野菜には、切り方や調理のしかたによって、せっかくの栄養が失われてしまう物もあります。健康野菜として知られるタマネギも、栄養ロスを招きやすい野菜の一つといえます。ですから、以下の五つのコツをしっかり抑えておくことが大切です。【解説】赤石定典(東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長)

解説者のプロフィール

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赤石定典(あかいし・さだのり)
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部係長。管理栄養士。栄養管理のプロとして栄養に関する研究を行い、入院患者の献立の作成や、患者に直接栄養管理の指導やアドバイスも行う。自身が勤務する東京慈恵会医科大学附属病院栄養部が監修した『その調理、9割の栄養捨ててます!』(世界文化社)はロングセラーを記録。

タマネギは栄養ロスを招きやすい野菜

「健康のために、毎日野菜をしっかりとっています」という人は多いでしょう。野菜にはビタミンやミネラルだけでなく、近年注目されているファイトケミカルや食物繊維も豊富です。

しかし、毎日野菜をたくさん食べているから、栄養もしっかりとれているとは限りません。野菜には、切り方や調理のしかたによって、せっかくの栄養が失われてしまう物もあります。なかには、本来とれるはずの栄養の9割近くを失ってしまう物もあるのです。

そんな栄養ロスを防ぐためには、それぞれの野菜に合った適切な切り方や、調理のしかたを知ることが大事です。

タマネギには、血液をサラサラにしたり、血圧や血糖値を下げたり、動脈硬化を防いだりするなど、さまざまな健康効果が知られています。それをもたらす代表的な成分が、硫黄化合物のアリシンと、ケルセチンというポリフェノールです。

ところが、調理方法を間違えると、それらの成分が減って、タマネギのパワーが大きく失われてしまいます。健康野菜として知られるタマネギも、栄養ロスを招きやすい野菜の一つといえます。

ですから、タマネギの健康効果を余すところなく活用するために、以下の五つのコツを、しっかり抑えておくことが大切です。

まず一つめは「切り方」です。

タマネギは特に切り方が大事で、それしだいで健康効果が大きく変わってきます。いちばんのお勧めは、みじん切りです。細かく切れば切るほど、血液サラサラ成分であるアリシンが増えます。

というのも、タマネギの細胞の中には、硫化アリルという成分と、硫化アリルを分解するアリナーゼという酵素が、バラバラに入っています。タマネギを細かく切って細胞を壊すと、硫化アリルとアリナーゼが接触し、アリシンを作るのです。

画像: みじん切りで血液サラサラ効果がアップ!

みじん切りで血液サラサラ効果がアップ!

二つめは「料理に使う部分」です。

タマネギは、芯や成長点と呼ばれる部分にも、豊富に栄養が含まれています。それらもなるべく使うように心がけましょう。みじん切りにしたり、煮込んだりする場合は特に使いやすいと思います。

画像: タマネギは栄養ロスを招きやすい野菜

三つめは、切ったあとに「すぐに加熱したり、水にさらしたりしない」ことです。

酵素は一般的に熱に弱く、アリナーゼも加熱によって活性を失います。ですから、タマネギを切ってすぐに加熱すると、アリナーゼが働かず、アリシンを作れなくなってしまいます。

アリシンができるピークは切ってから約10分後なので、その間は調理せず、なるべく空気にさらしてください。そうすることによって酵素反応が進みます。

また、切ったあとで水にさらすと、水溶性の成分であるアリシンやケルセチンが水に溶け出してしまいます。

水にさらさなくても、空気にさらせば辛みや刺激臭が減り、生でも食べやすくなるので心配ありません。ただし、空気にさらし過ぎるとアリシンが減ってしまいます。さらす時間は、10~15分を目安とするよいでしょう。

豚肉と食べればダイエット効果アリ!

四つめは、「天日干し」です。

タマネギは日持ちするので、自宅に常備しているかたも多いと思います。このとき、皮をむいて天日干しをしておくと、ケルセチンが増えます。お勧めは1週間程度ですが、数日でも効果はあります。

ケルセチンは、紫外線や害虫などから自分自身を守るための成分で、紫外線を浴びるほど増えます。タマネギの皮が茶色いのはケルセチンが多いためなのです。

五つめとして、「食べ合わせ」にも気をつけるとよいでしょう。

タマネギと相性がいいのは、豚肉です。なぜなら、豚肉には、糖質の分解を促進するビタミンB1(チアミン)が豊富だからです。

チアミンは水溶性ですが、タマネギのアリシンが結合すると、脂溶性のアリチアミンという物質になります。脂溶性になることで、体内に長くとどまって糖質を効率よくエネルギーに変えてくれます。ですから、豚肉のショウガ焼きにタマネギを加えるのは、実に理にかなった調理法といえます。

料理に適した切り方や食べ方がありますから、すべてをこのとおりにする必要はありません。できる範囲で心がけて、おいしく栄養を摂取しましょう。

画像: この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年4月号に掲載されています。

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