鼻呼吸は優れた「天然マスク」になりますが、うまく鼻呼吸ができないという人にお勧めしているのが、口の体操「あいうべ」です。感染症の予防として、ほかに、「口テープ」や「馬油の点鼻」なども、患者さんにお勧めしています。【解説】今井一彰(みらいクリニック院長)

解説者のプロフィール

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今井一彰(いまい・かずあき)
みらいクリニック院長。1995年、山口大学医学部卒業。2006年に福岡市博多駅前にみらいクリニックを開業後、さまざまな方法を駆使しながら、薬を使わずに体を治す独自の治療を行う。日本病巣疾患研究会副会長。「あいうべ」による息育や「足指を伸ばす」ことによる足育の普及にも尽力する。著書に『自律神経を整えて病気を治す! 口の体操「あいうべ」』『マンガ 医師が教える足指のばし』(いずれもマキノ出版)など多数。

マスクの下で口を開けていたら予防にならない!

日本では、新型コロナウイルスの予防のために、マスクを着用する人が急増しました。ただし、マスクの下で口をポカンと開けていたら、予防にならないので注意してください。

マスクをつけると、どうしてもマスクの繊維が空気の通り道を遮るので、鼻だけでは呼吸が苦しくなり、つい口を開いて呼吸をするようになります。

そこで私は、感染予防も含め、健康のために、鼻呼吸を行うように指導しています。口をしっかり閉じ、鼻で呼吸することが、通常のマスク以上に優れた「天然マスク」になるからです。

画像: しっかり口を閉じると感染を防げる!

しっかり口を閉じると感染を防げる!

画像: マスクをしていても口呼吸では予防にならない!

マスクをしていても口呼吸では予防にならない!

感染者や持病を持つ人、妊産婦にまずマスクが行き渡るためにも、健康な人が我先にとマスクをつける必要はありません。それより、意識して鼻呼吸をしたほうがいいでしょう。

しかし、うまく鼻呼吸ができないという人もいます。そういう人にお勧めしているのが、私が考案した口の体操「あいうべ」です(やり方は下記参照)。

「あーいーうーべー」と口を大きく動かすと、舌や口の周囲の筋肉が鍛えられ、口を閉じたまましっかりと鼻呼吸ができるようになります。ぜひ試してください。

この体操が、インフルエンザなどの感染症予防に有効であることは、これまでのさまざまなデータで示されています。

例えば、「あいうべ」を取り入れた福岡県の小学校(福岡県春日市立須玖小学校)では、2009年の導入前、インフルエンザ罹患率が37.52%ありましたが、導入後(2012年)は、6.68%とピーク時の約6分の1まで減っています。

「あいうべ」を取り入れた高齢者施設では、熱心に体操を実践している入居者がインフルエンザにかからなくなったという報告も多数あります。

これは、口の体操「あいうべ」がもたらす鼻呼吸の成果と考えられます。

あいうべ体操のやり方

【ポイント】
・大げさなくらい口を大きく動かす。
・①~④を各4秒くらいかけてゆっくり行う。
・①~④を1回として、1日30回を目安に毎日続ける。

画像1: あいうべ体操のやり方

「あー」と、口を大きく開く。

画像2: あいうべ体操のやり方

「いー」と、口を大きく横に広げる。

画像3: あいうべ体操のやり方

「うー」と、口を前に突き出す。

画像4: あいうべ体操のやり方

「べー」と、舌を突き出して下に伸ばす。

鼻の中をよく湿らせることが重要!

鼻呼吸をしていると、鼻からウイルスが侵入しても、鼻毛や鼻の粘膜に生えている線毛、そこに流れている粘液などがウイルスをからめ取り、鼻水として排出してくれます。

それに鼻の奥には、免疫の最前線である扁桃リンパ組織があり、ウイルスなどの異物の侵入を防いでいます。つまり、鼻呼吸を行うと、このような二重のフィルター機能が働くようになるのです。

鼻の加湿機能も重要です。鼻の中の湿度は75~90%もあります。鼻から入った空気は温められ、湿らされて、気管から肺へと送られます。

鼻汁は1日に1Lも分泌されていますが、その多くが空気の加湿に使われています。そのため、気管支粘膜を傷めつけることもなく、空気を肺まで送り込むことができます。

これが口呼吸となると、フィルター機能も、加湿機能も働かなくなり、ウイルスなどはそのまま直接体内へと取り込まれてしまいます。しかも、乾いた空気が直接入るため、口の中やのどが乾燥し、いよいよ免疫力が落ちてしまうのです。

高齢になると舌の筋肉が衰え、舌の位置が下がり、気道が狭くなって、呼吸がしにくくなります。しかも、誤嚥も引き起こしやすくなるので、高齢者には「あいうべ」をぜひ行ってほしいと思います。

この体操で口や舌を支える筋肉の力を回復させることで、鼻呼吸が習慣になり、ふだんからしっかり口を閉じていれば、感染症にかかる危険性は大幅に低下するはずです。


先にも述べたとおり、「あいうべ」がインフルエンザ予防に有効であることは、数々のデータでわかっています。同様に、新型コロナウイルスの予防にも役立つと考えられます。

感染症の予防として、私は「あいうべ」のほかに、「口テープ」や「馬油の点鼻」なども、患者さんにお勧めしています。

口テープは、夜寝るときに、医療用のテープ(サージカルテープなど)を唇の中央に縦に貼って眠るという方法です(やり方は下記参照)。

日中は、鼻呼吸しているという人でも、夜の睡眠時は口呼吸になることが多いものです。起床時に、口の中が乾燥したり、のどがヒリヒリしたりする人は、間違いなく口呼吸になっています。こうした人は、口テープを行って鼻呼吸するべきです。

口テープのやり方

画像1: 口テープのやり方

【用意する物】
幅12㎜前後の医療用テープ(サージカルテープや絆創膏など)
*薬局で購入できる

画像2: 口テープのやり方

テープを5cmほどに切る。

画像3: 口テープのやり方

唇の中央に縦に貼り、そのまま寝る。強く貼る必要はない。朝、起きたらテープをはがす。

ただし、鼻が詰まっている人は、テープを貼ると息がしづらいかもしれません。そういう人にお勧めしているのが、鼻の炎症を抑えて通りをよくする馬油の点鼻です。

馬油とは、その文字のとおり「馬の油」のことで、動物性の天然油として知られています。人の皮脂に近い成分で、親和性が高いので、安心して使えます。やけど、切り傷などに使用されてきました。

馬油の点鼻を行うと、鼻の通りがよくなるだけでなく、鼻の中に油脂の層ができて乾燥を防ぎ、バリア機能も高めてくれます。つまり、ウイルスなどからの感染を防ぐ効果も期待できるのです。

馬油の点鼻のやり方

馬油は固形と液状の2種類があります。どちらを用いてもかまいません。

画像: 馬油の点鼻のやり方

固形タイプ(上写真)
綿棒に少量つけて、鼻の奥に塗りつけます。
液状タイプ
数滴(約0.5ml)を鼻の中に垂らし、鼻の奥まで届くように30秒ほど顔を上げておきます。

この点鼻を朝昼晩の3回行うといいでしょう。

注意してほしいのは、使い過ぎないことです。量は少量、数滴で十分。重要なのは、鼻の中をよく湿らせることです。

新型コロナウイルスの感染予防のために、皆さんも鼻呼吸を行うように、ぜひ心がけてください。

画像: この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年6月号に掲載されています。

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