解説者のプロフィール

北西剛(きたにし・つよし)
きたにし耳鼻咽喉科院長。1966年、大阪府守口市生まれ。滋賀医科大学卒業後、病院勤務を経たのち、2005年にきたにし耳鼻咽喉科を開院。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本気管食道科学会専門医。日本アーユルヴェーダ学会理事長。日本統合医療学会認定医。日本ホメオパシー学会認定医。そのほか、森林セラピスト、野菜ソムリエなど、多彩な活動をしている。著書に『慢性副鼻腔炎を自分で治す』(マキノ出版)など多数。
免疫細胞に作用して免疫をアップさせる食品
最近、「新型コロナウイルス」について、患者さんから心配の声がよく聞こえてきます。そうした患者さんには、「過剰に心配しないで、やれることをやりましょう」とお話しするようにしています。
やれることとは、まず、感染予防の基本を守ること。それは外出後の手洗いをしっかり行うことです。また、ふだんから鼻呼吸を心がけることも大切です。
鼻腔(鼻の内部)の内側には、粘膜のひだがあり、その粘膜の表面に生えている線毛が異物をのどのほうに押し流す働きをしています。つまり、鼻腔は、一種のフィルターとして働いています。
これが口呼吸になると、フィルター機能が一切なくなり、ウイルスが肺へと入りやすくなってしまうのです。そのうえ口呼吸で口の中が乾燥すれば、感染はより起こりやすくなります。
鼻呼吸をすれば、鼻腔内の粘膜がフィルターとして働くだけでなく、鼻腔で吸気が加湿加温されるため、これも感染予防効果をもたらします。
ふだんの食事も大切です。特に私が皆さんに上手に活用してほしいと考えているものが、LPS食材です。
LPSとは、グラム陰性菌という種類の細菌の細胞外膜の成分です。「リポサッカライド」、また、「リポ多糖」とも呼ばれています。この物質が、私たちの免疫細胞に作用して、免疫力をアップさせてくれるとわかっています。
ウイルスや細菌などが私たちの体に侵入すると、最初に集まってくるのが、マクロファージという免疫細胞です。マクロファージはウイルスが感染した細胞を食べてくれます。LPSはこのマクロファージの働きを活性化するのです。
つまり、LPSを多く含む食品をふだんからよく摂取することが、新型コロナウイルスに対する備えともなり、また、もし仮に感染した場合にも、回復を早めることにつながると考えられます。
LPSは、私たちが日常的に食べている食品に含まれています。穀類や根菜類、野菜、海藻、キノコ類などです。LPSを多く含む食材のベスト3が、
❶ヒラタケ
❷メカブ
❸レンコンです。
そのほか、玄米、ソバ、ジャガイモ、サツマイモ、コマツナ、キャベツ、ホウレンソウ、メカブ、ヒジキ、ノリ、シイタケ、ナメコなどにも多く含まれます。
私も、ヒラタケやメカブ、レンコンなどをよく食べるように心がけています。それに、ほぼ毎日玄米ご飯を食べています。

免疫細胞を活性化するLPSを多く含む食品
皮の部分に多いのでよく洗い皮ごと食べる
LPS食材を料理に活用する際の、四つのコツを紹介しておきましょう。
●皮ごと食べる
LPSは、皮の部分に多く含まれるので、レンコンやサツマイモなどは、よく洗って、皮ごと食べましょう。玄米もぬかの部分にLPSが多く含まれていています。
●長時間の加熱は×
生食がベストですが、LPSは比較的熱に強いので、加熱しても大丈夫。ただし、揚げ物のような長時間の加熱は、組織が壊れるので勧められません。
●長く水に浸さない
LPSは水溶性。野菜や根菜類は、できるだけ水に浸さず食べるようにします。スープや煮物にする場合は、汁も丸ごととりましょう。
●乳酸菌といっしょにとる
乳酸菌自体にLPSは含まれません。しかし乳酸菌といっしょにとることによって、LPSの吸収率がよくなるとされています。
LPS食材を上手に活用するために、私が勧めているレシピが、「乳酸キャベツ」です。
皆さんも、ザワークラウトという料理の名前を聞いたことがあるでしょう。ヨーロッパでよく食べられているキャベツを、乳酸発酵させた発酵食品です。
乳酸キャベツの作り方
【材料】(2人分)
・キャベツ…1玉(約1㎏)
・自然塩…20g
・ローリエ…2枚
・鷹の爪…1本
・粒コショウ…10粒
※保存容器…1L以上の物(水が出るので、重石のついた漬物容器、もしくは、上から押さえられる漬物容器)
【作り方】
❶キャベツをせん切りにする。ローリエは適当な大きさにちぎり、鷹の爪は種を取って、輪切りにする。粒コショウはポリ袋に入れ、麺棒などでたたいて軽くつぶす。
❷キャベツをボウルに入れ、塩を加えて、よくもむ。
❸②にローリエ、鷹の爪、粒コショウを加えて、よく混ぜる。
❹保存容器に入れ密閉。圧力をかけるか、もしくは重石をのせて、冷蔵庫か冷暗所で5~7日寝かせる。キャベツが黄色くなり、酸味が出たら完成。

なぜ、乳酸キャベツがいいかというと、第一にキャベツもLPS食材であること。第二に発酵によって増えた乳酸菌が腸内環境を整えるからです。
腸内環境は私たちの免疫力と密接な関連がありますから、乳酸キャベツの常食によって、腸内環境がよくなれば、それも免疫力のアップにつながります。さらに、LPS食材といっしょに、乳酸キャベツをとると、LPSの吸収率もよくなります。
乳酸キャベツの作り方は、上記を参考にしてください。作りおきできるので、その点も便利です。
食べる量の目安は、小皿で1日一皿程度です。2週間以内に食べ切りましょう。いっしょに、ヒラタケやメカブ、レンコン、玄米などのLPS食材を多くとるよう心がけてください。
基本の感染予防策も食事も、日々の地道な積み重ねが肝心です。むやみにウイルスにおびえることなく、できることを積み重ねていきましょう。

この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。
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