解説者のプロフィール

小田真規子(おだ・まきこ)
料理研究家・栄養士・フードディレクター。有限会社スタジオナッツ代表。「作りやすく、健康に配慮したおいしい家庭料理」をテーマに、料理・生活雑誌へのオリジナルレシピの提案や、レシピ本の出版などに携わる。『The基本200』(オレンジページ)、『とにかく盛り上がる夜ごはん』(文響社)など、著書多数。
50歳過ぎからひざが痛くなった
料理研究家という仕事は、体が資本です。私は若いころからウエイトトレーニングなどをしていたため、体力には自信がありました。しかし、50歳を過ぎた頃から「体力の貯金」が減ったと感じてきたのです。
特に気になったのが、ひざの具合。趣味の茶道で、3~4時間ほど正座をするのがつらくなったのが始まりでした。
また、3年前の秋には、右ひざが強く痛むように。私のスタジオは地下1階・地上3階立てで、一日に何度も階段を上り下りしなければなりません。この階段を下りるときに、痛みを感じるようになりました。
それまではどうにかできていた正座もできなくなり、当時は毎朝「昨日よりも痛みが増していたらどうしよう」と、不安に駆られていました。
市販の湿布や薬でも、痛みは消えません。そこで私は「体の中から変えよう」と決心しました。関節のケアに役立つといわれる、コラーゲン(皮膚や軟骨などに存在するコラーゲンの一種)豊富な食材を食べることにしたのです。
そうして作り始めたのが、下でご紹介している、鶏手羽先の黒酢煮込みでした。
食べ続ける秘訣はおいしい・簡単・長持ち
ひざのケアのために何を食べるかを考えたとき、私はまず「おいしいもの」という条件を挙げました。
どんなに体によい食材でも、おいしくなければ食べ続けることができません。できれば、夕食時に楽しめる、お酒のお供になるものを、と考えました。
他にも、調理が簡単、作り置きができる、食べ飽きないように味のアレンジがしやすいなども挙げました。そんな条件を全て満たしたのが、鶏手羽先の黒酢煮込みだったのです。
このレシピは、調理に包丁を使わないので、手間をかけずに作れます。その上、制菌作用のある酢やスパイスを使っているため、冷蔵庫で2~3週間も保存できるのです。
もちろん、味もおいしい。コクとうま味は十分なのに、酢を使っているため、味のくどさはありません。黒酢を普通の穀物酢やレモン、バルサミコ酢にしたり、マスタードやシナモン、サンショウなどのスパイスを加えたりと、アレンジも豊富にできます。
私はこの鶏手羽先の黒酢煮込みを週末にまとめて作り、毎日2~3本ずつ食べていました。
すると、3ヵ月ほどでひざの痛みが和らぎました。当初は毎朝、軽く屈伸をして調子を確認していましたが、いつの間にかその習慣を忘れていたのです。
常に右ひざに巻いていたサポーターを外し、正座もできるようになりました。一歩一歩確かめるように下りていた階段も、不安なく下りられるように。
鶏手羽先の黒酢煮込みは、今も月に1~2度は作るようにしています。ひざは、寒くなるとまだ多少痛みが出てきますが、そんなときは鶏手羽先の料理を多めに食べると、またいつの間にからくになっています。
トマトやパプリカと一緒に食べるのがお勧め
コラーゲンは、たんぱく質の一種ですが、3本の鎖がコイル状に巻いている「3重らせん構造」をしています。そのため、本来は消化吸収がよくないのだとか。そこに、熱や酢を加えると、これがほどけて消化吸収がよくなるそうです。
鶏手羽先は本来、肉のうま味を味わえるよう、20分程度で調理するのが理想です。しかし、コラーゲンを吸収しやすくするために、あえて20分以上煮込むようにしています。
私は、鶏手羽先の他に、鶏砂肝やアユなどもよく食べました。コラーゲンは、肉や魚の皮・骨・すじに多く含まれているためです。
コラーゲンを多く含む食材
(100g当たりのコラーゲン含有量)
・うなぎの蒲焼き(5.53g)
・皮付きサケ(2.41g)
・鶏砂肝(2.32g)
・鶏手羽元(1.99g)
・しらす干し(1.92g)
・皮付きブリ(1.62g)
・鶏手羽先(1.55g)
・皮付きの鶏骨付きぶつ切り肉(1.53g)
・豚スペアリブ(1.46g)
・皮付きサバ(1.25g)
・皮付きイワシ(1.06g)
・シシャモ(0.98g)
など
*コラーゲン豊富な粉ゼラチンを温かい飲み物に溶かして飲むのもお勧め!
コラーゲンが多い食材は、上の表をご覧ください。鶏手羽先が苦手な人は、これらを意識して食べるとよいでしょう。
また、コラーゲンは、ビタミンやミネラルの豊富な食材とともに摂取すると、体内で合成されやすくなります。
私の場合は、鶏手羽先にブロッコリーやトマト、パプリカ、菜の花などの野菜を添えました。これらは生のままや、サッと湯がくだけで食べられます。
コラーゲンを意識してとるようになってから、私は以前より体力がついた気がします。疲れにくくなりましたし、切り傷やすり傷などの治りが早くなりました。私と一緒にコラーゲン料理を試作し、試食していた若いスタッフも、髪の毛や爪の伸びが早くなったそうです。
鶏手羽先は脂の量やカロリーがやや多めですが、私の場合、1週間に10本程度を食べ続けても、コレステロール値などに変化はありませんでした。それでも気になる方は、鶏手羽先を軽く湯がいたり、手羽元などに替えたりするのをお勧めします。
超簡単!コラーゲン美味レシピ
鶏手羽先と調味料を煮込むだけ!小田先生がくり返し作った
鶏手羽先の黒酢煮込み

保存期間:2週間
【材料】(2人分)
鶏手羽先……8~10本
Ⓐ黒酢……200ml
砂糖……大さじ5
しょうゆ……大さじ3
ニンニク……2片
赤トウガラシ(種抜き)……1~2本
粒黒コショウ……小さじ1
【作り方】
❶鶏手羽先はキッチンバサミで関節から先を切り落とす。
❷鍋に鶏手羽先とⒶを入れてよく混ぜ、強火にかける。煮立ったら中火にし、何度か鶏手羽先の上下を返しながら、照りが出るまで12~15分煮る。
❸とろみがつき始めたら、絶えず鶏手羽先の上下を返す。
❹皿に盛り付けて出来上がり。

よりコク深く仕上がる!
小田先生お勧めの黒酢
左:真黒酢500ml ・1,600円(税抜)横井醸造工業株式会社
右:臨醐山黒酢360ml ・500円(税抜)内堀醸造株式会社
安心編集部イチオシ!レンチンなのに柔らかくジューシー!
豚スペアリブのハーブ焼き

保存期間:当日中
【材料】(2人分)
豚スペアリブ……400g
Ⓐすりおろしニンニク……小さじ1
パセリ(みじん切り)……大さじ2
ハチミツ……大さじ1
塩……小さじ1
コショウ……小さじ1/4
ミニトマト……4個
【作り方】
❶豚スペアリブはフォークで1切れを10回程度刺し、骨の裏にキッチンバサミで縦に1本切り込みを入れる。Ⓐを絡めて10分置く。
❷耐熱皿の周りに①を並べて中央を空け、ラップをせずに600Wの電子レンジで9~10分加熱する。
❸②を取り出し、はしで肉の上下を返し、味を絡める。
❹器に盛り、半分に切ったミニトマトを添えて出来上がり。
晩酌にも最適!さっぱりしていて食べやすい
サバ缶のおかずポテサラ

保存期間:5日間
【材料】(2〜3人分)
サバ水煮缶(190g)……1缶
ジャガイモ……4~5個(皮をむいて400g)
酢……大さじ2
砂糖……大さじ1
塩……小さじ1/2
タマネギ……1/2個
マヨネーズ……大さじ4
練りがらし……小さじ1/2~1
ベビーリーフ……適量
【作り方】
❶ジャガイモは2~3cm角に切る。鍋に入れてかぶるくらいの水(分量外)を加えて中火にかけ、軟らかくなるまで8~10分ゆでる。お湯を捨てて再び中火にかけ、粉ふきにしたら、火を止める。
❷酢、砂糖、塩を合わせ、ジャガイモに加える。混ぜ合わせたらボウルに移し、粗熱を取る。
❸タマネギは薄切りにして、塩(分量外)を振り混ぜる。10分おいたら水気を軽く絞る。サバは缶汁を切ってほぐす。
❹②に③とマヨネーズ、練りがらしを加えてざっくり混ぜる。器に盛り、ベビーリーフを添えて出来上がり。
カリジュワ食感ではしが止まらない!お好みの調味料で食べても◎
簡単焼き鳥

保存期間:1週間
※③、④の状態で保存すること
【材料】(2人分)
鶏手羽先……8本
酒……大さじ5
塩……小さじ1/2
サラダ油……少々
大葉……2枚
梅干し(種抜き)……1個
練りワサビ……適量
Ⓐ長ネギの青い部分……1本分
ショウガスライス……2~3枚
水……1000ml
【作り方】
❶鶏手羽先はキッチンバサミで関節から先を切り落とし、手羽中と手羽先に分ける。
❷切り分けた手羽中と手羽先を鍋に入れ、酒、塩を絡める。Ⓐを加えて強火にかけ、煮立ったらアクを除いて弱火で10分煮る。
❸手羽中のみを取り出し、さらに20分煮る。
❹手羽中は粗熱を取って保存容器に入れる。
❺フライパンにサラダ油を薄くぬって中火で熱し、④を並べる。表裏を3~4分ずつ熱し、返せるようになるまでカリッと焼き上げる。
❻大葉を敷いた器に手羽中を盛り、梅干しと練りワサビをのせて出来上がり。

ズボラさん注目!
続けやすくするための
ワンポイントアドバイス
③の手羽中だけでなく、③のゆで汁も保存容器でストックしておけば、スープなどに活用できる。どちらも冷蔵で1週間日持ちし、冷凍もできるので、作り置きしておくのもお勧め。
缶汁ごと使うのでコラーゲンたっぷり!老若男女が好む優しい味わい
サケ缶ピラフ

保存期間:3週間
※冷凍の場合
【材料】(2〜3人分)
サケ水煮缶(190g)……1缶
米……2合
塩……小さじ1
しょうゆ……小さじ1
ニンジン……1/3本
タマネギ……1/4個
サラダ油……小さじ2
粗びき黒コショウ……適量
バター……10g
万能ネギ……適量
【作り方】
❶米は炊く30分前に洗い、ザルに上げる。サケは缶汁を切ってほぐす。缶汁は取っておく。
❷炊飯器の内釜に米を入れ、①の缶汁に水(分量外)を加えて350mlにし、塩、しょうゆと混ぜて加えて炊く。
❸ニンジン、タマネギは粗みじん切りにする。
❹フライパンにサラダ油を敷き、中火で熱する。③を入れて3分炒め、しんなりしたら①のサケを加える。強めの中火で2分ほど炒めたら、粗びき黒コショウで味付ける。
❺②が炊き上がったら④とバターを加え、全体をさっくりと混ぜる。器に盛り、小口切りにした万能ネギを散らして出来上がり。
市販のルーを使わずヘルシー!さらりとしていて食べやすい
スープカレー

保存期間:1週間
【材料】(2〜3人分)
鶏手羽先……8本
タマネギ……1個
サラダ油……大さじ3
カレー粉……大さじ1
小麦粉……大さじ1
塩……適量
コショウ……適量
ご飯……適量
ミックスナッツ……適量
Ⓐすりおろしニンニク……小さじ1
すりおろしショウガ……大さじ1
プレーンヨーグルト(無糖)……大さじ3
カレー粉……小さじ2
塩……小さじ1/2
コショウ……少々
Ⓑ水……400ml
トマトジュース……200ml
塩……小さじ1
【作り方】
❶手羽先はⒶを絡めて10分おく。タマネギの半分は繊維を断つように薄切り、残りは4等分のくし形に切る。
❷鍋にサラダ油を敷き、中火で熱する。薄切りにしたタマネギを2~3分炒め、しんなりしたらカレー粉、小麦粉を加えて1分ほど炒める。
❸火を止めてⒷを少しずつ加え、木ベラで混ぜながらなじませる。再び中火にかけ、煮立ったら手羽先とタマネギのくし形切りを入れる。再び煮立ったら弱めの中火で20~25分ほど煮て、塩、コショウで味を調える。
❹器にご飯を盛り、ミックスナッツを散らす。③をかけて食べる。
■レシピ考案/小田真規子 ■料理・スタイリング/古澤靖子

この記事は『安心』2020年5月号に掲載されています。
www.makino-g.jp