卵の摂取を制限してコレステロールや亜鉛の不足に陥り、老化や動脈硬化のリスクを高めている人が多いのです。卵かけご飯は食後の血糖値の急上昇も自然に抑えてくれますし、卵はコリンという成分も多いので、認知症のリスク低減にも役立ちます。【解説】平澤精一(マイシティクリニック院長)

解説者のプロフィール

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平澤精一(ひらさわ・せいいち)

マイシティクリニック院長。1981年日本医科大学卒業。1986年同大学大学院医学研究科卒業。医学博士号取得。日本医科大学付属病院、三井記念病院、河北総合病院等を経て、1992年マイシティクリニックを開院。新宿区医師会会長も務める。健康寿命に深く関わるテストステロンの研究者として知られる。『亜鉛チャージ健康法』(アスコム)など著書多数。
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コレステロール不足が亜鉛不足を招きやすい

「卵は、コレステロールを増やして動脈硬化を招くから、1日1個以上食べてはいけない」と思い込んでいませんか。

実は、これは古い常識です。

確かにそう言われていた時期もありましたが、厚生労働省の定める食事摂取基準では、2015年以降、食事からとるコレステロールの上限値は撤廃されています。

というのも、食事のコレステロールと血中濃度には、従来考えられていたような因果関係がないことが明らかになってきたからです。

悪者扱いされがちなコレステロールですが、実際には、細胞膜やホルモン、消化液の胆汁酸などの材料として欠かせない大切な成分です。

そのため、コレステロールをしっかり補給できるように、体内には、必要に応じてコレステロールを産生するしくみが備わっています。

食事でコレステロールを多くとれば体内での産生量が抑えられ、逆に食事で不足すれば体内での産生量が増えて、調節される仕組みになっているのです。

従って、食事でとるコレステロールの量だけで、血中コレステロールが左右されるわけではありません。

ただし、中には、食事でとる量に影響を受ける「レスポンダー」と呼ばれるタイプの人もいます。「血中コレステロール値が高い」と健診や医療機関で指摘され、かつ医師から食事でコレステロールをとりすぎないように言われている人は、このタイプと考えられるので注意が必要です。

しかし、診療していて、このタイプの患者さんは少ないというのが私の実感です。

むしろ、総コレステロール値が低すぎて(目安は160mg/dl以下)、心配になる人が目立ちます。そういう人たちは、「卵は1日1個まで」という昔の常識を守っていることが多いのです。

コレステロール値が低すぎると、細胞の新陳代謝が低下したり、ホルモンバランスが乱れたりする恐れがあります。また、そういう人は、同時に重要なミネラルである亜鉛が不足しているケースが多く見られます。

亜鉛は、新陳代謝を促し、若さを保つのになくてはならないミネラルです。さらに、亜鉛をしっかりとることは、男性ホルモンのテストステロンを、円滑に生成・分泌させるためにも大切です。

テストステロンは、男女を問わず、筋肉や骨を強くしたり、動脈硬化を抑制したりと、体内で重要な働きをしています。

卵は1日2~3個食べてよい

卵は、亜鉛も豊富に含んでおり、身近な亜鉛の供給源として最適な食品です。

ところが、卵の摂取を制限して、コレステロールや亜鉛の不足に陥り、かえって老化や動脈硬化のリスクを高めている人が多いのです。

私はこういう患者さんには、レスポンダーでない限り、「卵を1日2個か3個食べてみましょう」とお勧めします。

卵料理にもいろいろありますが、中でも勧めているのが卵かけご飯です。卵かけご飯は、手軽においしく食べられ、毎日の習慣として続けやすからです。

実際に、卵かけご飯をお勧めすると、体調がよくなり、肌や髪なども若返っていく患者さんが多いのです。

卵かけご飯で補給できる亜鉛は、インスリン分泌と作用の維持に欠かせない成分です。

しかも、ご飯が卵のたんぱく質や脂質でコーティングされるため、血管の内壁を傷つけ、脳梗塞・心筋梗塞のリスクを高める食後の血糖値の急上昇も自然に抑えてくれます。

また、卵には、認知症のリスクを低下するコリンという成分も多いので、卵かけご飯を習慣づけて食べていれば、認知症のリスク低減にも役立ちます。

画像: 白米をモチ麦に変えることで、亜鉛量が2.8倍に!

白米をモチ麦に変えることで、亜鉛量が2.8倍に!

普通にご飯に卵をかけるだけでも、もちろんいいのですが、ひと手間かけるだけで、味わいと効果を増す方法があります。

それは、モチ麦を混ぜて炊いた熱々ご飯に、先に卵白だけをよく混ぜ込んで熱を通してから、卵黄をのせる方法です。

生の卵白には、卵黄に含まれるビオチン(ビタミンB7)と結合して、吸収を妨げてしまうアビジンというたんぱく質が含まれています。

しかし、このアビジンは加熱すると、ビオチンと結合する力を失います。先に卵白を熱々のご飯に混ぜてアビジンを失活させることで、ビオチンを無駄なくとれるのです。

生の卵白と卵黄を一緒にとったからといって、全てのビオチンが結合するわけではないので、普通の食べ方でも大きな問題はありません。栄養を少しでも無駄なくとりたい人には、この方法がお勧めです。

また、モチ麦は白米よりも糖質が少なく、亜鉛やマグネシウムなどのミネラルや、食物繊維が豊富です。特に食物繊維は白米の20倍近く含まれています。

食物繊維は腸での糖質の吸収を抑えたり、腸内環境を整えたりする働きがあります。

卵白をモチ麦ご飯に混ぜ込むと、全体にふんわりした食感の中で、プチプチした歯ごたえが楽しめてとてもおいしいので、ぜひお試しください。

卵かけモチ麦ご飯を食べるのは、どの時間帯でも構いませんが、できれば朝食べると、含まれる栄養素の吸収が高まります。

また、その次の食事での血糖値上昇も防ぐ「セカンドミール効果」も得られるので、一石二鳥でしょう。私自身も、卵かけご飯を食べることを、毎朝の習慣にしています。

画像: この記事は『安心』2020年5月号に掲載されています。  www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年5月号に掲載されています。

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