東洋医学において、健康とは「気・血・水」のバランスが取れた状態を指します。内臓下垂、脱肛、そして、まぶたが下がる眼瞼下垂などの病気は、気の不足から起こると考えられます。このような、気が下がって足りない状態のことを「気虚」と言います。【解説】平地治美(薬剤師、鍼灸師)

解説者のプロフィール

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平地治美(ひらじ・はるみ)

薬剤師、鍼灸・あん摩マッサージ師。明治薬科大学卒業後、漢方薬局での勤務を経て東洋鍼灸専門学校へ入学。約20年漢方に携わる。自身の治療院で施術を行う他、カルチャーセンターで漢方レッスンなども担当。『やさしい漢方の本 さわれば分かる腹診入門』(日貿出版社)、『げきポカ』(ダイヤモンド社)など、著書多数。

気が足りなくなるとまぶたが下がる

東洋医学において、健康とは「気・血・水」の3つのバランスが取れた状態を指します。車に例えるならば、気は「エンジン」、血は「ガソリン」、水は「体を潤わせて過熱を防ぐ水」と考えればよいでしょう。

この気血水のバランスが、偏った食事やストレスや過労、運動不足、睡眠不足、その他の外的環境などによりくずれると、病気になったり、体の不調が起こりやすくなったりします。

例えば、気が足りないと、無気力、食欲不振、倦怠感などの症状が現れます。また、血が足りないと貧血になる、水が多過ぎるとむくむといった、さまざまな症状の原因になるのです。

そして、意外かもしれませんが、気が不足すると、まぶたが下がります。これは、気の低下とともに、体の部位も下がる傾向があるためです。

内臓が下がる内臓下垂、肛門から腸の粘膜が飛び出す脱肛、そして、まぶたが下がる眼瞼下垂などの病気は、気の不足から起こると考えられます。

このような、気が下がって足りない状態のことを「気虚(ききょ)」と言います。

元気なときには目がパッチリ開いている人も、疲れたりぼんやりしたりしているときには、まぶたが下がるもの。この、疲れる、ぼんやりするという症状も、気虚のサインです。

また、加齢で気虚になる場合も多くあります。「若いときに比べて、まぶたが下がってきた」という人は、気が足りなくなっているのかもしれません。

こういった、気虚が原因の眼瞼下垂の場合、気を補うことで対処できます。

不足している「気」を補い胃腸を整える

家庭で気を補う方法としては、漢方を服用するのがよいでしょう。気虚の方に対して、よく使われているのが「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」です。

補中益気湯の「補中益気」は、「中の気を補い増す」という意味。「中」とは、胃腸などの消化器がある、上腹部のことを指します。

東洋医学では、体を上・中・下の3つに分けて考えており、頭からみぞおちを「上」、へそから足を「下」、そして、その間の部分を「中」としています。この「中」に当たる胃腸には、気をつくり出す働きがあるといわれているのです。

この胃腸を助ける作用があるのが、補中益気湯に含まれている生薬(漢方薬の原材料となる動植物、鉱物などの天然物)。

特に、サラシナショウマという野草の根茎を乾燥させた生薬「升麻」には、垂れ下がったものを正しい位置に戻す働きがあります。

この漢方を服用することで、弱っていた胃腸が正常になり、気をつくる働きが復活。そして、全身に気が巡るようになり、他の内臓の働きがよくなったり、下がっていた内臓が引き上がったりします。

その結果、全身の調子が整って元気になり、目の力も復活して、下がっていたまぶたが引き上がる、というわけです。

実際に、私の治療院でも、補中益気湯の服用でまぶたが上がった例があります。その患者さんは、大きなストレスや過労が重なって顔面神経マヒになり、まぶたが下がってしまいました。しかし、補中益気湯の処方と鍼治療を行ったところ、これらの症状が改善したのです。

ここで注意してほしいのが、まぶたが下がってくる全ての原因が、気の不足ではないということ。人によっては、気が滞っている、水が多過ぎる、などの場合もあります。

気が不足しているかをチェックするときは、以下の症状がないか、参考にしてください。

画像: 不足している「気」を補い胃腸を整える

手足が重だるく、うまく力が入らない
声に力がない
目つきに力がない
口角に白い泡のようなものが出る
食欲不振
熱い飲食物を好む
へその辺りがドキドキする
脈に力がない

これらのうち、2つ~3つの症状が当てはまれば、気虚の状態だと考えられます。その場合は、補中益気湯が効果を発揮するでしょう。

ただし、漢方薬は薬です。現在、病気で通院中の人は、必ず医師に相談してから服用してください。また、購入する際も、薬剤師のいる薬局に行き、直接相談することをお勧めします。

漢方を飲むだけでなく食生活も改善を

次に、服用する際の注意点をお話しします。

まず、市販品で顆粒状になっているものは、お湯に溶いて飲むとよいでしょう。煎じ薬に近い状態となり、より効果が高まります。

また、継続して服用していると、気が補われ過ぎて、かえって気が滞ることがあります。副作用を防ぐため、症状が改善したと感じたら、いったん飲むのをやめてみてください。

体が薬を必要としない状態になると、自然と飲み忘れたり、飲むのが嫌になってきたりするものです。

漢方を服用する上で、もう一つ気をつけてほしいことがあります。それは、食や生活などの「養生」です。

胃腸の働きを正常に保つには、暴飲暴食をしない、よくかんで食べる、休息や睡眠をしっかりとる、体を動かす、ということも大切になってきます。

いくら補中益気湯を服用していても、胃腸に負荷がかかる生活をしていたら、意味がありません。根本の原因から改善するよう、気をつけましょう。

また、胃腸は、冷たくてビショビショの環境が苦手です。朝食に青汁やスムージーをとるのは、一見体によさそうですが、胃腸を冷やすので、気虚の人には向きません。

その他、水分のとり過ぎも控えてください。水はもちろん、緑茶やコーヒーも、意外に体を冷やします。どうしても飲みたいときには、小さめのカップで飲むことをお勧めします。

画像: この記事は『安心』2020年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年4月号に掲載されています。

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