解説者のプロフィール

山口勝利(やまぐち・かつとし)
1962年、神奈川県生まれ。理学博士。柔道整復師。鍼灸師。全国冷え症研究所所長、冷えを改善しながらやせる形状記憶型ボディメイクサロン・シェイプロック銀座代表。2003年、社会文化功労賞を受賞。『死ぬまで元気でいたければとにかく内臓を温めなさい』(アスコム)、『冷え症治してキレイにやせる』(二見書房)など著書多数。
気づかないだけで体が冷えている人は多い
[別記事:「ショウガみそ汁」こそ最強の冷え撃退食→]
私は全国冷え症研究所の所長として、この24年間で、6万人を超える冷え症の人の治療や研究に取り組んできました。
ひとくちに冷え症といっても、その原因や症状はさまざまです。「手足が冷たくて眠れない」「下半身が冷える」という人は、体の末梢の血管が収縮し、手足にまで血液がじゅうぶんに届かないことが原因です。
反対に、手足は温かいのに、本人は「全身が冷えてたまらない」というケースもあります。このタイプは、皮膚表面の血管が拡張し、体の熱がどんどん放散されるために冷えが生じています。
さらに、本人には冷えの自覚はありませんが、深部温度計で内臓の温度を測ると、実は内臓がとても冷えているという人も、近年、急増しています。こうした「内臓の冷え」を放置すると、免疫力や代謝が低下し、さまざまな体調不良につながるので、要注意です。
これら、あらゆるタイプの冷え症の改善に効果的なのが、みそ汁にショウガを入れて食べる「ショウガみそ汁」です。
ショウガは「体を温める食材」の代表格であり、漢方薬の約7割に配合されているほどの万能薬です。
ショウガには、「ガラクトン」などの芳香成分や、「ジンゲロール」「ショウガオール」などのからみ成分が含まれます。これらが、新陳代謝を活発にして、体温を上げたり、血液を体の隅々まで巡らせたりするのです。
一方、大豆の発酵食品であるみそも、体を温める食材です。ビタミンEやアミノ酸を含み、悪玉コレステロールを抑制するリノール酸やサポニンも豊富です。血液がサラサラになり、動脈硬化を予防する効果も期待できるでしょう。
つまり、ショウガみそ汁は、体を深部から温めるとともに、血管を柔軟に保ち、血液を末端まで行き渡らせる「血流改善食品」なのです。
冒頭で説明した通り、冷え症には、さまざまな要因が考えられますが、大きくは体温調節と血流の2つが関係しています。両方にアプローチするショウガみそ汁は、どのタイプの冷え症にもお勧めできる「最強の冷え対策」といえます。
めまいや頭痛が解消!花粉症もほぼ消失
ショウガみそ汁の効果を示す研究成果の一つを紹介しましょう。
私は、6万人を超える冷え症の人の体温データを取ってきましたが、なかでも、低体温を自認する100名の体温変動を計測したデータには、興味深いものがありました。
ほとんどの人は、日中の体温が36℃以上あり、決して平熱が低いわけではありません。ところが、朝と夜に、体温が1.5℃以上も下がるのです。ちなみに、健康な人でも、活動する日中に体温が高く、夜になると体温が下がりますが、その変動幅は1℃以内です。
さらに、こうした体温の変動幅が大きい人ほど、肥満や便秘、不眠、体のだるさ、耳鳴り、めまい、関節痛など、さまざまな不調に悩まされていることもわかりました。
体温の調節は、自律神経(内臓や血管の働きを調節する神経)がつかさどる領域です。体温の変動幅と体調不良に相関があることから、これらの人たちは、自律神経のバランスが乱れていると推測されます。
ですから、朝晩の体温が上がって変動幅が小さくなれば、自律神経が整い、冷え症に伴う不調も改善していくのではないか、と考えました。
そこで、低体温を自認するかたがたに、ショウガみそ汁を2週間、飲んでもらったのです。
その結果、ほとんどの人の体温が、朝晩で上昇。2週間で効果がなかった人も、3週間後には「体が温かくなった」と報告してくれました。
ですから、目安として3週間は続けてください。その後もショウガみそ汁を継続した人たちは、冷えに伴う体調不良も改善しています。
例えば、20年来のリウマチに苦しんできたAさん(77歳・女性)は、ショウガみそ汁を毎日とるようになってから、体のこわばりが軽減。「体を楽に動かせるようになった」と喜ばれています。
そのほか「長年の慢性便秘が解消した」「夜中、トイレに起きなくなった」「ひざの痛みが消え、正座ができるようになった」「耳鳴りが消えた」「花粉症の症状がほぼ消失」など、さまざまな効果を実感したという報告が多数寄せられています。
太りにくい「やせ体質」になる!
ショウガみそ汁を常食することで、内臓の冷えが取れ、体温が上昇します。体温が1℃上がると代謝が11〜12%上昇するといわれているので、太りにくい「やせ体質」作りにも役立ちます。
私自身も、特別な運動もせず、ショウガみそ汁をとっていただけで健康的に12kgものダイエットに成功しました。71.5kgあった体重が、6カ月間で59kgになったのです。

ショウガみそ汁で12kgやせて若返った山口先生!
ショウガみそ汁は1日1〜3回、食事の際にとります。
みそ汁1杯に、おろしたショウガを約15g(親指の第1関節くらいの量)を加え、熱いうちにとります。体温の下がる朝や夜にとると、効果的です。
みそ汁はインスタントでかまいませんし、ショウガもチューブ入りや、まとめておろしたり、薄切りにしたものを冷凍保存したものでもOKです。
たいせつなのは、毎日継続してとること。自分が続けやすい方法で毎日ショウガみそ汁をとり、冷えを撃退しましょう。
[別記事:「ショウガみそ汁」こそ最強の冷え撃退食→]
体を深部から温めると関節痛や頻尿の悩みも解決
私は、1997年に全国冷え症研究所を設立し、以来、冷え症の治療と研究に専念してきました。
冷え症対策として、これまでにたくさんの手法や食品の開発にあたってきましたが、その中でも最も優れたものの一つが「ショウガみそ汁」です。
ショウガもみそも、体を温める作用に非常に優れています。その両方が一度にとれるショウガみそ汁は、体を深部から温めてくれるので、内臓とその周辺の筋肉の働きを活性化し、体をとても温めてくれるのです。
その結果、冷えからくるさまざまな不調を改善します。具体例を挙げれば、不眠、便秘、夜間頻尿、関節痛、ひざ痛、リウマチ、めまい、耳鳴りなど。
そうした症状が改善した人々の喜びの声を、ここにいくつかご紹介しましょう。
冷えからくる夜間頻尿に悩んでいたTさん(54歳・女性)は、夜中に2〜3回、トイレに起きていたといいます。平熱は34℃台という低体温で、夏でも使い捨てカイロが手放せませんでした。
そこで、ショウガみそ汁を朝晩とったところ、平熱が1℃以上、上がり、朝までグッスリ眠れるようになりました。
腰やひざの痛みが消えた!
関節痛が改善した人もたくさんいらっしゃいます。
Sさん(77歳・男性)は、床にひざをつくと、ひざと腰に激痛が走っていましたが、朝晩ショウガみそ汁をとったら、2週間後には痛みが軽くなり、2カ月後にはひざ痛も腰痛もほぼなくなったそうです。
Nさん(62歳・女性)は、40代の頃、ひざを骨折して以来、ずっと痛みに悩まされてきました。ところが、ショウガみそ汁を毎日とるようにしたところ、ひざ痛が消え、正座が楽にできるようになったといいます。
このように関節痛が改善した理由は、ショウガの香りに含まれている「ガラノラクトン」という成分の消炎作用と血行促進作用によるものでしょう。
また、Oさん(63歳・女性)は、慢性的なひどい便秘に悩まされていました。便がカチカチにかたくなっているために、どんなにいきんでも肛門の手前で止まってしまっていたそうです。
それが、ショウガみそ汁をとり始めてから、スルリと便が出るようになりました。これは腸の粘膜の血流が増加したことで、栄養や水分が行き渡り、蠕動運動(便を先に送る動き)が正常化したことで便秘が解消したと考えられます。
また、ショウガみそ汁でダイエットに成功した人もいます。
Iさん(32歳・女性)は、食事制限をすることなく、ショウガみそ汁をとっただけで、5kgの減量に成功。足が細くなり、おなかのぜい肉も取れたと喜んでいます。
私自身も、12kgのダイエットに成功したお話を先述しましたが、その間は大好物のアイスクリームを毎晩欠かさず食べ、特別な運動はしていませんでした。それなのにしっかりやせ、リバウンドは今もしていません。
むくみが解消しカゼも引かなくなった

メガネなしの生活を送れるようになった!血糖値が下がり、夫がおだやかに
体温が上がることで自律神経のバランスが整い、めまいや耳鳴りが治ったり、視力が回復したりしたかたもいます。
Kさん(68歳・女性)は足がしびれるほど冷たく、めまいや頭痛に悩んでいました。しかし、ショウガみそ汁を飲み始めてからは体が温まり、めまいと頭痛が解消しました。さらに飛蚊症の症状が消え、老眼や乱視が改善し、メガネが不要になったそうです。
Mさん(40代・主婦)は、ショウガみそ汁によって夫の高かった血糖値が下がり、イライラすることが減ったことに驚いたと言います。
Mさん自身は、夕方になるとむくんでいた足がむくまなくなり、子どもたちがカゼを引かなくなったことで効果を実感しています。
Nさん(55歳・女性)は、10年以上前からショウガみそ汁を飲み続けていて、ブログで冷えの改善法として紹介しています。
毎日1杯のショウガみそ汁をとるようにして、2週間後に体温を測ってみると、36.1〜36.2℃くらいだった平熱が、36.9℃まで上がっていたそうです。
血流がよくなったため、手足の冷えも感じなくなり、体が軽く感じられるようにもなりました。立ったり、座ったり、物を運んだり、体を曲げたり伸ばしたりといった動作が、以前よりスムーズになったそうです。
「カゼを引きそう」というときもショウガみそ汁が効果的で、薬を常備しなくても健康を維持できていると言います。
このように、ショウガみそ汁を食事に取り入れることで、体が変わったかたがたくさんいます。ぜひあなたも、簡単に作れるショウガみそ汁で冷えを改善し、体を整えてください。
[別記事:「ショウガみそ汁」こそ最強の冷え撃退食→]

この記事は『ゆほびか』2020年4月号に掲載されています。
www.makino-g.jp