

一方、②具だくさんスープは、食後120分経っても上半身全体の温度が上がり続けたのです。末端の手の温度も、食後120分で最も高くなりました。

つまり、ただ温かい飲み物を飲むよりも、食物繊維たっぷりの具材もしっかり食べるほうが、胃腸のみならず体全体を、長時間にわたって温めるということがわかったのです。

画像: 具だくさんスープは体温上昇が長く続く!

具だくさんスープは体温上昇が長く続く!

不溶性と水溶性両方の食物繊維をとるのがいい

食物繊維には、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」があります。

不溶性食物繊維は、便のカサを増やし、腸壁を刺激して腸のぜん動運動を促します。しかし、とり過ぎると便秘やおなかの張りの原因になることがあります。

これを防ぐのが、水溶性食物繊維です。腸内の老廃物や有害物質に吸着し、スムーズな排便を促します。ですから、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方をとることが望ましいのです。

このことを踏まえ、具だくさんスープの具材は、下の一覧を参考にしてください。

スープは何でもかまいませんが、具だくさんのみそ汁もお勧めです。みそなどの発酵食品には植物性乳酸菌が含まれています。胃液や腸液で死滅しにくく、そのまま大腸に届いて腸内環境を整えてくれるのです。

腸が温まり、元気になる具だくさんスープを、ぜひ朝食に取り入れてみてください。

具だくさんスープの具材の選び方
具材は4~6種類程度(好みで、増やしたり減らしたりしてもかまわない)

不溶性食物繊維の多い食材
豆類 穀類 キノコ類 ニンジン ゴボウ など

水溶性食物繊維の多い食材
海藻類 タマネギ 大根 サトイモ ジャガイモ など

不溶性食物繊維:水溶性食物繊維=2:1 になるのが理想!

■さらに加えるとより効果的!
エキストラバージンオリーブオイル……保温効果が高く、スープを飲んだあとも長時間、高体温をキープ
ターメリック、シナモン、ジンジャー……血行を促進させる

画像: この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。

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