足の裏には、足の指を曲げたり伸ばしたり広げたりするための筋肉が複数あります。それらの一部はふくらはぎにつながっているので、足裏の筋肉がかたいとふくらはぎへの血流が滞り、こむら返りが起こりやすくなるのです。【解説】平野薫(ひらの整形外科クリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

平野薫(ひらの・かおる)
ひらの整形外科クリニック院長。1987年、九州大学医学部卒業。新日鐵八幡記念病院整形外科主任医長・リハビリテーション科部長などを経て、2010年より現職。東洋医学や天城流湯治法などを治療に取り入れ、成果を上げている。『ひざ痛を治したければ筋肉をはがしなさい』(マキノ出版)などの著書がある。

特に親指を回して念入りにほぐそう!

ふくらはぎには、腓腹筋とヒラメ筋という筋肉があります。これらの筋肉が血流不足になってけいれんを起こし、つってしまうのが「こむら返り」です。

さて、こむら返りを頻繁に起こす患者さんの多くは、足の裏がかたくなっているのをご存じですか。

足の裏には、足の指を曲げたり伸ばしたり、広げたりするための筋肉が複数あります。それらの一部は、ふくらはぎにつながっているので、足裏の筋肉がかたいと、ふくらはぎへの血流が滞り、こむら返りが起こりやすくなるのです。

足の裏を、自分で簡単に柔軟にする方法として、私が患者さんに勧めているのが、「足の指回し」です。

靴を長時間はく生活をしていると、足の指のつけ根の関節がかたくなってきます。

皆さんのなかにも、足の指どうしがくっついて開かなかったり、足の指を曲げ伸ばしできなかったりする人は、多いのではないでしょうか。

足の指をつけ根から回すと、足の指の関節だけでなく、足裏の筋肉も動いてやわらかくなります。その結果、ふくらはぎも柔軟性を回復し、血流がよくなって、こむら返りが起こりにくくなるのです。

特に親指(母趾)のつけ根には、多くの腱(筋肉と骨をつなぐ組織)があります。念入りに回し、しっかりほぐしましょう。

足の指回しのやり方は、下の図解をご覧ください。

足の指回しのやり方

入浴中やお風呂上がりなど、体が温まっているときに行うと、効果的です。

行程は①から⑥まであり、両足とも行います。時間がないときは、②の親指(母趾)を回すだけでもけっこうです。

ぜひ、毎日の習慣にしてください。1日何回行ってもかまいません。

床かイスに座り、楽な姿勢を取る。右手で右足の甲をつかみ、右足の小指(第5趾)を、根もとの関節から、左右に3~4回ずつ大きく回す。同様に、薬指(第4趾)、中指(第3趾)、人差し指(第1趾)の順に回す。

画像1: 足の指回しのやり方
画像: 指の根もとの関節が動くように、大きく回す。

指の根もとの関節が動くように、大きく回す。

最後に親指を、左回り、右回りにそれぞれ10~15回ずつ大きく回す。時間がないときは親指を回すだけでもOK。

画像2: 足の指回しのやり方

右手で右足のくるぶしを持つ。左手の指と右足の指を組み、くるぶしの中をほぐすように、右足首を左回り、右回りに5回ずつ回す。

画像3: 足の指回しのやり方

指は組んだまま、右手の親指が右足の土踏まずに当たるように持ちかえ、ぞうきんをしぼるように、足の甲を5回ひねる。

画像4: 足の指回しのやり方

右手で右足の甲をつかみ、左手で右足のかかとを持って、かかとを左右に5回揺らす。

画像5: 足の指回しのやり方

右足のかかとの上にあるシワを伸ばすように、左右の手の親指で引っ張りながら、30秒ほどマッサージする。

画像6: 足の指回しのやり方

■指導/YUKARI(品格ボディアドバイザー・足の指まわし協会代表)

ひざや股関節、腰の難治の症状まで改善

こむら返りの予防策として、もう一つご紹介したいのが、「すねの筋肉はがし」です。

筋肉が骨に膠着すると、血流が滞り、つりやすくなります。すね側の筋肉がかたくなっていると、ふくらはぎ側の血流も悪くなります。すねの筋肉はかたくなりやすいので、日ごろから柔軟にしておきましょう。

すねの筋肉はがしでは、すねの骨の外側についている前脛骨筋という筋肉を、骨からはがしていきます。詳しいやり方は、下の図解をご覧ください。

足の指回しとセットで、入浴時などに行うといいでしょう。足の指回しも、すねの筋肉はがしも、一日に何回行ってもかまいません。

筋肉がかたいと、骨からはがすときに痛みがあります。無理をせずに、我慢できる程度の力かげんで行ってください。毎日続けるうちに、筋肉が徐々にやわらかくなり、はがすときの痛みも軽減されていきます。

すねの筋肉はがしのやり方

すねの骨の外側と筋肉の間に、両手の親指を入れて、筋肉をはがすように外側へ動かす。1cm間隔で指を下へずらしていき、ひざ下からくるぶしまではがす。反対の足も同様に行う。

画像: すねの筋肉はがしのやり方

私は患者さんの治療やリハビリをする際、足の調整に力を入れています。足の指回しやすねの筋肉はがしなどを行って、足の筋肉をやわらかくすると、足の機能が回復して歩行が安定するばかりか、全身に好影響が及ぶのです。

変形性ひざ関節症や股関節症、脊柱管狭窄症など、難治といわれる症状が改善するケースも少なくありません。また、体の土台が安定することで姿勢が整います。そうなると、腰痛、肩や首のコリ、ネコ背などの解消にもつながるのです。

また、意外に思われるかもしれませんが、咀嚼が足りないと足の裏がかたくなります

人間の体は、頭から首、背中、腰、股関節、ひざ、足首、足裏と、すべて連動しています。咀嚼が足りないと、小腸と大腸に負担がかかります。それが反映して、太ももやふくらはぎの内側がこり、それにつながる足裏の筋肉がかたくなるのです。

ですから、こむら返りに悩むかたは、足の筋肉を柔軟にする筋肉はがしを実践するとともに、食べ物をよく噛むことを心がけてください。

画像: この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。

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