解説者のプロフィール

祐貴つばさ(ゆうき・つばさ)
「色とココロのコンシェルジュ」、レゼル・ド・マクルール〜私色の翼〜代表。色彩心理カウンセラー。仏ブランド・シャネルの日本法人に、アシスタント、セールスアナリスト、ビジネス企画管理部門マネージャーとして25年間勤務。
黒い服を何枚持っていますか?
黒い服は本当に無難?
黒い服は、人気がありますよね。年齢を問わず、ファッションのどこかに黒を取り入れている人が大勢います。思い出すと、クローゼットのなかには、たくさんの黒い服が並んでいませんか。カットソーやブラウス、セーター、ワンピース、スカート、パンツ、スーツ、ジャケット、コート、ストール……。持っている服の3分の1は黒、という人も多いと思います。
実際に黒をよく着る女性に同じ問いを投げかけると、大半の人から「失敗がなさそうだから」「無難だから」という答えが返ってきます。

なんとなく「無難だから」という理由で黒い服を選んでいませんか?
そもそも黒は、無難な色だと本当に思いますか。黒は、どんな色より強くて頑固で、気高さを感じさせる特別な色。実は、大人の女性にとって、黒ほど着こなしの難しい色はないのです。
黒に頼ってはいけない4つの理由
黒が似合わなくなったサインに気づいて
最近のあなたに、黒は似合っていますか。「顔映りが悪い気がする」「なんだか、老けて見えるように感じる」「気持ちが重くなる気がする」そんなふうに感じることがないでしょうか。そうであれば、もはや黒が似合わなくなっている証。「無難だから」と黒に頼っていい時期はすぎた、ということです。大人の女性が、黒を着てはいけない理由は四つあります。
● シミ・シワ・クマを目立たせる。顔を険しく見せる
● 自身全体の雰囲気を重たく見せる
● 無意識に、人と距離を置いてしまう
● 自分の気持ちを抑えてしまう
それでも黒を選んでしまう心理
黒などの無難な色、地味な色に頼ってしまう大人の女性の心には、さらにこんな思いが隠れているかもしれません。
● 自分を客観的に見たくない
● 人と同じなら安心する
● 変わることが不安なので避けている
もし、こんな気持ちが「無難な色」をあなたに選ばせているとしたら。それは、あなたにとって「理想の自分」でしょうか。このままでは「ありたい自分」からどんどん遠ざかり、若々しさも楽しさも人生の喜びも、薄らいでいきかねない。ここに気づいてほしいのです。
理由その①:大人の女性を老けて見せる
顔の近くにおくと、顔が暗く濃くなる
顔のそばに明るい色を持ってくると、その明るさが顔に反映し、肌が明るく見えます。シミやシワが目立ちにくくなります。反対に、顔のそばに暗い色を持ってくると、その暗さが顔にも反映し、肌が暗く濃く見えることになります。人の目に見える色のなかで、いちばん明るい色が白、いちばん暗い色が黒です。白と黒で顔映りを比べると、顔色の変化がよくわかります。
理由その②:女性を「重たく」見せる
黒は「痩せて見える」色?
多くの女性が黒い服を好む理由に、「やせて見えそうだから」という答えもあります。たしかに、黒には「収縮効果」があります。物が、よりシャープに引き締まって見える効果です。
この効果がよくわかる例として、碁石の大きさがあります。黒の石の大きさと白の石の大きさは、異なるようにつくられています。黒には収縮効果があるので、実際に同じ大きさにすると、黒の石のほうが小さく見えてしまうからです。そのため、黒の石は白の石より、ほんの少し大きくできています。そうすることで、両者は同じ大きさに見えるのです。

見た目の「重さ」にも着目して。
色の印象の「重さ」にも着目して
一方、色には「軽い」と「重い」という印象があります。色の明るさと暗さが、見た目の軽さ・重さの印象につながっています。色違いの二つの物があったとき、明るい色のほうが、より軽く感じられ、暗い色のほうが、より重く感じられます。白と比べると、黒は見た目に感じる重さが、なんと1・87倍にもなるという実験結果もあります。黒を着ている人は、そのくらい重たく見えてしまうのです。
体型がスリムで引き締まっている人は、黒の収縮効果で、よりスリムに見えます。一方、ふっくらした体型の人が黒い服を着た場合、収縮効果より重たく見える効果のほうが顕著になります。つまり、ふっくらした体型を黒で覆ってしまうと、ズッシリと重たそうに見せてしまうのです。
理由その③:コミュニケーションがネガティヴに
黒の持つネガティヴイメージも意識
色は、体験や記憶、イメージとつながっています。そして人は、色に象徴的な意味を感じています。色の持つイメージ・意味には、すべてポジティブなものと、ネガティブなものがあります。
黒のポジティブなイメージ・意味には、「自己確立・意志の強さ・集中・高級感・威厳・重厚」などがあります。「プロフェッショナルに見える色」でもあります。ネガティブなイメージ・意味には、「孤独・人と距離を置きたい心理・重苦しい・抑圧・反抗・悲しみ・威圧感・恐怖」などがあります。
色に惹かれるのは、自分の心身に必要だから
私たちが色に惹かれるのは、その色のイメージ・意味がそのときの気持ちに合っているから。そのときの自分の心と体に必要な色を、無意識にも選んでいます。では、黒に惹かれるのは、どのような心理でしょうか。
例えば、「強い意志を持って自分を確立していくとき」など、ポジティブなイメージが、気持ちに合っているときがその一つ。「強い自分」を表現したいときです。プロフェッショナルであることや、ストイックさも感じさせます。自分の感情を表に出さないことから、仕事向きの色ともいえるでしょう。
しかし、着慣れているからという理由で、黒ばかりを毎日のように着ていると、人と距離を置きすぎてしまったり、孤独感が増したりします。考えが頑固になりすぎることもあるでしょう。自分の感情を抑えてしまうことにもつながっていきます。
理由その④:黒は気持ちを抑えてしまう色
黒は「感情を抑え込むイメージ」と重なる
色は、物体が光のなかの特定の波長域を反射、透過、吸収することで見えるものです。黒は、可視光(目が感じることのできる光の波長)のほぼすべての波長域を吸収することで見える色。「光をすべて内側にしまい込んだ状態」「外側に表現していない状態」というイメージとつながります。

黒は「自分を抑え込む」色でもあります。
また、黒は人の目に重たさをもっとも感じさせる色です。人は物を見るとき、その物自体のイメージを重ねて見ます。黒は、心に重石をずっしりと乗せているようなイメージとつながりやすいのです。こうしたことが、「自分の感情を抑圧するイメージ」と重なります。
頻繁に着ると自分のイメージも重ねてしまう
頻繁に黒を着ていれば、それだけ多く、黒のイメージと自分を重ねて、潜在意識にインプットしやすくなるのです。反対に、自分の感情を抑えているからこそ、黒い色が気になることもあります。惹かれる色には、自分の気持ちが投影されているからです。だからといって、長い間、黒い服を着たり、身近に黒ばかり置くと、自分の本当の感情をさらに表に出せなくなります。黒は、そんな悪循環も起こしやすい色なのです。
本来のあなたが持つ、優しさ、やわらかさ、明るさや無邪気さ、情熱、感性を、大切な人に伝えないままでいいのでしょうか。
もう「黒」に頼らず生きていこう
黒はフォーマルな色、普段着は彩り豊かに
黒は、たくましく生きる女性を象徴する色。自己を確立するまでは、黒のポジティブなイメージを優先させ、かっこうよく着るのも「あり」と思います。しかし、「無難で便利だから」「ずっと着ていて、慣れているから」という理由で黒から離れられないまま、一生をすごしてもよいのでしょうか。黒はフォーマルな色で、特別なときに着る色であって、ふだん着にも取り入れてしまったら、ほかの色が人生に入ってこなくなってしまいます。

「黒」はフォーマルな色。特別な日のためにとっておきましょう。
黒ばかり着ていれば、「自分のなかのさまざまな可能性を表現すること」が邪魔されてしまいます。大人の女性はもう黒に頼って生きるのをやめましょう。黒はフォーマルなときに着る特別な色です。それでも黒を着たいと感じたときには、なぜ心が黒を求めたのか考えてみましょう。その理由に気づいたとき、自分の心と向きあっていくきっかけをつかめるはずです。
なお、本稿は『なぜ、あなたは「黒い服」を着るのか 人生が変わる色の魔法』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

★「気づけばクローゼットの服が黒ばかり」は要注意!惹かれる色には、実は本心が表れている!シャネルの元マネージャーが教える色彩心理の世界。あなたが無意識に身につけている色にも意味があります。これまでの半生を棚卸しし、自分らしい色を見つけることで、本当になりたい大人の女性を表現できる一冊。自分を表現できる色選びとコーディネートの方法も紹介!
www.amazon.co.jp