解説者のプロフィール

関由佳(せき・ゆか)
内科医、みそソムリエ、野菜ソムリエ、メディカルフード研究家。専門は予防医学、栄養療法。アメリカのZONEダイエットに出会い、食事で血糖値をコントロールする方法を学ぶ。現在は岡山大学大学院で腸内環境と発酵豆の研究をしながら、オンラインで21days challenge programの監修医師を担当。ニューヨークでみそソムリエを取得し、メディカルフード料理研究家としても活動している。『毎日食べたい! 腸活みそレシピ』(海竜社)など著書多数。
体調不良やうつもショウガみそ汁で予防
「健康な体と心は食べ物で作られる」をモットーに、私は予防内科医として活動しています。万病の元と言われる冷えも、もちろん食事で予防できます。
冷えを撃退する最強食品として私がお勧めするのが、ここでご紹介する「ショウガみそ汁」。みそ汁の具材にショウガを加えるだけで、体を温める効果が何倍にもなるのです。「みそソムリエ」の資格も持つ私が断言するのですから、これは間違いありません。
女性に冷え症が多い理由をご存じでしょうか?女性は、男性に比べて筋肉量が少なくて皮下脂肪が多いため、血流が悪化しやすいからです。冷えを放置すると、「手足が冷えて眠れない」ことにとどまらず、頭痛や関節痛などの痛みとなって現れることもあります。
また、内臓が冷えると、胃腸の働きが落ちて、食欲が低下し、便秘や下痢などの症状につながります。さらに、腸内環境が悪化すると、うつ病を発症しやすくなるというデータもあるほど。そのまま放置してはいけません。
冬でも急に顔が熱くなったり、汗が止まらなかったりと、いわゆるホットフラッシュに悩む更年期の女性は、自分に冷えは関係ないと思っていませんか?
一見、冷えとは無関係のように思われますが、更年期障害の人は、実は内臓が冷えているケースも多く、それによって不調が起こっていることもあるのです。
つまり、どんな世代の人でも不調があるならば、冷えを疑ってみるべきでしょう。
冷えに困る人は色の濃いみそがお勧め
ショウガみそ汁が冷えに効く理由は、いくつもあります。
まず、みそについて簡単にご説明しましょう。みそには、9種類の必須アミノ酸がすべて含まれ、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素も豊富です。ビタミンやミネラルは、血流や代謝がよくなる成分であり、冷え対策には欠かせません。
また、みそは発酵食品なので、含まれる菌が腸内の善玉菌の働きを助け、腸内環境を整えてくれます。その結果、栄養素を吸収しやすくなり、血の巡りがよくなって、冷えの改善につながるのです。
冷えが気になる人は、色の濃い長期熟成の赤みそ(八丁みそ、仙台みそなど)を選ぶといいでしょう。ミネラルが多いので、より体を温める効果が強くなります。
次に、ショウガです。
ショウガは、漢方薬に生薬として使われ、体を温める作用に優れています。生のショウガと加熱したショウガでは、成分が変化し、効能が異なってきます。
生のショウガには、「ジンゲロール」という成分が多く含まれ、殺菌力があり、末梢血管を拡張して手足を温める効果があります。カツオのたたきなど、刺身に生のショウガを添えるのは、生臭さを消すだけでなく、殺菌によって食中毒を予防するという意味もあるのです。
また、加熱したショウガには、「ショウガオール」という成分が多く含まれ、発汗や新陳代謝を促進し、体を芯から温めてくれます。カゼ予防や月経痛の軽減などの効果も期待できるでしょう。
どちらにしろ、みそ汁にショウガを加えると、体がポカポカして全身が温まってくる効果は絶大です。
ショウガは、皮にもポリフェノールなどの栄養成分が含まれているため、できれば無農薬のものを皮ごと使うのをお勧めします。
私が作るのショウガみそ汁では、10分ほど蒸したショウガをスライスして乾燥させたものをよく使っています。ショウガは蒸して干した後、ラップに包めば、冷蔵庫で保存できます(下の図参照)。
手軽なチューブのショウガでショウガみそ汁を作ってもいいのですが、生のショウガと比べると栄養成分は少なくなります。できれば、生のショウガを使いましょう。
蒸しショウガの作り方

10分ほどショウガを蒸して薄切りにし、乾燥させれば完成。
ラップに包んで袋に入れ、冷蔵庫で保存可能(10日程度)。
自律神経も整い糖尿病の改善も期待できる
ショウガみそ汁を飲む頻度は、1日1〜2回がいいでしょう。
朝に飲めば、血行がよくなって1日の早い段階から元気に動けます。夜に飲めば、体がポカポカ温まり熟睡しやすくなるでしょう。
ショウガみそ汁に加えるお勧めの具材は、豚肉です。
血液や筋肉のもととなるたんぱく質を追加できるので、栄養バランスがよくなります。食事後の代謝量が上がるため、体はポカポカと温まるのは必然です。良質のたんぱく質である卵もお勧めです。たんぱく質は肌質の改善効果も期待できます。
また、根菜類(ニンジン、ゴボウなど)も体を温めます。腸が温まると、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌されやすくなり、自律神経も整うでしょう。
高血圧や糖尿病の人は、納豆がお勧めです。納豆には、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きを活発化させ、血糖値を下げる効果があります。
「みその塩分が血圧を上げるのでは」と心配する人がいるかもしれません。しかし、みそは血圧を上げにくいことが研究で確認されています。1日1~2回でしたら、高血圧の人も安心して飲んでください。
体が冷えると免疫力なども低下し、病気にかかりやすくなります。体を温めるショウガみそ汁で、冷えに負けない健康な体を作ってください。
体を最深部から温める!
豚肉・納豆・卵の「ショウガみそ汁」お勧めレシピ
※すべてのレシピで、ショウガはチューブのものやおろしたもの、10分ほど蒸してスライスしたもの、どれでもよい。おろしたショウガは冷凍庫で1週間程度、蒸してスライスしたショウガは冷蔵庫で10日程度保存ができる。
■ショウガ豚汁

【材料】(2人分)
豚バラ肉…80g
ニンジン…50g
ゴボウ…50g
ネギ…1/2本
ゴマ油…小さじ2
だし汁…400㏄
みそ…大さじ2
ショウガ(薄切り)…1片分
青ネギ(2㎝長さに切る)…適量
【作り方】
❶豚バラ肉、ニンジン、ゴボウ、ネギをひと口大に切る
❷鍋にゴマ油を熱し①の材料を炒め、だし汁を加え煮立てアクを取る
❸②に半量のみそを加え、ショウガを入れる。野菜が柔らかくなるまで弱火で15分ほど煮る
❹野菜が柔らかくなったら残りのみそを加える
❺器に盛り、青ネギを散らす
■ショウガ納豆みそ汁

【材料】(2人分)
だし汁…300㏄
納豆(ひき割り)…1パック
ナメコ…1袋
豆腐…1/3丁
みそ…大さじ1と1/2
ショウガ(すりおろし)…1片分
青ネギ(小口切り)…適量
【作り方】
❶鍋にだし汁、納豆、ナメコ、ひと口大に切った豆腐を加え火にかける
❷ひと煮たちしたら、みそを溶き入れ、ショウガを加える
❸器に盛り、青ネギを散らす
■かきたまショウガみそ汁

【材料】(2人分)
ダイコン…100g
シイタケ…2〜3枚
カイワレダイコン…適量
だし汁…300㏄
ショウガ(千切り)…1片分
溶き卵…1個分
みそ…大さじ1と1/2
【作り方】
❶ダイコンは太めの千切り、シイタケは薄切りにする。カイワレダイコンは長さを2つに切る
❷鍋にだし汁、ショウガ、ダイコン、シイタケを入れ火にかける
❸ダイコンが柔らかくなったらみそを溶き入れ、溶き卵を流し入れる
❹器に盛り、カイワレダイコンを添える

この記事は『ゆほびか』2020年4月号に掲載されています。
www.makino-g.jp