割りばし踏みは、ひざのみならず腰や股間節の負担も減り、痛みの解消につながります。また、ネコ背の改善、ポッコリ下腹を引っ込ませる効果も期待できます。自然と正しい体の使い方になるため、スポーツをやっている人全般にもお勧めです。【解説】藤田昌宏(JCMA認定体軸セラピスト・理学療法士)

解説者のプロフィール

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藤田昌宏(ふじた・まさひろ)

理学療法士。JCMA認定体軸セラピスト。幼少期より格闘技を学ぶ。空手、柔道は有段で、ボクシングはプロライセンスを保持。セラピストとして、病院勤務、整体院での施術を経験。現在は、訪問での整体やデイケアなどを行っている。パーソナルトレーナーとしても活動しており、格闘技の世界王者も多数指導。

足裏を上手に使えないとひざ痛のリスクが上がる

ひざが痛くなる原因は、ひざ周囲の筋肉や靭帯の衰え、関節の損傷や変形など、さまざまです。原因はさまざまですが、その根本には、「足裏がうまく使えていない」という問題があります。

二足歩行をする人類は2つの足の裏で全体重を支え、立ったり、歩いたりしています。

そのため、足裏には多くの筋肉や強力な靭帯があり、衝撃をやわらげるアーチ(弓状)構造を作っています。「土踏まず」もその一つです。それによって、歩行時に地面からの衝撃を吸収し、足やひざ、腰への負担を軽減しています。

さらに足裏には、地面の状態や体重のかかり方などを敏感に感じ取るセンサーの働きがあります。刻々と変わる体や地面の状況をセンサーが感知し、全身の筋肉を無意識にコントロールすることで、私たちは体のバランスをとりながら、2本の足で自在に歩けるのです。

ところが、現代人は靴をはく生活の影響で、足裏のアーチがくずれたり、足裏のセンサー機能が鈍ったりしやすいのです。その結果、何が起こるでしょう?

まず「重心の乱れ」です。立つときは、土踏まずは接地せず、母趾球(足の裏の親指の付け根のふくらみ)とかかとに重心がかかるのが、本来の正しい立ち姿勢です。それが、重心がつま先側に片寄った「前重心」になっている人が多くいます。

前重心はひざ周辺の血流を悪くする

重心が前にかかると、直立姿勢を保つために、太もも前面の筋肉や太もも外側の筋肉に過剰に力が入ります。すると、ひざ周辺の血管に強い圧力がかかって、血流が悪くなります。

一方、太もも裏側や内側の筋肉は伸びてしまいます。ひざ関節の曲げ伸ばしは、太もも前面と背面の筋肉がバランスよく動くことで安定しますが、前重心によってそのバランスがくずれ、ひざの動きが悪くなってしまうのです。

私たちの体は構造上、前に倒れそうなときは踏ん張ることができますが、後ろには踏ん張りが効きません。

そのため、加齢などで筋力が衰えると、姿勢をくずし、わざと重心を前に片寄らせて、バランスを取ろうとします。

背中を丸め、上半身を前に倒す(ネコ背)。ひざを曲げて、腰を落とす。高齢で足腰の弱ったお年寄りの姿勢を思い浮かべると、分かるでしょう。

ですが、その姿勢で歩こうとすると、ひざに大きな負担がかかります。健康な人でも、わざとひざを少し曲げたまま歩いてみたら、すぐにひざが痛くなります。

姿勢が悪く、ひざが痛い人は、その無理のある歩行を常にしているわけです。

ネコ背とポッコリ下腹も解消できる!

このように足裏がうまく使えないと、筋肉の働き、関節の動き、姿勢に悪影響が及び、ひざ痛を引き起こします。

それを改善するために、私が考案したのが「割りばし踏み」です(詳しいやり方は下項)。

割りばし踏みは、足裏への刺激とストレッチを組み合わせることで、前に片寄った重心を後ろに戻します。

また、太もも前面と背面の筋肉のバランスを整える効果があります。さらに、使えていない足裏の筋肉を使えるようにして、足指の地面をつかむ力を高める効果もあります

その結果として、姿勢が正しくなり、立ったときのバランス力や安定感が上がるので、歩きやすくなります。

ネコ背の改善につながりますし、ポッコリと出た下腹部を引っ込ませる効果も期待できます。

立ったとき、歩くときの姿勢がよくなるので、ひざのみならず、腰や股間節の負担も減り、痛みの解消につながります。

また、硬かった筋肉がほぐれることで、下半身の血流が改善します。足にたまった血液を上半身へ送り返す働きも向上するので、結果的に全身の血行もよくなります。

さらに、継続するうちに運動能力も上がります。足裏のセンサー機能が復活することで、前後左右への重心移動がスムーズになり、機敏な動きができるようになるのです。

自然と正しい体の使い方になるため、全身の筋肉バランスが整い、筋力がつきやすくなる二次的な効果もあります。ですから、スポーツをやっている人全般にもお勧めです。

実際に、加齢に伴う変形性ひざ関節症などに悩んでいる高齢の方から、半月板損傷などのケガに苦しんでいるスポーツ選手まで、幅広い人たちに割りばし踏みを実践してもらっています。いずれのケースでも、ひざ痛の解消に大いに効果を発揮しています。

健康の要は「足裏」にあり。ひざ痛に悩んでいる人はもちろんのこと、動きやすく快適な体を取り戻すために、ぜひ、すべての人に割りばし踏みを実践していただきたいと思います。

割りばし踏みのやり方

割りばしを2膳重ねて、輪ゴムで留め、その上でひざの曲げ伸ばしや足上げを行うだけで、ひざ痛が和らぎます。スーパーやコンビニでもらえる割りばしでもできるので、ぜひお試しください。

【用意するもの】
未使用の割りばし……2膳(丸い割りばしは避ける)
輪ゴム……6本

【最初の準備】
割りばしの広い面をぴったりと重ね、ずれないようにして両端を合わせる。輪ゴム3本ずつで、両端をぐるぐるに縛る。細い方(食べ物をつかむ側)と太い方(持つ側)は、気にしなくてもよい。

画像1: 割りばし踏みのやり方
画像2: 割りばし踏みのやり方

【基本の流れ】
左右どちらかの足の裏に、「内側置き」で割りばしをセットして、「ひざ曲げ」を5回行う。
終わったら、同じ側の足の裏に、「外側置き」で割りばしを置き、同様にひざ曲げを行う。
反対の足でも同じ流れでひざ曲げをし、「片足上げ」に移る。
片足上げもひざ曲げ同様、「内側置き」「外側置き」の2つの置き方を、左右の足でそれぞれ行う。

画像3: 割りばし踏みのやり方

【① ひざ曲げ】
左の足裏に「内側置き」で割りばしを置き、5回両ひざを軽く曲げて伸ばす。「外側置き」でも同様に5回行う。その後、右足で内側置きで5回、外側置きで5回ずつひざを曲げ伸ばしする。

画像4: 割りばし踏みのやり方

【② 片足上げ】
左の足裏に「内側置き」で割りばしを置き、右足を無理のない範囲で5回上げ下げする。「外側置き」でも行う。その後、右足でも同様に内側置きで5回、外側置きで割りばしを置いて足を上げ下げする。
*いずれの動きも、割り箸を置いた方の足は上げ下げせず、反対の足を動かすこと。

画像5: 割りばし踏みのやり方

*ふらつく人は、いすの背をつかみながらでもOK

画像6: 割りばし踏みのやり方
画像: この記事は『安心』2020年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年5月号に掲載されています。

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