マグネシウムは、必須・主要ミネラルの一つです。筋肉を収縮させる方向に働くのがカルシウム、弛緩させる方向に働くのがマグネシウムです。マグネシウムが不足すると、筋肉は収縮したままの状態でけいれんを起こします。これが、こむら返りです。【解説】横田邦信(慈恵会医科大学客員教授)

解説者のプロフィール

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横田邦信(よこた・くにのぶ)

東京慈恵会医科大学客員教授。医学博士。日本糖尿病学会功労学術評議員・同学会専門医。日本生活習慣病予防協会参事。糖尿病をはじめとする生活習慣病とマグネシウムの関係を長年研究。マグネシウムの社会啓発活動を行うMAG21研究会を共同設立し、Webサイトを開設。
▼MAG21研究会(公式サイト)

現代人は慢性的なマグネシウム不足

長年、日本人のカルシウム不足が指摘されてきましたが、ほんとうに問題なのは、マグネシウムの摂取不足です。

近年、マグネシウムの不足が、糖尿病、高血圧などの生活習慣病や、「こむら返り」にも大いに関与していることがわかってきました。

マグネシウムは、必須・主要ミネラルの一つです。骨や歯を構成する重要な成分であるほかに、神経の興奮伝達や筋肉の収縮を手伝ったり、血圧を調整したり、体内で働く600種類以上の酵素を活性化させたりするなど、全身の健康に不可欠な役割を果たしています。

ところが、国民健康・栄養調査によると、2016年度のマグネシウムの1日の推定摂取量は、国の推奨摂取量に対して、男性(30~40歳)が130mg以上不足し、女性も80mg不足していました。

こうしたマグネシウム不足の原因は、主食の変化と大きく関係しています。

戦前までは、日本人の主食は、玄米に大麦やアワ、ヒエなどの雑穀を混ぜた「雑穀ご飯」でした。穀物の皮や胚芽にはマグネシウムが豊富に含まれています。しかし、戦後から白米が主流になりました。玄米を精製した白米が主流になれば、当然、マグネシウムの摂取量も激減します。

また、マグネシウムは失われやすいミネラルです。カルシウムを過剰にとると、余分なカルシウムは尿中へ排出されますが、その際いっしょに、マグネシウムも排出されるのです。つまり、カルシウムをとればとるほど、マグネシウムは減ります

さらに、マグネシウムはさまざまなストレスがかかった際に尿中に排泄されます。また、お酒の過剰摂取、運動のやり過ぎなどで多量に消費されます。

このように現代人は、慢性的なマグネシウム不足に陥りやすくなっています。

マグネシウムは、先述のように神経や筋肉の働きに深くかかわっています。筋肉は収縮と弛緩をくり返して体を動かしています。その際に、筋肉を収縮させる方向に働くのがカルシウム、弛緩させる方向に働くのがマグネシウムです。

しかし、マグネシウムが不足すると、カルシウムが筋肉のたんぱく質にくっついて離れがたくなり、筋肉は収縮したままの状態でけいれんを起こします。これが、こむら返りです。

それに加えて、過度な運動、飲酒、脱水、ストレス、冷え、血行不良などが、こむら返りを起こす引き金になります。

なお、マグネシウム不足はインスリンの効きを悪くして、糖尿病の発症リスクを高めます。糖尿病の人にこむら返りが多いのも、そもそも根底にマグネシウム不足があるからです。

マグネシウムが多い水や食品でこむら返りが解消

こむら返りを防ぐには、マグネシウム不足を解消して、カルシウムとのバランスを適正にすることが大事です。そのためには、マグネシウムを多く含む食材を意識してとってください。

マグネシウムの多い食材
そ  そば、そば粉野菜(特に緑黄色野菜)
ば バナナ
の ノリシイタケ(特に干しシイタケ)
ひ ヒジキイチジク(特に干しイチジク)
ま コンブ
ご 五穀(ヒエ、アワ、大麦など)牡蠣
と 豆腐イモ各種
ま 抹茶なっ納豆
ご ゴマトウモロコシ
わ ワカメクルミ
「そばのひ孫と孫は(わ)優しい子かい? 納得!」

私が考案した「そばのひ孫と孫わ(は)優しい子かい? 納得!」という標語(上の一覧を参照)を頭に入れておくといいでしょう。これは、マグネシウムを豊富に含む食材の頭文字をつなげたものです。

マグネシウムが豊富な食材を上手に選んで、バランスよくとってください。

白米に雑穀を加えるのが嫌なら、ゴマやノリをご飯にかけたり、ワカメやシイタケ、野菜をみそ汁に入れたりすれば、マグネシウムの摂取量を増やすことができます。豆腐や納豆は、手軽にマグネシウムを補充できる便利な食品です。

朝食は、トーストとコーヒーという人は、バナナと豆乳に替えてみてはいかがでしょう。おやつには、クルミなどのナッツ類がお勧めです。ただし、カロリー(エネルギー)が高いのでとり過ぎないことです。

また、マグネシウムを手軽に補給できる栄養機能食品や、天然由来のマグネシウム濃縮液、ミネラルウォーター(硬水)を利用するのもいいでしょう。

最後に、マグネシウムの摂取を始めて、こむら返りが改善した例をご紹介しましょう。

Iさん(男性・45歳)は、睡眠中にしょっちゅうこむら返りを起こし、睡眠不足になっていました。そこで、「マグネシウムがこむら返りの一因」という私の記事を読み、マグネシウム含有量の多い水を飲むようにしたところ、こむら返りが起こる頻度が減ったそうです。

「これはいい」と確信したIさんは、その後、マグネシウムの多い食品を意識してとるようにしました。今ではこむら返りをほとんど起こさなくなり、足のむくみやだるさも解消しました。さらに、よく眠れるようにもなったそうです。

画像: この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。

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