解説者のプロフィール

丸尾啓輔(まるお・けいすけ)
太子橋鍼灸整骨院院長。鍼灸師。柔道整復師。
ふくらはぎの二つのツボをさすって刺激
寒い季節になると、患者さんからよく聞くのが、「最近こむら返りが起こる」という声です。なかでも中高年者に多い傾向があります。
こむら返りの原因は、筋肉疲労、冷え、水分不足などといわれています。中高年に多いのは、年齢とともに筋力が衰えて疲れやすくなることや、体の水分量が少なくなることが関係しているのでしょう。
特に、寒い時期は体を温めるために基礎代謝(安静にしているときでも消費されるエネルギー)が上がり、その分、水分の蒸発量が増えます。
にもかかわらず、「夜トイレに起きるのが嫌だから」という理由で、高齢者は特に水を飲まずに寝ることが多いようです。すると、水分不足に、明け方の気温低下による冷えなどが加わって、就寝中にこむら返りが起こりやすくなるのです。
こむら返りの原因は、一つではありません。筋肉疲労、冷え、水分不足といった要因が、いくつか組み合わさったときに起こりやすくなるようです。
私は、こむら返りが起こるという患者さんに対し、当院での鍼灸治療やツボ指圧に加えて、自分でできるツボ刺激の方法もアドバイスしています。
実際にツボ刺激を続けている患者さんのなかには、こむら返りが起こりにくくなったという人も少なくありません。そのやり方を、ご紹介しましょう。
●こむら返りの対処法
まず、こむら返りが起こったときに、できるだけ早く痛みを鎮める方法として有効なのは、「手のひらさすり」です。
ふくらはぎの中心、筋肉が最もふくらんでいるところには、「承筋」というツボがあります。さらに、その筋肉のふくらみのいちばん下の部分には、「承山」というツボがあります。
この二つのツボを刺激すると、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とひらめ筋)の緊張が緩んで、痛みの緩和に役立ちます。
しかし、ツボを的確にとらえるのは難しいので、手のひらで承筋・承山のツボを含むふくらはぎ全体を、さすって刺激する方法をお勧めしています。
やり方は、手のひらをふくらはぎに密着させるように当て、筋肉の線維と平行に上から下へさすります。少し強めに「さする」ことを意識してください。


「手のひらさすり」

「足先反らし」
もう一つ、ひざ裏の横ジワの左右中央にある「委中」というツボを刺激する、「足先反らし」も効果的です。
ひざ裏には、ふくらはぎから足底筋へとつながる筋肉のすじが通っています。また、血管も触れやすい場所にあります。
やり方は、足を伸ばして座り、両手の中指で委中のツボを押さえながら、足先を顔のほうへ向けます。こうすることで血流がよくなり、ツボ押しとストレッチ効果によって、収縮している筋肉が伸びて緩みます。
委中は、痛過ぎない程度の強さで押さえてください。いずれも症状が治まるまでゆっくりくり返してください。
体が温まっているお風呂上がりが最適
●こむら返りの予防法
次に、こむら返りの予防に、お勧めのツボ押しのやり方をご紹介しましょう。最も重要なのは、足裏にある「湧泉」というツボの刺激です。
湧泉は足指を曲げたときにできるくぼみの部分です。エネルギーが湧き出る場所で刺激すると、足裏から全身の血流がよくなり、冷えや筋肉疲労の解消に有効です。
湧泉は、手の親指の腹で押すか、ゴルフボールなどを踏んで刺激します。加えて、先述した「承筋」「承山」「委中」のツボも、指で押して刺激しておきましょう。
ツボを押すときは、筋肉をゴリゴリともむのではなく、ツボに対してグーッと垂直に押すのがコツです。1〜2秒押すのを、3〜5回くり返しましょう。慣れてきたら、少しずつ押さえる秒数を長くします。


承筋、承山、委中のツボも刺激する
予防法は継続することが大切なので、毎日行うのがお勧めです。最もよいのは、体が温まっているお風呂上がりです。1日2〜3度、行ってください。
そのほか、水分補給も、こむら返り予防には欠かせません。水分補給は、経口補水液などミネラルの多い水を飲むのが理想です。カフェインやアルコールは利尿作用があって脱水しやすいので、飲む場合は同量の水を併せてとりましょう。

この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。
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