解説者のプロフィール

小峰一雄(こみね・かずお)
城西歯科大学(現明海大学歯学部)卒業。小峰歯科医院理事長。歯学博士。独自の予防歯科プログラムを考案し、食事療法、最先端医療を取り入れた治療を実践。歯を抜かずに虫歯を治す「ドックベストセメント療法」の日本における第一人者。著書に『自然治癒力が上がる食事』(株式会社ユサブル)など多数。
体温を上げる入浴のコツ
世界の動きを見ると、新型コロナウイルスの感染で亡くなっているのは、高齢者や有病者が多いようです。一方、免疫力の高い若い人や健康な人は、感染しても軽症で済んでいます。
新型コロナウイルスの感染を予防するには、正常な免疫力をつけておくことがとても大事です。
私は先月ラオスに行き、現地の医師Yさんと会いました。その際に、Yさんから、シンガポールの新型コロナウイルス感染者は、上級階級の人に多いという情報を得ました。
それを聞いて思い出したのが、無菌動物のことでした。昔私が大学で動物実験をしていたころ、無菌室で飼育したラットは感染に弱く、感染するとすぐに死んでいました。
人も同じで、あまり清潔にこだわると、ウイルスや細菌への抵抗力が低下します。むしろ、ふだんから多くの菌と仲よくして、抗体を作れる体にしておくほうがいいのです。
また、低体温になると免疫力が下がり、あらゆる病気にかかりやすくなります。私は若いころ、体温が35.5度と低体温で、よく体調をくずしていました。カゼをひきやすく、感染症にもかかりやすかったと思います。
そこで、体温を上げる工夫をいろいろと試したところ、体温が36.7度まで上がり、それ以来、全くカゼをひかなくなりました。
このときの体験から生まれたのが、当院で患者さんに勧めている「体温上昇プログラム」です。
体温が下がると免疫力が低下しますから、清涼飲料水など冷たい飲み物は避け、なるべく温かい白湯を飲みます。また、砂糖や食品添加物の多い加工食品もよくありません。
入浴にもコツがあります。私は、体温より少し高い38〜39度くらいのお湯で30分以上、半身浴をし、入浴しながら腹式呼吸を行います。
まず、8秒かけて息を全部吐き出し、8秒かけて鼻から息を吸い、8秒間息を止めます。これを10回以上くり返すと、いつの間にか、その日の嫌なことは忘れて、リラックスできます。8秒が苦しい人は、最初は5秒くらいから始めてください。
また、お風呂から上がるとき、首の後ろに冷たいシャワーをサッとかけるか、冷たいぬれタオルを当てると、体温が下がりません。首を冷やすと、脳が「体が冷えている」と錯覚し、体温を上げようとするのです。
こうして入浴で体を温めて、自律神経のうちの休息時に優位になる副交感神経を働かせると、心身の疲れが取れて朝までぐっすり眠れます。
これは、翌朝、活動時に優位になる交感神経をうまく働かせるために、とても大事なことです。
自律神経をうまく切り替えることが大事
一般的に自律神経は、副交感神経が優位なほうがいいとされています。ストレス過多の現代では、交感神経の過度な緊張が病気を招くと考えられているからです。
そのため、交感神経を落ち着かせ、副交感神経を優位にすることに、皆さん一生懸命になっています。しかし、副交感神経が上がり過ぎても病気になります。
自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスが大事なのです。
交感神経は、日中に働く神経です。この神経が優位になると、「闘いのホルモン」と呼ばれるアドレナリンなどが分泌され、体は戦闘モードになります。
ストレスにさらされたり、命の危機が迫ったりしたとき、それに対抗できるのは、この闘いのホルモンの作用です。
交感神経は、ウイルスや細菌とも闘います。交感神経が優位になると血管が収縮し、ウイルスなどの侵入を防ぐのです。
ところが、日中ちょっと気が緩んでぼんやりしていると、副交感神経が優位になってウイルスに感染しやすくなります。副交感神経が優位な状況下では血管が拡張し、ウイルスが血管の中に入りやすくなるのです。
そんなときは、自分のほおをパチンと強くたたいたり、きつくつねったりしてください。一瞬のうちに交感神経が優位になり、ウイルスの侵入を食い止めてくれます。
忙しく働いているときは、疲れていてもなかなかカゼをひきません。ところが、その忙しさが終わったとたん、体調をくずすのは、交感神経の緊張が解けて副交感神経が優位になるからなのです。
自律神経は、朝から夕方までは交感神経、夜から朝までは副交感神経が優位、というのが基本ですが、どちらか一方が過度に高くなったら、うまく切り替えてバランスをとることが大事です。
二つの神経をうまく切り替えられれば、それだけでも免疫力が上がって、病気の予防に役立つでしょう。
小峰先生お勧めの感染予防策
❶ 風呂上がりに首を冷やす
首に冷たいシャワーをサッとかけるか、冷たいぬれタオルを当てる。

❷ 日中に気が緩んだらほおをたたく
日中にぼんやりしていたら、ほおを強くたたいたり、きつくつねったりする。


この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。
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