【解説】石原新菜(イシハラクリニック副院長)
解説者のプロフィール

石原新菜(いしはら・にいな)
医師。イシハラクリニック副院長。1980年生まれ。帝京大学医学部卒業後、同大学病院で2年間の研修医を経て現職。漢方医学、食事療法を中心とした治療に当たる。クリニックでの診療のほか、わかりやすい医学解説と親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と広く活躍中。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。日本温泉気候物理医学会会員。2児の母。
▼イシハラクリニック(公式サイト)
イライラ・ダメダメな私を変えた「朝の習慣」
仕事と子育てで余裕のない生活
父のクリニックで副院長として働き、テレビや雑誌に取り上げられ、結婚も子育てもしている。そんな私は、はたから見れば恵まれているでしょう。
ところが、実生活は正反対。家では小学生の娘たちと毎日バトル。のんびり屋の夫にイライラ。朝、家事を片付けたら職場まで自転車で猛ダッシュし、終日診療をして、合間に原稿のチェックをし、家に帰ればまた家事と育児が待ち構えている。そんな毎日です。
「30分だけお願い!」と家を飛び出した
下の娘が生後6ヵ月のころのこと。授乳や夜泣きで毎晩寝不足。2時間抱っこで揺らして、やっと布団に下したとたん「ギャー!」と泣かれる日々。当時2歳だった上の娘は、夜中に起きてきて、「ママー、トトロ見たーい」。明け方までDVDにつきあう。体はボロボロ。気持ちはいっぱいいっぱい。
そんなある朝、「30分だけお願い!」と夫に子供を預け、外に飛び出しました。眠くて意識は朦朧(もうろう)としている。でも、このままだと自分が壊れてしまう! 眠る時間はとれなくても、せめて独りの時間が欲しい! そんな心の叫びとともに家を飛び出し、向かったのは家の向かいにある公園。その公園の遊歩道を、矢も楯もたまらず走ったのです。
それが、朝ラン習慣の始まりでした。
いろんな感情が汗とともに流れ出た
家を飛び出す直前まで、娘を叱っていました。叱っているうちに腹が立ってきて、家を出たときは怒り狂っていました。ところが、30分走ったら、「怒りすぎちゃった。謝ろう」と思えるほど、冷静さを取り戻していたのです。
それ以来、毎朝ほぼ欠かさず、30分のランニングを続けています。疲れていてもイライラしていても、とにかくシューズをはいて家を出る。走りだしたら、心拍数が上がって考え事はできません。考えなければ、「イライラ」や「怒り」が頭を巡ることもない。いろんな感情が汗といっしょに流れていきます。
心身の健康は「気」「血」「水」で説明できる
ガス腹は「気」の滞り
ランニングが、なぜ私を「イライラ」「怒り」から解放してくれたのか。東洋医学で考えると、「血(けつ)=血液」の巡りがよくなり、「気(き)=エネルギー」が動きだすことで、心身のバランスが整ったからです。
東洋医学では、「気」「血」「水(すい)=血液以外の体液」が滞ることなく巡り、バランスが保たれることで、心身の健康を維持できると考えます。ランニングを始める前の私は、気が滞る「気滞(きたい)」という状態でした。気が滞ると、血も水も動きません。
気滞は、「イライラ」「ゆううつな気分」「情緒不安定」を引き起こします。身体面では「おなかが張る」「ガスがたまる」など、体が膨張した感じになるのが特徴です。

不調を感じたら「休む」のではなく「動く」
多くの人は、心身に不調を感じたとき、「寝る」「休む」を選びがち。ところが現代人の場合、それは逆効果になることが多いのです。特に「気滞」の症状があるときは、じっとしていてはダメ!気・血・水の滞りが原因なので、それを巡らせることが先決です。
気・血・水を巡らせるには、「動く」「温める」「汗をかく」こと。私自身、疲れた心身に「エイッ」と気合を入れて走りに出たことで、血流がよくなり、汗が出て、エネルギーが体を巡りだし、ストレスが一気に吹き飛びました。
「冷え」と「筋力低下」が病気の元
私は、漢方薬の処方と、食事や運動を含む生活習慣の指導を中心に、診療を行っています。症状も病名も違う患者さんを数多く見ていますが、どのかたにも共通する特徴が、「冷え」と「筋力低下」です。私は日々、すべての患者さんに「体を冷やさず、温めてね」「運動しましょう」とお話ししています。運動習慣が身についた人は、体温が上がって筋肉がつくので、症状の改善が早いのです。
患者さんにお出しする漢方薬も、「体温を上げる生薬」を主軸とし、そのうえで症状に合わせた処方を行います。実は、漢方薬も運動(ランニング)も、体温を上げることが目的。体温が上がれば、治療の何割かは達成できたも同然です。
30分の「自分時間」で心身が健康になる
ランニングは効率がいい健康法
30分は意外と短いものです。ボーッとしたり、イライラしたりしていると、家事も子供の相手もできずに過ぎてしまうでしょう。それならいっそ、家のことをいったん忘れて、30分だけ「自分時間」を作ってみてください。30分だけ走りに出てみる。たった30分で汗をかき、代謝と体温が上がり、血色がよくなって、脳がリラックスする。ランニングは極めて効率的な健康法なのです。調子が悪ければ走らずに、歩いて軽くストレッチをして、公園の景色を楽しんで帰ってくるだけでもOKです。
朝ランを続けたら使える時間が増えた!
朝の忙しい時間を30分もランニングに使うなんて、「時間のムダ!」と思う人もいるでしょう。ところが私は、「朝ランによって、1日24時間を有効に使えるようになった」と実感しています。以前の私は、いつも時間に追われていました。時間が足りない。やるべきことは減らない。気持ちは焦る……。それが今は、「時間に追われる」のではなく、「時間を使いこなしている」という感覚です。朝ランを始めてから、どんなに忙しくても「すべてをやりきる」ことが可能になりました。
何が変わったのでしょうか。体力がついたのです。
「ああ、疲れた。もう動けない」「頭が真っ白! 何も考えられない」という時間が減りました。このロスが消えたのは大きい。使える時間が格段に増えました。
「ちょいラン」で生き方まで変わる
忙しい現実は変わらなくても、走ることでイライラやストレスがなくなり、余計なことに頭や体を使わなくて済む。24時間のうち、たった30分走ることで、仕事が増えてもどうにかこなし、家族と楽しく暮らすことができています。
同年代の友人やママ友と話していると、家庭の事情や境遇は違っても、みんなそれぞれ大変です。「イライラする」「ゆううつになる」「不安になる」「体が重くて動けない」「時間がない」。そんな女性たちに「ちょっと走ってみて」と声をかけたいのです。
速く走ったり、長距離を走ったりする必要はありません。近所をゆっくり短時間走るだけの「ちょいラン」で、体も心も生き方までも健康になります。

ほぼ毎日近所の公園を走る新菜先生
[別記事:コロナ太り対策にゆっくりランニング 筋肉をつけてヤセ体質に→]
なお、本稿は『女のキレイは30分でつくれる』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

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