解説者のプロフィール

奥村康(おくむら・こう)
1942年生まれ。順天堂大学医学部名誉教授、アトピー疾患研究センター長。千葉大学大学院医学研究科修了。スタンフォード大学留学後、東京大学医学部免疫学講師を経て、順天堂大学医学部免疫学教授、同大医学部長を歴任。主な著書に『腸の免疫を上げると健康になる』(アスコム)などがある。
感染症対策には腸内環境がポイント
新型コロナウイルスの流行により、全世界で感染症の対処法に関心が高まっています。
感染症や病気を防ぐには、免疫力が落ちないようにすることが大事です。そして、そのためには、腸内環境を良好に保つことが不可欠になります。
なぜなら、腸には体内の免疫細胞の約70%が集中しており、免疫システムと最も関係が深い臓器だからです。
腸内環境を左右するのは、腸内細菌のバランスです。人の腸内には、約500種類、100兆個もの細菌が棲んでおり、次の3種類に分けられます。
❶善玉菌……消化・吸収を助け腸の働きを良好に保つほか、有害菌や病原菌の侵入・増殖・感染を防ぎ、免疫力を高めて病気になりにくい体をつくる。
❷悪玉菌……炎症を起こしたり、発ガン性物質を作るなど体に有害な働きをする。
❸日和見菌……腸内に善玉菌が多いときはおとなしくしているが、悪玉菌が増えると、その影響を受けて、有害な作用を及ぼすことがある。
一般的な大人の腸内細菌のバランスは、日和見菌が全体の約70%、善玉菌と悪玉菌が約15%ずつであり、善玉菌が少し優勢な状態が理想的な腸内環境とされています。
そして、その理想的な状態に近づけるのに役立つのが、「納豆ヨーグルト」です。
納豆菌は胃酸に強く腸まで届く
まずは、ヨーグルトについて説明しましょう。ヨーグルトには、善玉菌の代表格である乳酸菌が豊富に含まれています。そして、腸内環境を整える効果があることが、科学的に立証されています。
乳酸菌は乳糖やブドウ糖をエサにして増えて、乳酸や酢酸、ビタミンを作り出し、悪玉菌を減らしてくれます。また、死んだ状態で腸に届いても、免疫機能を正常に保つ効果もあるのです。
多くの種類のヨーグルトが出回っていますが、自分の体に合った物を食べるようにするとよいでしょう。1週間ほど続けて食べてみて、便通がよくなるなどなんらかの変化が実感できる物が、自分の体にあったヨーグルトです。
そして、ヨーグルトと併せてとることで、相乗効果が期待できるのが納豆です。納豆はヨーグルトと同じ発酵食品で、血栓(血の塊)を溶かして血液をサラサラにするなど、さまざまな健康効果が知られています。
大豆から納豆になる発酵過程で増える納豆菌は、胃酸にも強く、生きたまま大腸まで届きます。
納豆菌は抗菌作用に優れ、胃の中ではピロリ菌の増殖を阻害します。腸内では乳酸菌のエサとなったり、善玉菌の働きを助けたりして、腸内環境を整える働きがあるとされています。
さらに、納豆にはヨーグルトに含まれない食物繊維も豊富です。食物繊維は腸内で善玉菌のエサとなり、腸の動きを活発にして、腸内環境の向上に役立ちます。
さらに、納豆に含まれるビタミンB2は、細胞の再生を促し、粘膜の免疫力を強化するのです。
つまり、ヨーグルトと納豆をいっしょにとることで、腸内環境を整えたり免疫力をアップさせたりする効果が、より高まると考えられるのです。
血液サラサラ効果を期待したい場合は、夕食に食べると効果的でしょう。ナットウキナーゼの血栓溶解効果は約8時間持続します。夕食にとれば、就寝中に起こりやすい脳梗塞などの予防に役立つのです。
冒頭で述べたとおり、免疫力は加齢やストレスなどで容易に低下します。腸から体を元気にして免疫力を上げるために、納豆ヨーグルトを積極的に取り入れることをお勧めします。
納豆ヨーグルトの作り方
【材料】(2人分)
納豆…1パック
ヨーグルト(プレーン)…適量
【作り方】

❶納豆1パックを、器に入れる。

❷①に、ヨーグルトを大さじ2杯加える(加える量は好みでもよい)。

❸よくかき混ぜて出来上がり(納豆に添付のタレやカラシなどを加えてもよい)。

この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。
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