特に慢性の病気を予防したり治療したりする場合には、野菜や果物などの普段使いの食材こそが重要です。例えば、玉ねぎは生活習慣病の特効薬です。「レモン玉ねぎ」にすれば、普段の食事で無理なくとれるだけでなく、レモンによる相乗効果も期待できます。【解説】池上文雄(千葉大学名誉教授・薬学博士)

解説者のプロフィール

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池上文雄(いけがみ・ふみお)
千葉大学名誉教授・グランドフェロー。薬学博士。薬剤師。一般社団法人 日本薬用機能性植物推進機構理事。専門分野は、薬用植物学、漢方医薬学。「地球は大きな薬箱」をモットーに、環境健康学と食品薬学に関した教育と研究に取り組む。『図解 山の幸・海の幸 薬効・薬膳事典: 果実・キノコ・海藻・魚介類50種』(農文協)、『健康寿命を延ばすための薬食術』(主婦の友社)など著書多数。

普段の食材こそが慢性病の薬になる

近年、わが国では糖尿病や肥満、動脈硬化症などの「生活習慣病」と呼ばれる病気の人が増えています。

原因として考えられるのが、食生活の欧米化による肉や卵、乳製品などの動物性脂肪やたんぱく質の摂取過多と、運動不足です。

2000年前の中国の医学書には、健康の基本は「食養」と「養生」だとあります。食事をもって体を養い、生活に留意し健康の増進を図るという意味です。

東洋医学では、「食べられるものはすべてが薬」と考えます。特に慢性の病気を予防したり治療したりする場合には、野菜や果物などの普段使いの食材こそが重要です。

そのような観点で眺めると、私たちの身の回りには、すでに薬がたくさんあります。

画像: 東洋医学では「食べられるものはすべてが薬」と考えられている

東洋医学では「食べられるものはすべてが薬」と考えられている

病気を防ぎ気の流れもよくなる

例えば、玉ねぎは生活習慣病の特効薬です。

玉ねぎを切ったときに目が染みるのは、「硫化アリル」という成分による刺激ですが、硫化アリルは血液をサラサラにして、高血圧、動脈硬化、脳梗塞(※1)、心筋梗塞(※2)などを防ぎます。

※1 脳の血管が突然詰まり、血流が途絶え、脳の神経細胞が死んでしまう病気
※2 心臓を取り巻く冠動脈がふさがれ、心臓が酸素不足になって壊死する病気

さらに血糖値の上昇を抑える働きもあるので、糖尿病の予防にもよい食材です。

また漢方の知恵によると、玉ねぎには胃腸を温めて気の流れをよくする効能があります。気の流れがよくなれば、消化が促進され、さらに利尿作用も得られるので、肥満やむくみにも有効です。

このような玉ねぎをレモンで漬けて「レモン玉ねぎ」にすれば、普段の食事で無理なくとれるだけでなく、レモンによる相乗効果も期待できます(作り方は下項)。

レモンのビタミンC含有量は、柑橘類のなかでもトップクラスです。ビタミンCは免疫力を高め、カゼや感染症の予防、疲労回復、肌荒れの改善に効果があります。メラニン色素を減らすので、シミやソバカスを防ぎます。

酸味の主成分であるクエン酸は、血流改善、疲労回復などの効果も期待できます。

防カビ剤不使用のレモンなら、皮ごと食べることができます。黄色く成熟した果皮はストレス、食欲不振、生活習慣病の予防に有効です。

ハチミツ、オリーブ油の効果も見逃せない

レモンの酸味や果皮の苦味が苦手な人は、ハチミツで甘みを加えるとよいでしょう。ハチミツは食品としてだけでなく医薬品(第3類)として販売されることもあります。効能は、栄養の補助、口唇の亀裂や荒れの改善です。

海外でもハチミツを薬として使用する国は少なくありません。エジプトでは昔から関節炎や痛風、偏頭痛、外傷、生理痛などの鎮痛目的で、日常的によく使われます。

またハチミツにはビタミンC、B1、B2、B6、K、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、コリンなどが含まれ、天然のビタミン剤とも呼ばれています。

ただし、薬効が期待できるのは、天然の純粋ハチミツに限ります。加糖ハチミツやハチミツシロップ、高温で加熱処理されたハチミツ製品では効果は期待できませんので、ご注意ください。

オリーブ油に多く含まれるオレイン酸には、悪玉コレステロールを減少させ、善玉コレステロールを増加させる働きがあります。また、腸を刺激するため、便秘の改善作用もあります。

そのほか、抗酸化作用のあるビタミンEβ-カロテン、骨粗しょう症予防に効果のあるビタミンKも含まれています。

レモン玉ねぎはそのまま食べてもよいですし、野菜や海藻類と合わせてサラダにすれば、より多くの栄養成分を摂取することができます。

魚料理、肉料理の付け合わせにもなるので、献立の栄養バランスを整えるのに役立ちます。

日々の食事は健康を守る薬でもあります。普段の食事にレモン玉ねぎを取り入れて、病気に打ち勝つ体作りに役立ててください。

玉ねぎの効能高血圧、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、高血糖、肥満、むくみ、気の滞り
レモンの効能カゼ、肌荒れ、シミ、ソバカス、ストレス、食欲不振、生活習慣病全般
ハチミツの効能栄養不足、口唇の亀裂や荒れ、痛み全般(関節炎、痛風、偏頭痛、外傷、生理痛など)
オリーブ油の効能高コレステロール、便秘、酸化、骨粗しょう症
レモン玉ねぎで予防や治療が期待できる病気・症状例

5分でできる「レモン玉ねぎ」の作り方

画像1: 5分でできる「レモン玉ねぎ」の作り方

【材料】
玉ねぎ…1個(250gくらい)
レモン…1個(市販のレモン汁を使う場合は大さじ3)
塩…小さじ1/2
オリーブ油…大さじ2
ハチミツ…小さじ1
※防腐剤や防カビ剤を使っていない国産レモンがお勧めです

画像2: 5分でできる「レモン玉ねぎ」の作り方

【作り方】
皮をむいた玉ねぎを、薄切りにする

画像3: 5分でできる「レモン玉ねぎ」の作り方

レモンは洗って皮ごと薄切りにする。種は除く

画像4: 5分でできる「レモン玉ねぎ」の作り方

①②と調味料をよく混ぜたら完成

画像5: 5分でできる「レモン玉ねぎ」の作り方

【できあがり】
日持ちは冷蔵庫で10日間程度
「辛みや酸味が強い場合は、半日~一晩程度漬けてから食べると、味がまろやかになります」(池上)
「食材の薬効成分をじゅうぶんに摂取するなら、作ってすぐに食べるのがお勧めです」(池上)

■料理/古澤靖子(料理家)

画像: この記事は『ゆほびか』2020年4月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『ゆほびか』2020年4月号に掲載されています。

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