免疫細胞の一つ、マクロファージの90%は小腸内にあるのです。マクロファージは、体内に侵入したウイルスなどを食べて消化・殺菌します。しかし、「冷え」には勝てません。たった1〜2℃でもおなかが冷えると、働きが衰えてしまいます。【解説】永野正史(練馬桜台クリニック院長)

解説者のプロフィール

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永野正史(ながの・まさし)
練馬桜台クリニック院長。1985年に佐賀医科大学卒業後、三井記念病院にて内科研修医、内科腎センター医員を経て、92年に敬愛病院内科に勤務。96年に敬愛病院副院長を務めた後、2003年に練馬桜台クリニックを開業(内科・透析・健診)。主な著書に、『110歳まで元気に生きる! 実験オタクなドクターに学ぶ健康長寿のウソ・ホント』(幻冬舎)などがある。

おなかが少し冷えるだけで免疫力ダウン!

私は総合内科医として、30年余り患者さんを診てきました。私のクリニックでは、人工透析を受けている患者さんも、現在、150人ほどいます。

10年ほど前まで、例年、冬場の寒い時季に5〜10人くらいの人工透析の患者さんが、残念ながら亡くなっていました。その原因は、肺炎など感染症によるものでした。人工透析を受けている人は、免疫力が落ちて感染症にかかりやすいのです。

そのようななか、私はあることをきっかけに、患者さんに「腹巻きをしてください」とお願いするようになりました。自分でも腹巻きをつけ、「ほら、私も」と見せて勧めたのです。

すると、その年以降、感染症で亡くなる人工透析の患者さんが、0人になりました。これは今でも変わりありません。この事実は、腹巻きでおなかを温めると、免疫力が高まるという有力な証拠といえるでしょう。

私が腹巻きを勧めるようになったのは、インターフェロン(動物体内でウイルスなどの異物の侵入に反応して、細胞が分泌するたんぱく質)の第一発見者で、ウイルス学の権威の小島保彦先生から、ワクチンに関する研究の話を聞いてからです。

1970年ごろ、小島先生はマウスを使ったワクチンの研究をしていました。その当時は、実験室といえどもエアコンのない時代です。夏は熱がこもって暑く、冬は冷えきった環境のなか、実験が行われていました。

この実験で小島先生は、マウスにワクチンを打つと、夏ではよく免疫がつくのに対し、冬では免疫がつきにくいということに気づきました。

寒い冬では、おなかの中の温度は、暑い夏と比べて1〜2度下がります。これは人でも同じです。

私はこの話を聞き、寒い冬に人工透析の患者さんが亡くなりやすかったのは、免疫力が低い状態に加え、おなかが冷えてさらに免疫力が低下したからではないか、と気づきました。

実際、免疫システムは腹部に集中しているといっても過言ではありません。免疫細胞の一つ、マクロファージの90%がおなかの中(小腸内)にあるのです。

マクロファージは、体内に侵入したウイルスなどを食べて消化・殺菌します。さらに、侵入した異物の情報を、ほかの免疫細胞に伝える役割もあります。いわば、マクロファージは外敵から身を守る門番なのです。

しかし、マクロファージも「冷え」には勝てません。たった1〜2度でもおなかが冷えると、働きが衰えてしまいます。ですので、免疫機能の保持や向上には、おなかを温めるのが効果的といえるのです。

そして、その手段として考え出したのが腹巻きです。いつでもどこでも、寝ているときでも作業をしながらでも、おなかを温められます。これほど最適な物はないでしょう。

睡眠前後のうがいでのどを潤そう!

腹巻きは、季節に関係なく着用することをお勧めします。患者さんには、冬に限らず勧めています。もちろん私も、毎日、一日中、腹巻きをしています。

腹巻きはきつ過ぎず緩過ぎず、自分にピッタリの物を選びましょう。素材はなんでもかまいません。特に寒い所でなければ、日中や暑いと感じるときは、はずしてもかまいません。

ただし、夜は夏でも必ず腹巻きをして寝るようにしましょう。睡眠中は体温が下がりますし、服がはだけておなかが出て冷えることもよくあるからです。

画像: 寝る前は忘れずに腹巻をしましょう。睡眠前後のうがいで、さらに免疫力アップ!

寝る前は忘れずに腹巻をしましょう。睡眠前後のうがいで、さらに免疫力アップ!

さらに、腹巻きとセットでお勧めしたいのが、睡眠前後のうがいです。のどの粘膜に取りついたウイルスなどは、うがいで数を減らせます。繁殖スピードも抑えられ、感染症などにかかるリスクを下げられるのです。

外から帰ってきたときはもちろん、夜寝る前には口腔内を含めてきれいにしておくことも大切です。

寝る前はなんともなかったのに、朝起きたらカゼをひいていたというのは、寝る前に口腔やのどをきれいにしなかったことで、入眠中にウイルスなどがさらに増え続けた結果の発症、ということもあるのです。

また、睡眠後はどうしても気道が乾いています。気道が乾くと、ウイルスなどが侵入しやすくなります。そこで、起床後もうがいをしましょう。入眠中に増えたウイルスなどを洗い流すとともに、気道を潤すのです。

新型コロナウイルスなどの感染症にかからないためには、常に免疫力が落ちないようにするのが大切です。ふだんから腹巻きと睡眠前後のうがいを習慣にして、免疫機能が十分に働くようにしましょう。

画像: この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。

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