これまで外反母趾は、手術でしか治せないと思われていました。ところが、就寝時に足の甲に包帯を巻くだけで、外反母趾がよくなるという治療法があるとのこと。家にいる時間の多い今なら、日中も巻き続けることができ、早く効果を実感できそうです。これまで多くの患者さんに包帯療法を指導し、約85%もの改善率を確認している整形外科医の青木孝文先生に、詳しいやり方を教えていただきました。【解説】青木孝文(山王病院整形外科部長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

青木孝文(あおき・たかふみ)

1957年、東京都生まれ。日本医科大学卒業。91年、日本医科大学大学院修了、医学博士修得。同年、日本医科大学整形外科医員助手。92年、ボストン大学神経筋研究センター留学。94年、帰国。97年、日本医科大学整形外科講師に昇任。99年、日本整形外科学会会長賞受賞。2008年、日本医科大学武蔵小杉病院整形外科部長。現在、山王病院整形外科部長。足の外科を中心に手足の神経、筋肉の活動の動態についての研究などを行う。著書に『外反母趾は包帯1本で治せる』(マキノ出版)などがある。日本整形外科学会認定整形外科専門医)
・日本手外科学会認定手外科専門医)
山王病院(公式サイト)
専門分野と研究論文(CiNii)

なぜ足の甲に包帯を巻くのか

足の甲を締めると指の変形が改善

これまで外反母趾は、手術でしか治せないと思われていました。しかし、私が勧める「包帯療法」は、手術をせずに確実に効果を上げています。

包帯療法とは、足の甲に弾性包帯(伸び縮みする包帯)を巻く治療法です。まずは、下の写真をご覧ください。

写真❶は右足の第一指(親指)が40度も曲がっている重症の外反母趾の患者さんです。その患者さんの足の甲をギュッと握ったのが、写真❷です。
❶と❷を見比べてください。足の甲を握るだけで、足の第一指の変形が改善しているのがわかるでしょう。
下のX線写真を見ても、足の甲を握る前の❸と握ったときの❹を見ると一目瞭然。足の甲を握ると、第一指の変形が改善しています。

画像: 足の甲を締めると指の変形が改善

このように、足の甲を握っている状態を維持するのが、包帯療法です。毎晩、就寝時に包帯を巻くだけで、外反母趾はよくなっていきます。これまで多くの患者さんに包帯療法を指導してきた結果、約85%の人の痛みが取れたり、軽くなったりしています。早い人は、2週間ほどで症状の変化が見られます。

筋肉や靭帯の働きを包帯で調整する

私が包帯療法を思いついたのは、患者さんとのやりとりがきっかけでした。当時の私は、外反母趾の手術を積極的に行っていました。しかし一方で、再発する患者さんが多いことに頭を悩ませていました。

そんなとき、ある患者さんからこんな話を聞きました。「親戚の人が、足の第一指のつけ根が腫れて痛くなったとき、足に包帯をグルグル巻いて引き締めていたら、症状がよくなった」というのです。私はこの話を聞いて、ピンとくるものがありました。アメリカの専門書にも、足の甲に包帯を巻いた図が出てくるからです。その本には、「外反母趾の手術をしたあとは、包帯で足をグルグルと巻く」と記されていました。そのとき、突然、アイデアがひらめいたのです。

そのころ私は、外反母趾の原因を追究していました。そして、X線(レントゲン)やCTスキャン(コンピュータ断層映像)、MRI(磁気共鳴画像診断)などでは判断できない、足の筋肉や靭帯などの衰弱や硬さに問題があるのではないか、と思うようになっていました。そこで、患部に包帯を適度な強さで巻き、筋肉や靭帯の働きを調整し続ければ、問題が解決するのではないかと考えたのです。

治療法を「手術」から「包帯」へ

安い・簡単・効果あり

私はさっそく、ある患者さんに、夜寝ているときだけ足の甲に弾性包帯を巻いてもらいました。すると2週間後、「いつの間にか足の痛みがなくなりました」と、報告を受けたのです。

私はほかの何人かの患者さんにも包帯療法を試してもらいました。すると皆さん、2週間から2ヵ月で足の痛みが軽くなったのです。これを機に私は、「手術から包帯」へ治療法を変えることにしました。

包帯療法の主なメリットは三つあります。

①費用が安くすむ
包帯療法で必要なのは、医療用に使われている弾性包帯だけ。これは一つ250円程度で入手できます。

②誰にでも簡単にできる
やり方は足の甲に自分で包帯を巻くだけです。

③効果が十分期待できる
どのタイプの痛みでも、だいたい2週間で痛みの程度が変わったり、痛みが出にくくなったり、なんらかの変化が現れます。

そして、2週間で手応えを感じた人が包帯療法を継続すると、どんな痛みであれ緩和していき、足の第一指の変形も和らいでいきます。

痛みだけでなく変形も改善する

前述したように、包帯療法が改善率が高く、なかには痛みがほぼ取れる人もいます。また、痛みだけでなく、足の変形が改善する可能性も高いのが特長です。足の変形が改善するには、包帯療法を1~2年以上続ける根気が必要となりますが、習慣になれば、それほど苦ではありません。

また、女性ですと、痛みや変形が改善することで、ハイヒールが履けるようになるというのも、うれしい効果ではないでしょうか。ハイヒールを履く人は、下項で紹介している足のマッサージも必ず併せて行ってください。

画像: 痛みだけでなく変形も改善する

包帯療法のやり方

やんわり引き締まる程度に巻くのがコツ

では、「包帯療法」のやり方について詳しく解説しましょう。

まず、使用する包帯です。
包帯には「伸縮性のない包帯」と「伸縮性のある包帯」があります。「伸縮性のある包帯」にも、「市販用」と「医療用」の2種類があり、包帯療法に使用するのは、伸縮性のある「医療用」の包帯です。以下、「医療用弾性包帯」として説明します。包帯の幅は5㎝の物を使用します。

医療用弾性包帯は、厚手でしっかりしており、適度な柔軟性と固さがあるため、複雑な部位に巻いても崩れにくく、患部を固定しやすいのが特徴です。

ドラッグストア(薬店)などで売っている市販の伸縮包帯は、薄くてやわらかいので、こうはいきません。しかし、この医療用弾性包帯はドラッグストアでは売っていません。
入手方法としては、
かかりつけの整形外科に頼む。
処方箋薬局または、一般のドラッグストアに「病院で使用している医療用弾性包帯」が欲しいと伝え、取り寄せ可能か聞く。
インターネットの通販サイトで「医療用弾性包帯」と検索して取り寄せ可能な業者を見つけて問い合わせる。
入院病棟などのある大きな病院の医療売店に販売しているか問い合わせる。
などが考えられます。

問い合わせるときには、「一般のドラッグストアでは売っていない、病院で使用している、医療用弾性包帯」と伝えればいいでしょう。

◆参考(編集部注:例えばこんな商品があります)

画像: ナビス ベスケア 伸縮包帯 3号 10巻入 / 8-2432-02 amzn.to

ナビス ベスケア 伸縮包帯 3号 10巻入 / 8-2432-02

amzn.to

医療用弾性包帯を入手したら、外反母趾の足に包帯を巻きます。

包帯療法でいちばん難しいのは巻くときの強さです。コツは、「痛くならないように、やんわりと引き締めるように」ということになります。弱過ぎても、痛くなるほど強過ぎてもだめです。1週間くらい巻いていると、自分に合った強さがわかってくるでしょう。

包帯には弾力性があるので、引き伸ばさずに6~8回巻けば、足の甲が締まってくる感じがすると思います。毎日就寝前に巻き、朝起床したら外してOKです。ただ、巻いている時間が長いと効果が高まるので、日中も可能であれば巻き続けてください

画像: ◆参考(編集部注:例えばこんな商品があります)

重症の場合に適した包帯の巻き方

第一指の変形(角度)が激しくなり、第二指(人差し指)の下にもぐり込んで、第二指が持ち上げられる場合があります。ここまで重症になると、さすがに手術が必要だと思われるかもしれません。でも、症状に合った包帯療法を行えば、手術をせずに痛みを軽減させることが可能です。第二指が少しずつ下がって、靴が履きやすくなり、痛みが楽になってきます。

画像: 重症の場合に適した包帯の巻き方

効果を高めるマッサージ

押さずにゆっくり「なでる」

包帯療法の効果を高めるために、血流を促進する足のマッサージも行いましょう。足の血流を促進したり、その日の足の疲れを取ったりするために、ぜひとも包帯療法とセットで続けてください。

足のマッサージは、風呂上りの体が温まっているときに、3~5分間行います。「押す」のではなく「なでる」感覚で、ゆっくりと血流を促すように、もんでいきましょう。大切なのは、足をいたわる気持ちで、やさしく行うことです。

慣れてきたら、筋肉の突っ張り具合や、皮下組織の腫れ具合などを確かめながら、マッサージできると理想的です。強く押してしまうと、こうした微妙な感触がわかりにくくなるので、やさしくなでることを心がけてください。

包帯療法を毎日続けると、足の甲や裏の感触が少しずつ変化していきます。この変化を毎日、確かめながらマッサージすると、足の状態がよくなっていくのが実感できるでしょう。

マッサージを行うのは、基本的には外反母趾のある側だけでかまいませんが、全身の健康のことを考え、両足に行うことをお勧めします。

画像: 押さずにゆっくり「なでる」

また、包帯療法と足のマッサージの併用は、第三指(中指)と第四指(薬指)の足指の間に痛みが発生する「中足骨頭部痛(モルトン病)」にも効果があります。この症状に困っている人もぜひ実践するとよいでしょう。

まずは2週間、続けてください。なんらかの変化が現れるはずです。手応えがあれば、続ける意欲が湧いてきます。包帯療法を習慣化すれば、最終的には足の痛みが消えるでしょう。外反母趾でお悩みの人は、まずは包帯療法とマッサージを実践してみてください。

なお、本稿は『外反母趾を自分で治す最強療法』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

画像: ▼「改善するには手術しかない」といわれてきた外反母趾。そんな常識を覆すセルフケアを一挙公開。▼医師と治療家が推奨する七つのメソッドを詳細に解説。▼外反母趾のさまざまな悩みにこたえる一冊。 www.amazon.co.jp

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