解説者のプロフィール

金谷康弘(かなや・やすひろ)
かなや整骨院院長。昭和36年生まれ。柔道整復師。学習塾講師、大学受験予備校講師を経て、関西医療学園専門学校卒業。平成2年大阪市に「かなや整骨院」を開設。自院での施術のほかに、広島市「ふじわら医院」でも定期的に施術を行う。一般社団法人「日本頭蓋仙骨療法協会」代表理事。
▼かなや整骨院(公式サイト)
鎖骨周りの緊張を緩めると多くの症状が改善
首や肩のコリ、めまい、頭痛、不安、イライラ、不眠などにお困りのかたへ、私が考案した「鎖骨ストレッチ」を紹介します。
鎖骨ストレッチが生まれたきっかけは、約2年前、広島で出会った、めまいやふらつきに悩む患者さんでした。
私はふだん、頭に触れて自律神経を整える「頭蓋仙骨療法」を中心に、これまでに学んださまざまな手法を交えながら施術を行っています。
ところが、そのかたの症状は頑固で、あれこれ試しても、なかなか改善が見られませんでした。そこで、私は鎖骨を調べてみることにしました。
なぜ鎖骨かというと、一つは、ひどい肩こりを訴えていたからです。肩こりに対して鎖骨周りの緊張を緩めることは、有効な場合が多くあります。
もう一つは、心理的要因です。そのかたは、広島で豪雨災害が起こったとき、その災害現場を目にしたあとから、めまいやふらつきを発症したとおっしゃっていました。私が知る手技のなかには、心理的要因に対して、鎖骨のポイントにアプローチする手法があります。
さて、鎖骨の下辺りに触れてみると、案の定、押すと痛いポイントが見つかりました。その圧痛を取り除いたところ、あれほど頑固だっためまいやふらつきがみごとになくなったのです。
「これはすごい!」と思った私は、それから多数の患者さんの鎖骨を確認するようになりました。
すると、心理的なストレスを抱えている人、「なんとなくしんどい」といった不定愁訴を抱えている人に、鎖骨下の圧痛が強く出ている傾向が見られました。そして、その圧痛を取ると、多くのかたの症状が改善したのです。
この鎖骨下の圧痛を取る方法を、患者さんが自分でできるよう考案したのが、鎖骨ストレッチです。
現在は、広島にあるふじわら医院の藤原英祐院長の協力で、実際に患者さんに試していただき、その効能を検証しています。
その結果、肩こり、頭痛、めまい、不眠、神経症、不定愁訴、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などが改善したという、驚きの効果が続々と報告されています。
副作用がなく安全に行えるセルフケア
鎖骨ストレッチがなぜ効くのかについて、藤原院長は、「脳の扁桃体の緊張が緩むのではないか」とおっしゃっています。
扁桃体は、人間の本能的な部分をつかさどる大脳辺縁系の一部です。その部分の緊張が緩むことで、睡眠の質や、心理的要因による不調、体の緊張からくる不定愁訴が改善すると考えられるのです。
鎖骨ストレッチの詳しいやり方は、下項を参照してください。基本は、鎖骨下の圧痛のある箇所を指で押しながら、押している側に顔を向けて、2分間キープするだけです。
強く押す必要はありません。圧痛を確認できる程度で大丈夫です。押している側に顔を向けて2分間じっとしていると、しだいにその圧痛が取れてくるはずです。
もし、それでも圧痛が取れなければ、顔を逆方向に向けてみてください。それで、たいていの人は鎖骨下の圧痛が取れ、抱えていた症状が和らぎます。
症状が体の片側だけの場合でも、鎖骨ストレッチは左右両方行いましょう。お好きなタイミングで、1日3回くらいを目安に行ってください。
2分が長いという人には、お手軽編もあります。目の動きを応用したもので、効果の出方が安定しないという面はあるものの、時間のないときや仕事中に便利です。
鎖骨ストレッチは副作用もなく、誰でも安全にできるセルフケアです。まずは気軽に、試してみてください。
鎖骨ストレッチのやり方
※左右1回ずつを1セットとし、1日2~3回程度行う。
※首を倒した際、楽に感じられる角度が見つからない場合は、逆側に倒してみてもよい。
【基本的なやり方】

❶右の鎖骨の下を3ヵ所押して、圧痛点(最も痛い場所)を探す。

❷①を押したまま、首を前に倒し、軽く右に傾けたまま、右側にひねって2分間キープ。このとき鎖骨の痛みが最も楽に感じられる角度を向くよう意識する。左側も同様に行う。
【お手軽編】

◎目線だけを逆側の上方向に移し、その状態で7秒キープする。

この記事は『壮快』2020年5月号に掲載されています。
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