解説者のプロフィール

関博和(せき・ひろかず)
せき接骨院院長。1964年、長野県岡谷市生まれ。85年、柔道整復師免許を修得。90年、せき接骨院を開業。健康管理士一般指導員、介護予防運動指導員などの資格を習得。ふくらはぎを温める独自の治療法で、痛みや肥満の改善に大きな成果を上げている。愛称は「ふくらはぎ先生」。
サポーターで「こむら返り」が改善
私の治療院に来院された患者さんのなかには、「こむら返りをよく起こす」と訴える人が多数おられます。そのような人たちに共通しているのが、ふくらはぎの冷えです。
ふくらはぎの筋肉は、全身の血液循環の要です。ポンプのようにギュッと縮んでは緩むことをくり返し、血液を心臓へ押し戻す大事な働きをしています。
ところが、ふくらはぎが冷えてかたくなると、血液を心臓に戻す静脈もかたくなって、下半身の血液やリンパ液の流れが停滞。静脈には血液が逆流しないように弁がついていますが、その弁もかたくなって逆流しやすくなります。
このように、ふくらはぎの血流が悪くなったり逆流したりすると、ふくらはぎの筋肉をけいれんさせて、強制的に血液を心臓のほうに流そうとする生理的な作用が働きます。そのため、こむら返りを起こすと考えられます。
しかし、ほとんどの人は、自分のふくらはぎが冷えていることに気づいていません。その結果、ふくらはぎは冷えたまま放置され、筋肉も血管もどんどんかたくなります。それで、こむら返りが起こりやすくなるのです。
意外かもしれませんが、ふくらはぎは体の中で最も冷えやすいところです。女性はスカートや丈の短いパンツをはいて、ストッキングをあまりはかなくなりました。男性も、短パンをはく人が増えています。
このように、ふくらはぎは外気にさらされることが多く、寒い季節はもちろん、夏もエアコンの冷気に容赦なく冷やされています。
また、太もものように筋肉が多く、よく動かすところは熱が産生されて温まりますが、ふくらはぎは太ももほど、筋肉の量が多くありません。そのため熱が産生されにくく、冷えやすいのです。
したがって、こむら返りを防ぐには、まずふくらはぎを冷やさないことが大事です。そのうえで、ふくらはぎを常に温めるように心がけます。
ふくらはぎを温めて、こむら返りが改善した例をご紹介しましょう。
Kさん(59歳・男性)は、冬になると、ほぼ毎日、就寝中にこむら返りを起こしていました。また、スポーツ時にもふくらはぎや足指が頻繁につって困っていました。
そこで、ふくらはぎのサポーターをはくように勧めました。すると、Kさんはサポーターをはいたその晩から、こむら返りを起こさなくなったそうです。スポーツ時にもサポーターを装着していたところ、こむら返りや足指のつりもなくなったと喜んでいました。
このように、サポーターを装着した患者さんからは、「気がついたら起こらなくなっていた」という声をよく聞きます。
夜間頻尿、腰痛、ひざ痛冷え、むくみが続々改善
では、ふくらはぎのお勧めの温め方をご紹介しましょう。
●サポーターで温める
ふくらはぎを覆うサポーターやレッグウォーマーを、昼間だけでなく夜も装着し、ふくらはぎを温めます。先述の例のように、こむら返りがピタリと改善するだけでなく、夜間頻尿が改善したという人も少なくありません。
サポーターは密着性があり、かつ、足を締めつけない物を選んでください。

●お風呂や腰湯で温める
お風呂に入ったら、腰から下を15分ほどしっかり温めてから、最後に全身を温めて上がるようにしましょう。
腰から下をしっかり温めるのがポイントです。特に、ひざから下には、こむら返りの予防に役立つ重要なツボが複数あります。ふくらはぎの下のほうだけ温める足湯では、あまり効果は期待できません。

●こむら返りの対処法
こむら返りを起こした際の対処法としては、熱いシャワーをふくらはぎにかけると、早く治まります。弁慶の泣きどころといわれる、すねがつったときにも、熱いシャワーが有効です。

ふくらはぎの冷えは、こむら返りだけでなく、さまざまな不調の原因になります。私はそのことを30年前に突き止めて以来、患者さんにふくらはぎを温めるように指導しています。
ふくらはぎを温めると、こむら返りだけでなく、腰痛、ひざの痛み、冷え、むくみ、不眠、自律神経失調症など、さまざまな症状がよくなります。ぜひお試しください。

この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。
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