コンニャクは食物繊維のグルコマンナンを豊富に含みます。グルコマンナンは水分を巻き込みつつ腸の中で膨張。同時に食べ物と腸の中で絡み合い栄養の吸収を遅らせ、血糖値の急上昇が抑制されるのです。【解説】寺内康夫(横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授/附属病院副院長)

解説者のプロフィール

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寺内康夫(てらうち・やすお)
横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授及び附属病院副院長・診療科部長。1988年、東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院、朝日生命丸の内病院勤務を経て、2005年より現職。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本糖尿病学会認定専門医・指導医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科(内科)専門医・指導医。日本病態栄養学会病態栄養専門医、日本肥満学会肥満症専門医・指導医。医学博士。

食事に加えるだけで血糖値の上昇が緩やかに

私が医学部を卒業した30年ほど前には、糖尿病は社会的に、今ほど認知されておらず、「一部の人がかかる特殊な病気」と見なされることもありました。

ところが、膵臓から出るインスリンというホルモンの分泌異常が原因となる1型糖尿病と異なり、生活習慣病の一つである2型糖尿病は、誰もが発症しうることがわかってきました。

糖尿病患者は年々増え続け、その数は「予備軍」も含めると2000万人と推計されています。いまや糖尿病は、国民病ともいわれるほど、一般的でありふれた病気となったのです。

2型糖尿病は、肥満と深い関係があります。肥満の状態が続くと、インスリンの効きが悪くなり、血糖値が上昇。高血糖の状態が慢性的に続くと、糖尿病性網膜症、腎症、神経障害などさまざまな合併症が引き起こされます。

そこで注目したいのが、日本古来の食材、コンニャクです。

数年前、テレビの情報番組でコンニャクの機能性について検証したことがあり、私も制作に協力しました。

このときは、女性の被験者に2日間にわたって協力してもらいました。いずれの日も、全く同じ内容の3食を、決められた時間にとってもらいます。

1日めは、普通に食事をし、2日めは、それにコンニャクを200g加えました。そのうえで、1日めと2日めの血糖値の変化を比較。すると、コンニャクを食べた2日めのほうが、血糖値の上昇が緩やかで、そのピークの値も1日めより低かったという結果が出ました。

超低カロリーなのに満腹感を得やすい!

なぜ、食事にコンニャクをプラスしただけで、このような効果が現れたのでしょうか。

コンニャクは、食物繊維のグルコマンナンを、豊富に含みます。このグルコマンナン、本来は水溶性ですが、加工の時点で不溶性に変化します。

グルコマンナンは保水性があるので、水分を巻き込みつつ、腸の中で膨張。同時に摂取した食べ物と腸の中で絡み合い、栄養の吸収を遅らせます。それゆえ、血糖値の急上昇が抑制されるのです。

血糖値の乱高下は、膵臓を疲弊させる要因となります。血糖値がゆっくり上昇することは、膵臓の機能低下を防ぐことにつながります。

コンニャクは、100g当たりのエネルギー量(カロリー)が5~7kcalと非常に低いため、肥満解消にも効果的です。

例えば、糸コンニャク(しらたき)を、同量のパスタや中華麺と置き換えて調理した場合、糖質をとらないぶん、摂取カロリーを、グッと低く抑えることができます。

かわりに、たっぷり摂取できるのが、前述した食物繊維。コンニャクの不溶性食物繊維は体内で消化されないため、胃腸の中でも、そのボリュームが維持されます。食前にとることで、食べ過ぎを予防できるでしょう。

かさがあり、満腹感を得やすいコンニャクは、優れた「やせ食材といえるのです。

肥満の解消は、多くの生活習慣病を改善に導きます。高血圧も、その一つ。コンニャクでダイエットに成功すれば、それだけで血圧は下がるでしょう。

とはいえ、コンニャクは、単なるダイエット食ではありません。脂質をほとんど含まないので、血中のコレステロールや中性脂肪を増やす心配は、いっさい無用。積極的に食事に取り入れることで、脂質異常症や動脈硬化も予防できます。

肥満の解消も手伝い、ドロドロの血液がサラサラになれば、高血圧が改善に向かうというわけです。

画像: 【コンニャクダイエット】血糖値の急上昇を抑制 しらたきをパスタや中華麺と置き換えるとカロリーダウン

《コンニャクで生活習慣病を撃退!》

◎糖尿病に!
豊富な食物繊維が栄養分の吸収を遅らせる
血糖値の急上昇を抑え、膵臓の機能低下を防ぐ!
◎肥満に!
超低カロリーで、かさがある「やせ食材」
満腹感が得られて、食べ過ぎを防げる!
◎高血圧に!
脂質がほぼゼロで、脂質異常症や血液ドロドロを防ぐ
血液サラサラになり 血圧が下がる!

コンニャクは、このように優れた食材です。ただし、食べ過ぎには要注意。というのも、不溶性食物繊維をとり過ぎると、便が詰まり、腸閉塞を起こすおそれがあるからです。

また、コンニャクは超低カロリーなのが長所ですが、それはつまり、たんぱく質・脂質・炭水化物という三大栄養素をほぼ含まないということ。コンニャクばかり食べていると、栄養失調に陥る可能性があります。

高齢の人は特に、たんぱく質をしっかりとることが重要なので、コンニャクを食べることでたんぱく質の摂取量を減らさないよう、注意が必要です。

1日にとるコンニャクの量は多くても200g程度にとどめましょう。食事にうまく取り入れて、健康の維持・向上に活用してください。

画像: この記事は『壮快』2020年5月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年5月号に掲載されています。

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