私たちは毎日顔を洗い、洗顔後は化粧水や乳液をつけてお手入れします。足はどうでしょうか。毎日、足をきれいに洗っている人はどれくらいいるでしょうか。ましてや、クリームなどでお手入れしている人は、そう多くはないでしょう。しかし、足を清潔に保ち手入れをするだけで、足の皮膚トラブルの半分は予防できると思います。
【解説】高山かおる(埼玉県済生会川口総合病院皮膚科主任部長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

高山かおる(たかやま・かおる)

埼玉県済生会川口総合病院皮膚科主任部長。東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。1995年、山形大学医学部卒。日本の大学病院では稀有な皮膚科のフットケア外来を開局する。難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪、タコ、ウオノメなどの疾患を抱える患者に対して、トラブルの根治を目指した、原因の追及、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。フットケア師によるフットケア、オーダーメイドのインソール作製などによる免荷療法など、それぞれの専門家と連携を取りながらの保存的治療も積極的に導入している。専門は、接触性皮膚炎、フットケア、美容。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
▼埼玉県済生会川口総合病院(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

「清潔」と「保湿」で改善できる症状も多い

体の一番外側を覆っている皮膚は人間の体を構成するパーツの中で最も大きく、面積は約1・6平方メートル、重さは約3キロもあります。髪の毛も爪も、皮膚が変形したものです。
皮膚は、単に体を覆っているだけではありません。とても大事な役割を5つ持っています。

保護作用=外部からの物理的な刺激や、紫外線、微生物などから体を守る
保湿作用=体内の水分の喪失を防いだり、保持したりする
体温調節作用=外気温に応じて、発汗や血管の拡張・収縮などで体温を調節し、一定に保つ
分泌・排泄作用=汗や皮脂を分泌し、汗とともに老廃物を排泄する
知覚作用=温度覚、触覚、痛覚などによって、刺激を知覚する 

そのほかにも、紫外線を浴びるとビタミンDを生成するといった作用もあります。

皮膚は3層構造になっています。皮膚の一番外側を覆っている表皮は、厚さが平均0・2ミリですが、足裏は厚くて約0・6ミリもあります。表皮は、外側から角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層で構成されており、外からの異物の侵入を防ぐバリア機能を担っています。

表皮の下の真皮は皮膚の本体ともいえる部分で、厚さは約2ミリ。ここから表皮に栄養や水分が供給されます。真皮の約7割はコラーゲンでできており、これが皮膚を支えて、ハリを持たせています。コラーゲンの間にはエラスチンという弾性繊維やヒアルロン酸といった保湿成分があり、肌の弾力やうるおいをもたらしています。

一番下の皮下組織は、大部分が皮下脂肪で、保温や断熱、クッションの役目を果たしています。

画像: 「清潔」と「保湿」で改善できる症状も多い

皮膚の細胞は、表皮の最下層にある基底層でつくられます。皮膚細胞は、細胞分裂をくり返しながら徐々に皮膚表面に押し上げられ、角質層まで到達すると、やがて垢となってはがれ落ちます。皮膚細胞が生まれてからはがれ落ちるまでのサイクルを「ターンオーバー」といい、成人の女性では約28日かかるといわれ、足の皮膚はもう少し長くかかります。

皮膚の健康は、ターンオーバーと保湿で決まります。ターンオーバーが長くなって古い細胞がいつまでも角質層にとどまっていると、角質層が厚くなって角化が進みます。水分が足りなければ乾燥してひび割れしてきます。かかとがガサガサして厚くなったり、亀裂が入ったりするのはターンオーバーがうまくいかず、保湿が足りないからです。足を清潔に保ち、手入れをするだけで、足の皮膚トラブルの半分は予防できると思います。

足の皮膚にトラブルで多いのは、なんといってもタコ・ウオノメと、水虫(白癬)です。タコ・ウオノメは日常的には困りませんが、靴に当たって痛い場合には治療が必要になります。水虫は白癬菌という菌による感染症ですから、治療が必要です。

タコ・ウオノメを侮るなかれ

足の変形や姿勢の悪さが背景に

タコ・ウオノメの原因は、多くの場合、骨の異常や姿勢の悪さにあります。外反母趾などの変形があると、足が靴に圧迫され、同じところがこすれたり押されたりします。それが原因でタコ・ウオノメができるのです。さらにその原因をさかのぼれば、間違った歩き方や立ち方、靴の問題などが浮上してきます。

足の指や指のつけ根あたりの皮膚が増殖し、硬く厚くなったものが、タコ・ウオノメです。タコとウオノメは、どちらもできるメカニズムは同じで、できる場所によって区別されます。

画像1: 足の変形や姿勢の悪さが背景に

足に変形があったり、合わない靴を履いたりして、同じところが長時間圧迫されて摩擦を受けていると、皮膚はその刺激に対して防御反応を起こします。表皮の一番外側の角質層が、ケラチンというたんぱく質を余分に作り出し、圧迫や摩擦を受けているところを厚く覆って守ろうとするのです。

その角質の増殖が、硬い骨の上にできるものがタコで、骨と骨の間のような軟らかいところにできるものがウオノメです。タコは外側に向かって厚く増殖し、ウオノメは骨と骨の間を内側に向かって食い込むように増殖していきます。
タコやウオノメは、靴に当たったり圧迫されたりしている部分ならどこにでもできますが、そのできる場所によって原因も特定できます。

画像2: 足の変形や姿勢の悪さが背景に

【タコ】 黄色味を帯びて盛り上がってくる

タコは、医学的には胼胝(べんち)といいます。同じ場所に圧力や摩擦がくり返し起こることで、角質層が厚く硬くなり、黄色みを帯びて盛り上がっていきます。骨の上の比較的広い面にでき、皮膚の外側に向かって厚くなります。

痛みはありますが、そんなに強いものではありません。どちらかといえば、感覚が鈍くなっている感じです。ただし、長時間歩いたりすると、炎症を起こして熱く焼けるような痛みを感じることがあります。

タコは足の裏の、足の第1指や第5指のつけ根や、第2指や第3指の中足骨頭部によくできます。足の第1指やそのつけ根(母趾球)にできるタコは外反母趾、第5指のつけ根(小趾球)にできるタコは内反小趾の疑いがあります。タコはウオノメに比べてできにくいですが、そのぶん、治るのにも時間がかかります。

【ウオノメ】 真ん中の芯が神経に当たって痛む

骨と骨の間や関節のくぼみなど、奥に食い込みやすい場所の角質が増殖して、ウオノメをつくります。日本ではウオノメ、ドイツでは「鶏の目」と呼ばれるように、目の形に似ており、医学的には「鶏眼(けいがん)」といいます。タコに比べると小さく、真ん中に芯(核)ができるのが特徴です。

ウオノメは皮膚の内側(真皮内)に向かってくさび形の点になって肥厚し、やがて芯をつくります。この芯が神経のある真皮層に達するため、外部からの刺激を受けると飛び上がるほど痛くなります。

ウオノメは、足の裏の指のつけ根の間や、甲側の足指によくできます。ハンマートゥ、開張足、内反小趾など、足の変形がベースにあり、足が靴に当たって圧迫や摩擦を受け続けるとできます。

タコ・ウオノメの予防と対策

タコもウオノメも、骨格の変形に伴う病変です。外反母趾や内反小趾、ハンマートゥといった骨の異常があると、地面から受ける圧力が過度になったり、靴に当たりやすくなったりして、タコやウオノメができます。

厚くなったタコやウオノメを削る治療もありますが、痛みを緩和する対症療法にすぎません。原因は、足に圧迫や摩擦がかかっていることですから、削るよりも、まず除圧をして圧迫や摩擦を取り除きます。

タコやウオノメは、できる場所によってある程度原因を推測できますから、その対策が根本治療になります。足に合わない靴が原因なら、靴を替えたりして、歩き方や靴の履き方も見直します。外反母趾や内反小趾が原因なら、それぞれに応じた対応が必要になります。

インソールや保護パッドで除圧する

症状が軽いうちなら、その部分にタコ・ウオノメ用の保護パッドを貼るといいでしょう。圧迫や摩擦を防いで、痛みを取ってくれます。

痛みがあって歩くのも大変なら、インソールを靴に装着して、病変部にかかる圧力を分散させます。圧力のかかる部分の負担を軽減し、痛みを緩和します。既製品もありますが、症状がひどい場合は、自分の足の状態に合わせてオーダーメイドするといいでしょう。また、足を保護したり、足にかかる負担を軽減したりするコンフォートシューズもおすすめです。

水虫は塗り薬で根気よく治す

水虫は大きく分けて3タイプ

水虫は、白癬という真菌(カビ)が足の角質層に寄生して起こる皮膚の感染症です。爪に寄生すると、爪白癬(爪水虫)になります。白癬菌は、髪の毛や爪、皮膚の角質などにあるケラチンというたんぱく質を栄養源にして増殖するカビで、体のどこにでも寄生します。

ひと言で水虫といっても、ジュクジュクするもの、ガサガサになるもの、皮がむけるもの、かゆいもの、かゆくないものと、いろいろです。大きく3つのタイプに分かれます。

❶趾間型 足指の間に感染するもので、足の第3指と第4指の間によくできます。赤く腫れて水疱ができ、皮がむけたり、ジュクジュクしてふやけたりします。また、指の間がむずがゆくなります。

❷小水疱型 足指の間や指の腹、足裏、足裏の縁などにできる水疱を伴う水虫です。水疱が集まって赤くなることもあり、強烈なかゆみがあります。

❸角質増殖型 足裏が乾燥して厚い角質に覆われたり、かかとが硬くガサガサになったりします。皮がむけたり、ひび割れて痛みを伴ったりすることがありますが、かゆみはありません。

かゆくない水虫に注意!

水虫は一般にかゆいと思われていますが、角質増殖型のようにかゆみのないものもあります。かゆみを伴うものでも、菌に慣れて慢性的な水虫になると、かゆみはなくなります。そのため、水虫に気付かなかったり、治ったと思って知らずに人にうつしてしまったりすることがあります。

白癬菌は、温度20℃以上、湿度60%以上の高温多湿の環境を好みます。また、汗や汚れが残っているアルカリ性の皮膚も、白癬菌が繁殖しやすい環境です。伝染力は弱く、成長も遅い菌ですが、丈夫で、人の体から離れても6ヵ月以上生き延びるといわれています。ですから、いったん皮膚に寄生するとなかなか離れません。水虫が治りにくいのは、そのためです。

また、白癬菌は皮膚からはがれ落ちた角質のなかでも生きていますから、素足で踏んだりすると菌が付着します。公共施設のスリッパ、温泉やスポーツジムの床、バスマット、じゅうたん、たたみなど、どこででも感染の可能性があります。

水虫の予防と対策

水虫は、うつさない、うつされないことが大事です。不特定多数の人が集まるところでは、素足にならないこと。そういうところに行ったら、その日のうちに足をきれいに洗ってください。

よく、「ブーツを履いていると水虫になる」と思っている女性がいますが、ブーツだけでは水虫になりません。水虫は白癬菌による感染症ですから、うつされなければ大丈夫。また、菌が付着しても洗えば落ちますから、毎日足を洗って清潔にしていれば、水虫をぐことができます。

水虫には、薬物治療を行います。今は薬で根治できるようになりました。水虫の治療は、抗真菌薬の外用薬が中心です。白癬菌を殺菌し、増殖を防ぎます。薬にはクリームタイプ、軟膏タイプ、液体タイプ、パウダースプレータイプなどがありますから、症状に合わせて使います。

薬の塗布は、皮膚に浸透しやすいお風呂上がりがおすすめです。きれいに洗ってよく水分を拭き取り、患部を中心に広めに塗布します。塗布したあとの手は、石けんでしっかり洗ってください。

水虫の治療は、根気が必要です。角質層が完全に入れ替わるまでの1〜2ヵ月以上は薬を続けてください。角質増殖型や爪白癬(爪水虫)は、さらに長い期間の治療が必要です。

乾燥がトラブルを誘発する

足裏が乾燥すると、かかとや指先を中心に角質層が異常に厚くなります。これを「角質肥厚(角化)」といいます。角化が進むと足裏はさらに乾燥しやすくなり、ひび割れやあかぎれといった皮膚の亀裂が生じやすくなります。

足は顔や手に比べて乾燥しやすい

空気が乾いていたり、冷暖房がきいている部屋に長くいたりすると、皮膚は乾燥しやすくなります。特に、足は血液やリンパ液の流れが滞りやすく、新陳代謝が悪いため、顔や手に比べると乾燥しやすいのです。

皮膚が乾燥すると、少しの刺激でもかゆみが出たり、角質のバリア機能が低下したりして、皮膚のトラブルが起こりやすくなります。かかとの角化も、その1つです。

足裏は全体重を支えるところですから、角質層がもともと厚くできています。特に、足を圧迫する靴を長時間履いていると、足は刺激を受けやすく、足裏が角化しやすくなります。

さらに、そこに開張足や扁平足があると、姿勢や歩き方のバランスが崩れて、足裏の一部分に体重がかかり、角質層が厚くなります。角質層が厚くなると、角質層でつくられる水分や脂分が全体に行き渡りにくくなり、さらに乾燥が進んで角質は厚くなります。その状態を放置すると、角化した部分がすじ状にひび割れたり、亀の甲羅模様のような割れ目が入ったりしてきます。

ひび割れから感染症を起こすことも

硬くなった鏡餅がひび割れやすいように、乾燥して硬くなったものに衝撃を加えると、ひびが入りやすくなります。かかとも同じです。

歩くたびに角化した足裏へ衝撃が加われば、ひび割れしやすくなります。悪化すると深く亀裂が入り、出血や炎症を起こしたりすることがあります。こうなると、歩くたびに痛み、改善も容易ではありません。

特に糖尿病の人の場合、亀裂が深くなったところから感染症になると、足の潰瘍や壊疽を起こします。足の切断にいたることもあるので、普段から足の乾燥や角化を防ぐ手入れが必要です。

乾燥・角化の予防と対策

まずは足の保湿が第一です。乾燥の軽いうちから、皮膚を保護、保湿するために、クリームをたっぷり塗ります。足が冷えやすい人は、血流をよくして温める作用のあるビタミンD配合のクリームをつけるといいでしょう。

角化症の治療は、角質溶解剤(尿素軟膏10〜20%、サリチル酸5〜10%)を外用します。尿素軟膏は水分保持量を増加させたり、角質を軟らかくして角化した角質層を取り除いたりして、皮膚をなめらかにします。サリチル酸にも、皮膚の角化を軟化させる作用があります。
ひび割れや亀裂がある場合は、それに加えて亜鉛華単軟膏、ハイドロコロイドなどの創傷被服剤を処方することもあります。

[別記事:医師が教える足のセルフケア→

なお、本稿は『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

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