解説者のプロフィール

篠浦伸禎(しのうら・のぶさだ)
1958年生まれ。東京大学医学部卒業後、富士脳障害研究所、東京大学医学部附属病院、茨城県立中央病院、荏原病院、国立国際医療センターにて脳神経外科医師として勤務。1992年、東京大学医学部の医学博士を取得。同年、米国シンシナティ大学分子生物学部に留学。2000年より東京都立駒込病院脳神経外科医長、2009年より部長。脳の覚醒下手術ではトップクラスの実績を誇る。著書多数。「ニンニク油」については、『ニンニク油で脳がぐんぐん若返る!』(マキノ出版ムック)などがある。
患者さんに勧められたニンニク油で気力を回復
私は脳神経外科医として、脳腫瘍など脳の病気の治療を専門にしています。
職業柄、食事や生活習慣などで、脳の機能を活性化させるものを積極的に自分で試し、さらに患者さんにも勧めてきました。
なかでも、どなたでも簡単に作れる「脳の特効薬」が、すりおろしたニンニクをオリーブ油に浸して作る「ニンニク油」です。
私がニンニク油と出合ったのは、今から10年以上前に患者さんからいただいたのがきっかけでした。
その患者さんは、物忘れがひどくなったので、雑誌に載っていたニンニク油を作って試してみたところ、記憶力がよくなったというのです。
ちょうどその頃、私は50歳を超えて、かつてない疲労感を感じるようになっていました。体力も気力も衰え、長時間の手術がしんどくなり、「引退したほうがいいのではないか」と悩むほどだったのです。
ところが、ニンニク油を試してみると、最初の1杯だけで胃の中に熱いものが広がり、やる気が出てきたのです。驚いた私は、毎朝、ニンニク油を飲むようになりました。
すると、これまでのような疲労を感じたり、集中力が途切れたりすることがなくなり、長時間の手術も平気になりました。
ニンニク油の効果を身をもって実感した私は、患者さんにもニンニク油を勧めています。
脳の手術を行った後に、患者さんに飲んでもらい、術後の感染症防止や体力の回復、放射線療法や化学療法の軽減に役立てています。
一般のかたは、認知症の改善、物忘れの防止、集中力の向上、高血圧予防、血糖値の改善などへの効果が期待できます。脳が10歳若返ると言っても過言ではないでしょう。
ニンニク油を1日にティースプーン3〜4杯飲むだけで、患者さんが元気になり、生活の質が向上するのを目の当たりにし、その薬効のすごさを実感しています。
アホエンという成分が脳を健康にしてくれる
このようにニンニク油が脳や体にいい理由は、「アホエン」という有効成分にあります。
アホエンは、ニンニクを破砕して空気に触れさせることで生成される物質です。つまり、すりおろす前のニンニクには含まれていません。
アホエンは、油によく溶けるため、すりおろしたニンニクを油に浸けると、効率よくアホエンが抽出されます。これが〝魔法の油〟と言われるニンニク油なのです。
《ニンニク油ができるしくみ》

アホエンは、脳の神経伝達物質の一つで記憶や学習をつかさどる「アセチルコリン」の減少を防ぐことがわかっています。そのため、記憶力の改善や、認知症の予防に役立つのです。
また、毛細血管の血流や微小な血液循環をよくする作用もあります。それが、脳の神経活動を活発化させ、記憶力アップにつながっていると考えられます。
抗酸化作用もあるため、動脈硬化や脳卒中の予防も期待できます。
血小板の凝集を抑制してくれるため、血液がサラサラになり、高血圧の予防にもなるでしょう。
善玉コレステロールが増え、血中コレステロール値が改善したという結果も報告されています。
アホエンは、血中の尿酸濃度を低下させる効果も認められ、尿酸値の改善や通風予防にお勧めです。
強力な殺菌作用とウイルスを抑制する作用もあるため、免疫力がアップし、カゼやインフルエンザの予防にもいいでしょう。
アホエンは、発ガンの原因となる細胞の突然変異を抑える効果も明らかになっており、抗ガン作用があることもわかっています。
このように、アホエンには多くの驚くべき健康作用があるのです。
アホエンを摂取するには、ニンニクとオリーブ油を買って、ニンニク油を作るだけです。月に1000〜2000円くらいで済み、高価なサプリメントや、保険対象外の月に数十万円もする免疫療法などは必要なくなります。
コストパフォーマンスが抜群のスーパーフード、ニンニク油をぜひ皆さんも作ってみてください。
アホエンの薬効
❶抗酸化作用…動脈硬化や脳卒中を予防する
❷血小板の凝集抑制作用…高血圧を抑制する
❸血中コレステロール値の改善作用…高すぎる血中のコレステロール値を下げる
❹尿酸値の改善…通風を予防する
❺殺菌・抗ウイルス作用…感染症を予防する
❻抗ガン作用
「ニンニク油」の作り方
すったあとに2時間置きオリーブ油に5日間浸ける
ニンニク油を作る際は、ニンニクをすりおろした後、2時間以上、時間を置くことがたいせつです。
その後、オリーブ油に浸け、5日程度放置するのが、最も「アホエン」の生成量が多くなることがわかっています(※)。
※青森県産業技術センター農産物加工研究所の『農産加工だより』(平成26年3月14日)「にんにくの機能性成分(アホエン)を増やす加工法の開発」より
ニンニクは、すりおろすのもポイントです。ニンニクの組織をできるだけ傷つけたほうが、アホエンのもととなる「アリシン」が増えるからです。
できるだけ細かいみじん切りにしてもいいのですが、より多く傷つけるためにも、すりおろしたほうがアリシンは増えます。
また、アホエンは80℃以上の熱で分解するため、加熱せずに使用することが望ましいでしょう。
ニンニクを浸けるオリーブ油は、酸化しにくく、動脈硬化を防ぐオレイン酸やビタミンEが豊富です。なかでもエクストラバージンオイルを選びましょう。

【材料】(1人1週間分)
ニンニク…3片
オリーブ油…150ml

【作り方】
❶ニンニクは皮をむいてすりおろす。組織を破砕することで薬効豊かなにおい成分アリシンができる

❷ふたのついた保存容器に移す。保存容器は、ガラス製などにすると、洗う際ににおいを落としやすい

❸ふたをせず常温で2時間置く。料理を作る前にここまで仕込んでおくと、食事と後かたづけが終わった頃には2時間たっている
【ここがポイント!】
におい成分のアリシンは、不安定な物質で、時間の経過とともに、安定性の高いアホエンなどに変化する。アホエンの量がじゅうぶん増えるまで、ここはじっくり2時間待とう

❹2時間以上経過したら、オリーブ油を注いで、軽くかき混ぜる

❺ふたをして、常温で直射日光が当たらない場所で5日間置く。途中、特にかき混ぜる必要はない
【ここがポイント!】
アホエンは油に溶ける。その性質を生かして、オリーブ油にじっくり溶かすのだが、「常温で5日間」が最も量が多く溶け出し安定することがわかっているので、とにかく5日間寝かせよう

❻金網で濾してオリーブ油だけにしたらできあがり
【保存方法】
オリーブ油は酸化しにくくアホエンも安定しているので保存は常温でもいいが、1ヵ月をめどに使い切ろう
【仕込みのコツ】
できあがったタイミングで翌週の分も仕込むと、作り忘れがない

加熱するのはNG、1ヵ月以内に使い切る
私は10年以上、毎朝、ニンニク油をティースプーン4〜5杯飲んでおり、手術の前は8杯飲んでいます。
一般のかたは、1日にティースプーン3〜4杯が目安ですが、効果があまり感じられないときは、取る量を増やしても大丈夫です。
1日に摂取する目安の分量は20ml

ティースプーン4杯をそのまま飲む
パンやご飯、おかずにふりかけたり、サラダのドレッシングとして使ってもいいでしょう。冷奴にかけたり、納豆といっしょに混ぜたりする患者さんもいらっしゃいます。
マヨネーズやケチャップなどの調味料に、ニンニク油を混ぜるのも使いやすいでしょう。玄米にニンニク油を少し混ぜておにぎりにするのも、おいしくて、腐りにくくなりお勧めです。
ただし、高温になるとアホエンが壊れるので、炒めものや揚げ油として使うのは避けてください。
保存は、密閉容器に入れて冷暗所で保存し、1カ月以内に使い切りましょう。

サラダのドレッシングの材料に使う

パンやご飯、おかずにふりかける
においの対策は? 胃が痛まない?いつとればいい?
ニンニク油Q&A
ニンニク油は副作用なし胃にやさしいニンニクもある
最後に、ニンニク油についてよく聞かれる質問について回答します。
●濃さは変えられる?
体の調子に合わせて、ニンニクの量を増やし、濃度を変えても大丈夫です。私は150㎖のオリーブ油に対して9片のニンニクを使ってかなり高濃度に作っています。ニンニク油は、とり過ぎて副作用が起こることはありません。
●胃が痛くなる人は?
食前ではなく、食後に飲むと胃痛を起こしにくくなります。
●ニンニク臭は?
「アホエン」になると、においは軽くなりますが、まったくなくなるわけではありません。アホエンに変化する「アリシン」という物質は、ニンニクのにおいのもとなので、無臭ニンニクだとアリシンが少なく、アホエンが抽出できなくなります。無臭ニンニクは使わないでください。
ニンニクの発酵食品「黒ニンニク」は、食べた直後から胃の臭気が少ないという研究結果があります。取り寄せてみるのもいいでしょう。

ニンニクの発酵食品である黒ニンニクは、アホエンが豊富で、においも気にならない
●ニンニクが緑色になっても大丈夫?
化学反応なので問題ありません。

浸けている間に、ニンニクが緑色に変色することがあるが、化学反応なので問題はない
●いつ飲むのが効果的?
私は元気を出すために朝に飲んでいますが、体が温まるので夜に飲むという人もいます。いつ飲んでもかまいません。
●オリーブ油以外の油を使ってもいい?
オリーブ油と同様にオレイン酸やビタミンEが豊富な米ぬか油やえごま油を使ってもいいでしょう。えごま油は体内に入ると、脳にいい脂質のDHAやEPAに変わります。
●ガーリックパウダーやガーリックオイルにもアホエンは入っている?
専門家の研究結果を見ると、アホエンは含まれていません。
●アホエンのオイルやサプリメントを利用するのも効果がある?
市販のものを活用してもいいですが、ニンニク油を作る過程も脳を活性化させるので、私は手作りのニンニク油を推奨しています。
脳の病気や体の不調の治療、さらには美容効果と、ニンニク油は私たちの健康や若さの維持に大きな力を発揮してくれます。
さらには自律神経(体温調整や血行、代謝など、体のさまざまな働きをコントロールする神経)がバランスよく働き、不安感の軽減にも役立つと考えられます。
多くの人にニンニク油を病気の改善に役立てていただくと、日本全体の医療費の削減にも貢献できるのではないでしょうか。
ご自身はもちろん、周囲のかたにも食べていただき、元気な人がどんどん増えることを願っています。

この記事は『ゆほびか』2020年5月号に掲載されています。
www.makino-g.jp