解説者のプロフィール

中野あおい(なかの・あおい)
あおいクリニック銀座院長。美容皮膚科、美容内科医。金沢医科大学卒業後、同大学病院にて臨床研究に携わる。その後、著名な美容クリニックの院長などを歴任した後、2003年12月にあおいクリニック銀座を開設。国際学会に数多く出席し、最先端の美容医療技術を吸収した経験をもとにした施術は、多くの著名人の信頼を得ている。
三つの美白成分がメラニンの生成を抑える
※肌に塗る際は、必ずパッチテストを行ってください。少量を塗ってしばらく時間をおき、様子を見て、赤みやかゆみなどの異常が現れたら、直ちに中止してください。
近年、甘酒やこうじなどがブームになり、日本酒にまつわる素材に注目が集まっています。
酒かすで、顔にパックをする「酒かすパック」も、その一つです。昨今話題になっている大きな要因は、試した人が美顔効果に驚き、インターネットや口コミで広まっていることがあるのでしょう。
酒かすパックの美顔効果については、多くの研究によって、科学的根拠が示されています。
その研究の端緒となったのが、酒造りをしている杜氏の手でした。杜氏の手は白くて、スベスベだということは、昔からよく知られてきた事実です。その理由を調べたところ、発見されたのが、酒かすに含まれるコウジ酸だったのです。
シミの原因となるメラニンは、本来、肌を守るために作り出されるものです。しかし、紫外線によるダメージが大きかったりすると、メラニンが過剰に生成され、それが肌に蓄積して、シミになってしまいます。
コウジ酸は、このメラニンの生成過程に働きかけて、メラニンの余分な生成を防ぐことがわかってきました。そのため、シミができるのを食い止めて、肌を白く美しく保つのに役立つのです。
こうしたコウジ酸の働きが知られるようになった結果、多くの美白化粧品にも応用されるようになっています。私自身も、クリニックにいらっしゃったかたに施術する際、コウジ酸配合の美白製剤を活用しています。もちろん、その効果が間違いないものであることも実感しています。
酒かすのすばらしい点は、肌にいい成分をいくつも含んでいるところです。
まず、美白成分としては、コウジ酸以外にも、アルブチンと、フェルラ酸という二つの成分を含んでいます。アルブチンとフェルラ酸は、コウジ酸とはまた別のアプローチでメラニン生成を抑制するように働きかけます。
つまり、三つの成分が、それぞれ働きかけることになります。そのため、コウジ酸だけの場合よりも、高い美白効果が期待できるわけです。
肌が潤ってキメも細かくなる!
酒かすには、セラミドという保湿成分も含まれています。セラミドは、肌を構成している角質層の中にあって、角質細胞のすきまを満たし、細胞どうしや水分をつなぎとめる役割を果たしています。
そのセラミドが酒かすによって補充されると、肌が潤い、キメも細かくなります。逆に、セラミドが足りなければ、肌が乾燥し、荒れやすくなるといっていいでしょう。酒かすパックは、保湿効果によって美肌に貢献してくれるのです。
また、酒かすには、ビタミンやミネラルも豊富に含まれています。酒かすパックを実践することで、こうした栄養が浸透し、肌にとてもよい影響をもたらします。
肌の老化現象ともいえるシワやくすみは、乾燥と栄養不足が大きな要因となります。酒かすパックで保湿し、栄養補給を行うことは、肌のアンチエイジングとして、非常にお勧めできます。
なお、酒かすには、アルコール成分が含まれています。ですから、アルコール過敏症のかたは注意が必要です。酒かすパックを行う前に、必ず目立たない場所でパッチテストを行って、自分の肌に合っているかどうか試してください。
初めて酒かすパックを行う場合は、1~2分程度に留めておきましょう。様子を見て、問題ないようであれば、徐々に時間を延ばしていくのがお勧めです。延ばすといっても、パックする時間は5分程度でも十分な効果が見込めます。
それでも心配なかたは、顔のパックを行う前に、ひじやかかとなどで試してみるのもお勧めです。
ちなみに、カチカチにかたくなってしまったかかとにパックを行うと、スベスベになる効果も期待できます。テストの意味合いだけでなく、そうしたお悩みを抱えるかたは、ぜひ実践してみるとよいでしょう。
肌にすばらしい美白・美肌効果をもたらす酒かすパックは、酒かすと水だけで作れてお手軽です。一日数分で十分なので、ぜひお試しください。
酒かすパックの作り方

【材料】
酒かす(板状)…30g 精製水…30ml

【作り方】
材料をよく混ぜ合わせる。お好みで、酒かす、精製水を適宜追加する。
【使い方】
洗顔後に顔全体に塗り、5~10分放置後に洗い流す。
※酒かすはバラ状や、ペースト状の物を使用してもOK。その場合は、精製水の量を調整すること。
※板状の酒かすを使用する場合は、事前に30分程度水やお湯に浸けておくと混ぜやすくなる。

この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。
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