ウイルスが口腔内に入ってきても、直ちに鼻やのどの粘膜への感染が起こるわけではありません。口の中の細菌が多いほど、感染が起こりやすくなります。感染予防のうえでは、特に朝いちばんの丁寧な歯磨きが効果的です。【解説】岡崎好秀(国立モンゴル医学科学大学客員教授)

解説者のプロフィール

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岡崎好秀(おかざき・よしひで)
1978年、愛知学院大学歯学部卒業、大阪大学歯学部、岡山大学病院小児歯科講師などを経て、現在、国立モンゴル医学科学大学客員教授。歯学博士。日本小児歯科学会指導医。日本障害者歯科学会認定医。共著に『口を閉じれば病気にならない」(家の光協会)など多数。

口の中の細菌が多いほどウイルスに感染しやすい

私はこれまで、患者さんの診療や講演などで感染症についてお話しする機会があるごとに、感染予防のための口腔(口の中)のケアの重要性を強調してきました。

口の中の健康状態を健全に保つことが、インフルエンザなどの予防に大きな力となるのです。このことは、新型コロナウイルスの予防に関しても当てはまります。

次のような臨床研究があります。在宅の高齢者を、歯科衛生士が口腔ケアをする「口腔ケア群」と、本人がケアを行う「対照群」とに分けて、インフルエンザを発症しやすい冬期の6ヵ月にわたって、インフルエンザの発症頻度を調べました。

すると、しっかり口腔ケアを行った群では、発症頻度が対照群の10分の1に抑えられたのです。どうしてこれほどの差が出たのでしょうか。

ウイルスが口腔内に入ってきても、直ちに鼻やのどの粘膜への感染が起こるわけではありません

インフルエンザを例にとると、ウイルスはいわば注射器のようなもので、その注射針にはキャップがついています。このキャップが外れなければ感染が起こらないのです。

このキャップを溶かすのが、たんぱく質を分解する、プロテアーゼという酵素です。この酵素は鼻やのどの粘膜細胞から作られ、舌の汚れを分解したり、消化を助けたりしています。

一方、口の中にいる細菌もプロテアーゼを持っているため、細菌が多いと、いわば注射器のキャップが溶かされ、細胞内へウイルスの侵入を許してしまうのです。

つまり、口の中の細菌が多いほど、ウイルス感染が起こりやすくなるわけです。

先ほどの研究でも、口腔ケアを6ヵ月続けると、口の中の細菌が減り、酵素の量も低下することがわかっています。

このようにきっちりと口腔ケアを行うことが、インフルエンザ予防につながることをデータが示しています。就寝前や起床後は、きちんと歯磨きをしてください。

外出時はできるだけ利き手を使わない!

感染予防のうえでは、特に朝いちばんの丁寧な歯磨きが効果的です。就寝中は唾液が出ないので、口の中が乾燥し、細菌が増加するためです。朝起きたときが、最も細菌の数が多くなります。起き抜けに、口がにおうのも、このためです。

そこで、起床後すぐに歯を磨き、舌の汚れも取るなどの口腔ケアを行えば、細菌が洗い流されるうえ、舌や口が刺激されて唾液が出てきます。満員電車などの人込みで、周囲がセキをしても、口の中がきれいなら、感染が起こりにくくなります。

高齢者の場合、入れ歯のケアも重要です。入れ歯の手入れが不十分ですと、細菌が繁殖するおそれがあるからです。

また、就寝時の口の中の乾燥を防ぐためには「ぬれマスク」が勧められます。

これは、ガーゼを湯で湿らせてから口に当て、その上からマスクをするという方法です。夜間に口が開いても、湿った空気が気道に行き渡り、口腔内の乾燥を防いでくれます。マスクの上部3分の1を外に折り、鼻を出せば、鼻で呼吸できるでしょう。

口の中やのどの保湿を図ることが、新型コロナウイルスをはじめとした感染予防に有効な手段と考えられますから、ぜひ行ってほしいと思います。

今回の新型コロナウイルス予防のため、手洗いが推奨されています。電車のつり革やドアノブなどには、ウイルスが付着しているおそれがあります。それらに触れると、手にウイルスが付着するリスクが考えられるからです。

そこで私は、感染予防の工夫として、外出時にできるだけ利き手を使わない習慣をつけることを皆さんにお勧めしています。

つり革やドアノブに触るだけでなく、エレベーターや自動販売機のボタンを押すとき、通常、誰もが利き手を使います。もしそこにウイルスが付着していれば、利き手に移り、その手で自分の目や鼻、口を触れば、それが感染のきっかけとなります。

そこで、公共物に触れるときは、利き手と反対の手(右利きなら左手)、もしくは、手の外側(甲側)で公共物に触れるクセをつけるといいでしょう。

これを意識的に行うことで、感染リスクをかなり下げることができるはずです。意識さえすれば、できることなので、早速試してください。

岡崎先生お勧めの感染予防策

起床後の丁寧な歯磨き
口の中のケアをしっかり行う。特に、起床後は歯や舌をきれいにすること。
※入れ歯のケアも行う。

画像1: 岡崎先生お勧めの感染予防策

就寝時のぬれマスク
ガーゼを湯で湿らせて口に当て、その上からマスクをする。

画像2: 岡崎先生お勧めの感染予防策

公共物は利き手と反対の手で触る
電車のつり革、ドアノブ、エレベーターのボタン、手すりなどは利き手と反対の手で触る。
右手が利き手なら左手で。

画像3: 岡崎先生お勧めの感染予防策
画像: この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。

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