私がよくショウガ油を勧めるのは、肩こり、腰痛、ひざ痛などの痛みに対してです。特に冷えによる慢性的な痛みに悩んでおられるかたにはショウガ油がよく効きます。作り方もごく簡単です。いくつかの注意点だけ守れば安全に使っていただけます。【解説】三浦直樹(みうらクリニック院長)

解説者のプロフィール

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三浦直樹(みうら・なおき)

みうらクリニック院長。兵庫医科大学卒業。「難病といわれてもあきらめない」をモットーに、鍼灸や整体などの手技療法、マクロビオティックや薬膳、漢方などの食事療法などを、必要に応じて組み合わせ、自然治癒力を引き出す治療(統合治療)を行っている。近著に『薬だけに頼らず病気を治す 家庭療法の教科書』(マキノ出版)がある。
▼みうらクリニック(公式サイト)

痛みや皮膚疾患など幅広い症状に使える

私のクリニックでは、薬だけに頼らない、食事療法やストレスケア、各種自然療法を取り入れた診療を行っています。

なかでも、日本に昔から伝わる、身近な植物や食材を使った「手当て法」は、安全性が高く、計り知れない自然のパワーが秘められています。それらは一般の人が各家庭で実践できるので、私は患者さんにセルフケア法として教えています。

今回はそのなかから、痛みや皮膚疾患など、幅広い症状に外用薬として使える「ショウガ油」をご紹介しましょう。

ショウガ油は、マクロビオティック(日本の伝統食を基本とする穀物と野菜が中心の食事法)で学ぶ、手当て法の一つです。ショウガのしぼり汁と、無色・無臭のゴマ油をしっかり混ぜた物を、患部にすり込んで使用します。

ショウガには、体を温め、血流を促進する優れた作用があります。

東洋医学では、漢方薬の8〜9割にショウガ(生姜や乾姜)が用いられていますが、これはショウガの血流促進作用を利用して、ほかの生薬(漢方薬の原材料)の各エキスを全身に巡らせるためです。

血流がよくなれば、体中に酸素も十分に行き渡り、免疫力の向上にもつながります。

また、ショウガには炎症を抑える消炎作用、細菌やウイルスを撃退する殺菌・抗菌作用もあります。さらに、ジンゲロール、ショウガオールといった抗酸化物質(万病の原因とされる活性酸素の除去能力を持つ成分)も含まれています。

一方のゴマ油にも、消炎作用があるほか、抗酸化物質も含まれています。また、ゴマ油には解毒作用があるともいわれています。油なので、皮膚の保湿効果にも優れています。

この二つを混ぜ合わせることで、さまざまな症状の改善に効果が期待できるのです。

冷えによる慢性的な痛みにおすすめ

私がよく勧めるのは、肩こり、腰痛、ひざ痛などの痛みに対してです。特に、女性や高齢者など、冷えによる慢性的な痛みに悩んでおられるかたには、ショウガ油がよく効きます。

私も肩がこったときには、ショウガ油をすり込んでいます。冷えがひどいときは、ショウガ油を塗ってから、肩に温熱パッドを当てて温めると、より効果が高まります。

関節リウマチによる関節の腫れや痛みにも、ショウガ油はお勧めです。実際に使っているリウマチの患者さんからは、「腫れが抑えられています」「痛みが軽くなりました」という声がよく聞かれます。

考えてみれば、リウマチの患者さんに漢方薬を処方する際にも、ショウガを主に使います。このことからも、ショウガ油が炎症を抑えることに役立つのは決して不思議ではありません。

抗酸化作用によって、肌荒れなどの皮膚疾患にも効果を発揮するので、ショウガ油はアトピー性皮膚炎のかたにも紹介しています。実際、かゆみが軽減したり、皮膚のかさつきが改善したりしたかたが、おおぜいおられます。

ただし、アトピー性皮膚炎でショウガ油の適応となるのは、皮膚がカサカサしたタイプですジュクジュクしたタイプのかたは、油をつけるとさらに症状が進行するので、ショウガ油は使わないでください

アトピー以外に、乾燥による肌荒れ、しもやけのような冷えからくる肌トラブルにも、ショウガ油はよいでしょう。

さらに、頭皮に使えば、ショウガの血流促進作用によって、白髪や薄毛対策にも役立ちます。首や肩にショウガ油を塗って、頭部への血流がよくなれば、めまいや頭痛も軽減します。胸にすり込むと、血管や気管が広がるので、ぜんそくの発作やセキを鎮める効果も期待できます。

そのほか、血行を促進して毒素を排出することで、ワキガを改善したり、消炎作用によって虫歯の痛みを軽減したりするなどの手当てとしても使えます。

このように、ショウガ油は万能薬といっていいほど、幅広い使い方ができるのです。

ショウガ油の作り方と使い方は、次の項で詳しく説明します。材料は、誰もが手に入る物で、作り方もごく簡単です。いくつかの注意点だけ守れば、安全に使っていただけます。ぜひお試しください。

■ショウガ油の主な効用
《血流促進作用、体を温める作用》腰痛、ひざ痛、股関節痛、関節リウマチ、肩こり、めまい、頭痛、ぜんそく、セキ、ワキガ、白髪、薄毛、しもやけ
《消炎作用》関節リウマチ、アトピー性皮膚炎(乾燥型)、虫歯の痛み、ヤケド、水虫
《殺菌・抗菌作用》ワキガ、水虫、薄毛
《抗酸化作用》肌荒れ、アトピー性皮膚炎(乾燥型)
《保湿作用》乾燥肌、ニキビ(乾燥型)
!注意:ジュクジュクタイプのアトピーやニキビには使わない。

ショウガとゴマ油をよく練って混ぜる!

痛みや皮膚疾患、白髪・抜け毛対策などに、幅広く使える「ショウガ油」は、家庭で簡単に手作りすることができます。

●用意する物

用意する物は、ショウガとゴマ油だけです。ショウガは皮ごとすりおろすので、可能なら無農薬か有機栽培の物を使うと安心です。

ゴマ油も伝統的な圧搾製法で作られた、良質の物がお勧めです。体に塗るので、ゴマを炒らずに作られた無色・無臭のゴマ油を選ぶとよいでしょう。

画像1: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

ショウガ(適量)
ゴマ油(無色・無臭)
※ショウガは、可能なら無農薬か有機栽培の物を使う。
保存容器
口の小さな容器。100円ショップで購入できる、お弁当用のたれ瓶など。

画像2: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

●作り方

まず、ショウガをすりおろし、ガーゼに包んでしぼります。次に、ショウガのしぼり汁と同量のゴマ油を用意し、そこへしぼり汁を1滴落として、指で完全に混ざるまで混ぜます。

次は2〜3滴、その次は3〜4滴と徐々にショウガの量を増やし、油に加えては混ぜることをくり返します。ショウガと油が完全に混ざるまでよく練って乳化させ、全体がクリーム状になったら出来上がりです。

画像3: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

ショウガをきれいに洗い皮ごとすりおろす。

画像4: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

①をガーゼに包んでしぼる。

画像5: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

ショウガのしぼり汁と同量のゴマ油を用意し、そこへしぼり汁を1滴落とす。指で完全に混ざるまで混ぜたら、次は2~3滴、その次は3~4滴と徐々に増やし、混ぜることをくり返す。

画像6: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

ショウガと油が完全に混ざるまでよく練って乳化させ、全体がクリーム状になったら出来上がり。たれ瓶やスポイトなどで吸い取り、保存容器に移す。

●保存

ショウガ油は1ヵ月くらい日持ちしますが、酸化を防ぐため、なるべく空気に触れにくい、口の小さな容器に入れて保存するのが望ましいでしょう。

100円ショップで購入できる、お弁当用のたれ瓶などを利用するのもいいでしょう。冷暗所に置くか、夏は冷蔵庫に入れて保存してください。

皮膚疾患に使う場合、できればそのつど作って、新鮮な物を使用するのが理想です。ショウガだけ一度にしぼって、作りおきしておいてもかまいません。

画像7: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

冷暗所に置くか、夏は冷蔵庫に入れて保存。約1ヵ月日持ちするが、皮膚疾患に使う場合、そのつど作るほうがよい。

●パッチテスト

初めて使用する際は、あらかじめパッチテストを行ってください。夜寝る前に、腕の内側に少量のショウガ油を塗り、翌朝の皮膚の状態をチェックします。赤くなったり、かぶれたりしていなければ大丈夫です。

画像8: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

腕の内側に塗って使用可能かチェック

肩こり、水虫、ワキガ虫歯の痛みにも

●使い方

東洋医学では、漢方薬は食前に飲むのが基本です。それと同じで、ショウガ油のような外用薬も、食前に1日3回を目安に使用するとよいでしょう。ただし、痛みのあるときや、アトピー性皮膚炎などでかゆみがあるときは、直ちに塗っていただいてもかまいません。

●塗り方

《基本的な塗り方》
たっぷりのショウガ油を患部につけてよくすり込むのが基本的な塗り方です。5~10分くらいかけると効果的です。

肌に染みる場合は、使用量を減らすなど加減しましょう。皮膚疾患のある人、また敏感肌の人などは、もっと短時間でもよいので、様子を見ながら行いましょう。

画像9: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

たっぷりのショウガ油を患部につけてよくすり込む。5~10分くらいかけると効果的。
※肌に染みる場合は、使用量を減らす。皮膚疾患のある人や敏感肌の人は、もっと短時間で様子を見ながら行う。

《ひざや腰などに使う場合》

服や下着で覆うひざや腰などに使う場合は、衣類に油がつかないようにする必要があります。その場合は、ショウガ油に浸したガーゼを患部に当て、ラップを巻きます。

ネット包帯や医療用テープ(サージカルテープなど)を使い、固定するとよりいいでしょう。1時間経ったら外して、ぬれタオルなどでふき取ってください。

画像10: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

服や下着に油がつかないように、ショウガ油に浸したガーゼを患部に当て、ラップを巻く。ネット包帯や医療用テープで固定してもよい。
1時間経ったら外して、ぬれタオルなどでふき取る。

《ひざ痛、腰痛、股関節痛、リウマチ痛、肩こり、アトピー(カサカサタイプ)、乾燥肌、水虫など》

ひざ痛や腰痛、股関節痛、ひじ痛、リウマチ痛、肩こりや、アトピー(カサカサタイプ)、乾燥肌、水虫などには、症状のある患部に、直接塗ってください。

画像11: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

患部に直接塗る。

《ぜんそく、セキ》

ぜんそくやセキの場合は、胸にすり込みます。

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胸にすり込む。

《めまい、頭痛》

めまいや頭痛は、首や肩に塗って頭部の血流を促しましょう。

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首や肩に塗る。

《ワキガ》

ワキガが気になる人は、ショウガ油でわきの下に塗ってもみます。

画像14: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

わきの下に塗ってもむ。

《虫歯の痛み》

虫歯の痛みには、痛む側のほおにすり込みましょう。

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痛む側のほおにすり込む。

《白髪、薄毛》

白髪や薄毛の対策には、入浴前、頭皮にショウガ油をすり込むようにマッサージし、少し時間をおいてから髪を洗ってください。

画像16: 【ショウガ油】ひざ痛や肩こり、腰痛、カサカサ肌に塗り込むだけ 温まって血流がよくなる手作り乳液

頭皮にすり込むようにマッサージし、少し時間をおいて洗髪する。

画像: この記事は『壮快』2020年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年5月号に掲載されています。

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