「体がだるく、やる気が出ない」「記憶力・判断力が低下した」「イライラや不安感がある」「見た目が急に老けてきた」などの症状は、「熟年期障害」によるものである可能性が高いのです。その対策としてお勧めしているのが「卵かけご飯」です。【解説】平澤精一(マイシティクリニック院長)

解説者のプロフィール

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平澤精一(ひらさわ・せいいち)
マイシティクリニック院長。1981年日本医科大学卒業。1986年同大学大学院医学研究科卒業。医学博士号取得。日本医科大学付属病院、三井記念病院、河北総合病院等を経て、1992年マイシティクリニックを開院。新宿区医師会会長も務める。健康寿命に深く関わるテストステロンの研究者として知られる。『亜鉛チャージ健康法』(アスコム)など著書多数。

気力、体力の衰えは老化現象とは限らない

「体がだるく、やる気が出ない」「記憶力・判断力が低下した」「イライラや不安感がある」「肌荒れや脱毛があり、見た目が急に老けてきた」

こんな症状に心当たりはありませんか。60歳以上の「熟年期世代」なら、多くの人が思い当たりつつ、「老化だから仕方ない」と諦めていないでしょうか?

しかし、ちょっと待ってください。ここに挙げた症状は、単なる老化ではなく、特定のホルモンやミネラルが不足して起こる「熟年期障害」によるものである可能性が高いのです。

その効果的な対策として、私がお勧めしているのが「卵かけご飯」です。なぜ、卵かけご飯なのか。それについて、以下にお話ししましょう。

女性が50歳前後の更年期に、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下し、さまざまな体調不良に悩まされる「更年期障害」はよく知られています。

ただ、その後、60歳前後から男女問わず起こる、テストステロンの低下が引き起こす体調不良「熟年期障害」についてはまだよく知らないという方も多いのではないでしょうか。

テストステロンは、代表的な男性ホルモンで「筋肉や骨を作り、強くする」「血管の柔軟性を保つ」「意欲を高める」などの働きをしています。

男性だけでなく、女性の体内でも分泌され、これらの働きをしている大切なホルモンです。テストステロンの分泌量は、加齢やストレスによって低下します。その結果、冒頭に挙げたような症状が起こるのです。

亜鉛不足が要介護になるリスクを高める

「熟年期障害が加齢によるものなら、やはり仕方ないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、熟年期障害には、加齢の他にもう一つ、重大な要因があります。

それは、ミネラルの一種である亜鉛」不足です。亜鉛は、人体に不可欠なミネラルで、細胞の増殖や新陳代謝に深く関わっています。

また、体内で働く300以上の酵素に必要で、「免疫力を高める」「骨を強くする」「肌や髪を若々しく保つ」「味覚や視力を維持する」などの働きをしています。

一言でいうなら、「体の細胞がイキイキと働くために、なくてはならないミネラル」です。

ところが、その大切な亜鉛が、特に日本人は不足しやすく、潜在的な「亜鉛欠乏状態」にあるといわれています。

理由は、日本人の食習慣にあります。亜鉛は、牡蠣や肉類などに豊富に含まれています。肉を常食している欧米人と違い、アッサリしたものを好む日本人、特に中高年者の食事では、欠乏しやすいのです。

しかも、亜鉛は吸収率の悪いミネラルで、加齢やストレスで消化吸収力が下がることによっても不足しやすくなります。

亜鉛が不足すると、テストステロンの生成や分泌の低下も招きます。つまり亜鉛不足は、直接的にも、テストステロンの分泌低下を通じても、熟年期障害を悪化させてしまうのです。

一番の問題は、こうした熟年期障害を「単なる老化」と放置しておくと、要介護や寝たきりにつながる、本格的な老人性うつ、認知症、骨粗鬆症、脳梗塞など、重大な病気のリスクが大きく高まるということです。

ロコモティブシンドローム(骨や筋肉が衰えて基本的な運動機能が低下した状態)やサルコペニア(全身の筋肉量が低下した状態)、フレイル(虚弱)なども起こしやすくなります。

亜鉛不足が引き起こす10大症状
①知覚異常
 ・味覚・嗅覚の異常 ・視力低下、白内障
②成長障害
 ・低身長、体重増加不良 ・性腺発達障害
③皮膚、髪、爪、粘膜の障害
 ・湿疹、皮膚炎、口内炎、脱毛 ・褥瘡(床ずれになりやすく治りにくい)
④貧血、食欲不振
⑤骨粗鬆症
⑥免疫力の低下
⑦慢性肝疾患、肝硬変の悪化
⑧糖代謝異常(インスリンの生成と作用の低下)
⑨脳機能の低下
 ・情緒不安定、うつ傾向 ・記憶力低下
⑩ 性機能障害
 ・前立腺障害、ED ・卵巣機能不全

では、熟年期障害を防ぎ、これらのリスクを遠ざけるには、どうすればいいのでしょうか。

そのために力を発揮するのが、「卵かけご飯を毎日食べる」という習慣なのです。

卵は、筋肉や皮膚の材料になる良質なたんぱく質や、代謝を促すビタミンA、骨を強くするカルシウム、それを助けるビタミンDなども豊富に含むスーパーフードです。

そして亜鉛の補給源として非常に優秀な食材でもあります。

100g当たりの純粋な含有量として亜鉛が多いのは牡蠣が13.2mgで断トツで、豚レバー(同6.9mg)と続きますが、毎日食べるのは、経済的にも味覚的にもなかなか困難です。

これらに比べれば含有量は劣りますが、それでも卵黄は4.2mgと食品の中では亜鉛が豊富で、卵1個で約0.7mgが取れます。なによりいつでもどこでも安価で購入できます。卵かけご飯なら調理も簡単で、レシピのバリエーションも豊富です。

人生100年時代、60・70・80歳などまだまだこれからという年代にも関わらず、亜鉛不足からイキイキと過ごせなくなるのは、非常にもったいないことです。若さと健康を守るため、55歳を過ぎたら、ぜひ卵かけご飯で亜鉛補給をお勧めします。

画像: この記事は『安心』2020年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年5月号に掲載されています。

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