解説者のプロフィール

川村昇山(かわむら・しょうざん)
弘漢療法院院長。1928年北海道生まれ。1947年鍼灸あん摩マッサージ免許取得。東洋医学の理論を電磁気、イオン、磁場から考察した新たな理論として構築。その病理研究は西洋医学界からも高い評価を受けている。90歳を超えた現在も現役で治療院での治療を行うとともに講演会などで全国を回り、精力的に1円玉療法の普及に努めている。『1円玉を体にはると超健康になる』『1円玉で病気を治す本』『1円玉で痛みが消える!病気が治る!』(マキノ出版刊)など著書多数。
東洋医学の理論をもとにした健康法
いすから立ち上がろうとしたときや歩き始め、階段を上り下りすると、ひざにズキンと痛みが走る。そんな悩みをお持ちの方にぜひ試していただきたいのが「1円玉療法」です。
1円玉療法は、1円玉で肌をこすったり、押したり、テープではったりすることで、ご家庭で簡単・安全に鍼灸治療と同様の効果が得られる健康法です。
手軽さと効果の実感から、ひざ痛はもちろんのこと、めまい、耳鳴り、難聴、ぜんそく、頻尿など、さまざまな病気や不快症状の改善・解消に役立つと、長年にわたり喜ばれています。
症状にもよりますが即効性があり、早ければ1円玉をはって数分で痛みが消えることもあります。遅くとも数日から数週間でなんらかの体感を得られるはずです。
1円玉療法は、「体内の電気エネルギーの異常が病気の原因である」という考えに基づく治療法です。少し詳しく説明しましょう。
万物はすべて電気エネルギーを持つ磁性体です。すべての物質の根源である原子はプラス電荷を持つ原子核(陽子・中性子)とマイナスの電荷を持つ電子から構成されています。
電磁場・電磁波といわれるように、電気と磁気はコインの裏表のような関係にあります。ですから、私たち人間の体もまた、電気エネルギーや磁気を帯びています。
地球そのものが巨大な磁石であり、太陽光も電磁波です。食べるものにも酸性(プラスイオン)・アルカリ性(マイナスイオン)があり、環境や生活習慣によって、私たちの生体磁気のバランスは、日々影響を受けています。
電気エネルギーのプラスとマイナス。磁力のS極・N極。こうした相反するエネルギーを、東洋医学では「陰陽」と名づけ、これらのエネルギーの流れを「気」、その通り道を「経絡」、気の反応点を「経穴(ツボ)」と呼んだのでしょう。
東洋医学では、病気が起こるのは、陰陽が片寄ったり、気がどこかで滞ったりした結果だとされています。
これを言い換えれば、体のどこかでマイナスの電気エネルギーが異常に集まると、神経を興奮させたり筋肉をこり固めたり、血液の流れが悪くなったりすることで、痛みや不調が起こるということです。
痛みを引き起こす電気エネルギーを打ち消す
1円玉の素材であるアルミニウムは、肌の水分に触れるとマイナスの電気エネルギーを放出しやすい(イオン化しやすい)性質を持つ金属です。
1円玉を肌にはることで、肌の表面が強いマイナスの電気エネルギーを帯びると、体内では、今度はそれと釣り合いを取るため、体内ではプラスの電気エネルギーが発生します。
このプラスの電気が、体内に増え過ぎていたマイナスの電気を打ち消すように働きます。
その結果、片寄っていた電気エネルギーが中和され、生体磁気のバランスが整えられることで、神経の過剰な興奮や血流障害が改善し、さまざまな痛みや不調を改善しているのです。
1円玉療法が効くしくみ

体内にマイナス電子が集まって生体磁気のバランスがくずれる。

皮膚の表面が電子を帯び、体内ではプラスの電気を帯びたイオンが発生。
体内のマイナスの電子が減って生体磁気のバランスが整う
1円玉をはる場所は、ひざの周辺を押してみて、痛みや響き、心地よさなどがあるところになります。鍼灸では、そうした響く場所を「阿是穴(あぜけつ)」と呼び、その人特有のツボとして最も効く場所として考えています。
それに加えて、ひざ痛の特効ツボである陽陵泉と足の三里、ひざに水がたまるときに役立つツボの太衝にも1円玉をはるとよいでしょう。
1円玉は直径2cmと鍼先に比べて非常に大きいですから、「だいたいここだな」という位置にはるだけでも、電気エネルギーのバランスをうまく取ることができます。
1円玉は、皆さんの財布の中に数枚は入っていることでしょう。あとは肌にはるためのテープ(サージカルテープや布ばんそうこう)さえあればすぐに試すことができます。
1円玉はくり返し使うことができますし、1円玉療法に使用してからでも硬貨としての価値に変わりはありません。消耗品として必要なのは、テープだけです。
ただし、1円玉療法は、あくまでも対症療法と考えてください。ひざの炎症や痛みを抑えるのには高い効果がありますが、すでに変形してしまった関節を元の状態に戻すことは難しいでしょう。
必ず医師の診療を受け、その上で、治るまでの間のつらい痛みを抑えるのに、副作用のある鎮痛剤よりも、副作用のない1円玉療法を活用していただければと思います。
ひざ痛に効く1円玉のはり方
ひざの周囲を押してみて、一番強く痛みを感じるところに1円玉をはり、その周囲にも1円玉が互いにくっつかないようにはりましょう。
片ひざだけが痛む場合は、痛む側のひざにはればOKです。陽陵泉や太衝、足の三里のツボにもはっておくと、ひざのむくみや腫れが引きやすくなります。
高い効果を引き出すコツ
①枚数▶︎1円玉は1ヵ所につき15枚以上はらないこと。多過ぎるとかえって体が冷える。複数枚はる場合は、1円玉同士がくっつかないように隙間を空ける。
②ツボ▶︎ツボの正確な位置にはこだわらなくてもよい。1円玉は直径が2cmと広いので、およその位置でも十分、ツボを刺激できる。
③はり替え▶︎1円玉は基本的に1日中はりっぱなしでOK。入浴時に一度外して、1円玉も洗ってからはり替えるのがお勧め。何日もはり続けると、肌が弱い人はかぶれることもあるので注意。

❶1円玉を縦に持ち、痛みがあるところや左ページのツボを1円玉の縁で10秒ほどやや強めに押す。

❷痛みがあるところや左ページのツボを1円玉の縁で、ほんのり皮膚が赤くなる程度までこする(10回くらい)。
※こすってできる擦過傷からも体内にたまった電子が抜け、1円玉療法の効果が上がる。

❸痛みがあるところやツボの上に1円玉を置き、サージカルテープではる。
1円玉をはる場所

●痛みが強い部分にはる
ひざの痛みの一番強いところに1円玉を1枚はり、さらにその周囲を囲むように6枚はる。1円玉同士がくっつかないように隙間を空けてはるのがポイント。

●陽陵泉(ようりょうせん)
外くるぶしからひざに向かって真上になで上げると、ひざの下に突出した骨(腓骨頭)がある。陽陵泉は、その骨のすぐ下にあるくぼみ。両足にはる。
●足の三里(あしのさんり)
ひざのお皿の下にある、むこうずねの骨の出っ張りの頂点から真下へ指幅3本分下がり、そこから足の小指側へ人さし指の幅だけ寄ったところ。両足にはる。

●太衝(たいしょう)
足の甲側で第1指と第2指の骨(中足骨)が合わさる手前で、少しくぼんだ感じがするところ。両足にはる。

この記事は『安心』2020年5月号に掲載されています。
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