東洋医学では、気と血と水が充実し全身をスムーズに巡っていることが、心身ともに健康な状態といえます。ガスがたまる便秘は大きく二つに分けられます。一つは「気が詰まっている」タイプ、もう一つは「気が足りない」タイプです。【解説】山口りりこ(薬剤師・国際薬膳師・国際中医師)

解説者のプロフィール

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山口りりこ(やまぐち・りりこ)
薬剤師・国際薬膳師・国際中医師。星薬科大学卒業。薬剤師。漢方や薬膳に魅了され、黒龍江中医薬大学日本校・遼寧中医薬大学日本校で、国際薬膳師・国際中医師の資格を取得。漢方や薬膳を一般に広く伝えるべく、2015年に薬膳鍋kampo'sをプロデュース。そのほか、商品開発やエステのメニュー監修などにも携わる。

エネルギーの停滞・不足でガス腹になる

便秘に悩む人は少なくありません。最近よく聞くのは、「便秘に伴って、おなかにガスがたまる」というタイプです。

西洋医学では、「症状」に着目します。腸内の水分バランスを整えたり、腸管を刺激したりする薬で、「排便を促す」「ガスを出す」という対症療法を行います。

一方、東洋医学では、「人」にアプローチします。腸の状態だけでなく、どんな体調か、どんな生活をしているか、というように、全体を見るのです。

東洋医学で重視するのは、エネルギーを意味する「」の概念です。「元気のもと」と考えればいいでしょう。

気と血(血液)と水(体液)が充実し、全身をスムーズに巡っていることが、心身ともに健康な状態といえるのです。

ガスがたまる便秘は、大きく二つに分けられます。

一つは、「気が詰まっている」タイプです。不規則な生活や睡眠不足、精神的なストレスがあると、気は充実しているものの、滞ってしまい、詰まりやすくなります。

こうした状態を、東洋医学では「気滞」といいます。イライラしたり、憂うつな気分になったり、情緒が不安定になったりします。また、体のリズムが乱れ、生理不順や不眠などが起こりやすくなります。

忙しいかたや、ストレスを感じやすいかたに多く見られます。おなかを触ったり、なでたりすると、不快感を覚えるのが特徴です。

もう一つは、「気が足りない」タイプです。東洋医学では「気虚」といいます。気力がわかず、疲労感や倦怠感があり、抵抗力が落ちて、カゼをひきやすくなります。 

川の水が減って、チョロチョロと流れているところをイメージしてください。水量がないため、あちらこちらに流木やゴミがたまったり、水がよどんで濁ったりするでしょう。

同様に、気が足りないと、老廃物を流す力がないので、便やガスがたまるのです。高齢者や、体力不足のかたに多い印象です。おなかを触ったとき、心地よく感じる人は、こちらのタイプでしょう。

今回は、いずれのケースにも対処できる食養生を、ご紹介します。

ユズの皮やシソの葉を添えると効果アップ!

気の巡りをよくする食材として、最もお勧めしたいのが、大根です。

大根の種は、萊菔子という生薬(漢方薬の原料)で、消化不良で胃が動かないときや、おなかが張るときに用います。

ただ、生薬は手に入りにくく、種苗店で扱う種は食用ではありません。一般に用いるのは大根のほうが適当です。一年を通して入手しやすく、価格が安定しており、味のバリエーションもつけやすいので、利用しやすいでしょう。

食べ過ぎたときに大根おろしを食べるのは、日本でも昔からある養生法です。生の大根は、熱を取る作用がありますが、加熱することで、体を冷やす性質を弱めます。

肌寒い時期は、大根は熱を加えてとるのがお勧めです。とりわけ、腸に潤いをもたらす効果の高い豚肉を加えてスープにすると、腸への潤い効果がさらに期待できます。

便が作られる大腸は、水分を吸収する器官でもあります。腸の水分が不足すると便がかたくなり、ますます便秘を悪化させます。大根と豚肉のスープを食べると、腸が潤って、気の巡りもよくなるので、便秘やガス腹の改善につながります。

ここに、ユズやカボス、スダチなど、柑橘類の皮を薬味に添えると、さらに気の巡りがよくなります。柑橘類の少ない季節には、市販のフリーズドライのユズ皮を利用したり、シソの葉や穂などでも同様の効果が期待できます。

ほかにも、豚肉をだし汁で煮て、大根おろしをたっぷりのせた雪見鍋(みぞれ鍋)をポン酢で食べたり、肉みそをかけたふろふき大根にユズの皮をのせたりしてもいいですね。

画像: 豚肉との組み合わせがベスト!

豚肉との組み合わせがベスト!

「薬膳」というと難しく考えがちですが、このように、おいしく食べて健康になるのが基本です。

大根と豚肉を組み合わせ、薬味を添えるメニューは、ほかにもいろいろあります。ご自身に合ったお料理で、食卓に組み込んでみてください。

一般に、「便秘にはヨーグルトやバナナがいい」といわれることが多いようです。ただ、ガス腹のかたは、体が冷えているケースが少なくありません。

ヨーグルトやバナナは、不要な熱を取る食材なので、逆効果になる可能性もあります。あまり食べ過ぎないように気をつけましょう。

体の声に耳を傾け、病気になる前に養生する。そうした生活習慣が、「元気で長生き」につながるのです。

画像: この記事は『壮快』2020年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年5月号に掲載されています。

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