ピンと来ないかもしれませんが、生命は電気によって動いています。骨以外の器官が電気を作り出すシステムは実に複雑で、私たちが意図的にどうにかすることは難しいのです。一方、骨は圧力や衝撃を与えるだけで電気が生まれるわけです。【解説】藤澤孝志郎(Dr.孝志郎のクリニック院長・総合内科専門医)

解説者のプロフィール

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藤澤孝志郎(ふじさわ・こうしろう)
Dr.孝志郎のクリニック院長・総合内科専門医。宮崎大学医学部卒業。 東京都多摩北部医療センター、東京都立府中病院等を経て、Dr.孝志郎のクリニックを開院。総合内科と超音波画像診断の幅広い知識を備え、診察に十分な時間をかけるスタイルが特徴。医学教育界のパイオニアとしても知られ、今日までにその講義を聴いて医師になった者は海外医師達も合わせると10万人を超える。代表作の「病態生理講座」、「症候学」、「サマライズシリーズ」は全国70大学以上の医学部で長く親しまれている。

シワやたるみの根本原因は骨にある

[別記事:1日1分「骨たたき」のやり方→

いつまでも元気で過ごしたい、若くいたい。それは人として当然の願いです。医学は、それを実現するために発展してきた学問といえるでしょう。

それはいいのですが、そのために向かってきた「医学の方向性」に、軌道修正を加える時期がきたのではないかと私は考えています。

例えば、シワやたるみです。シワの原因は皮膚にあると思っている方が大半ではないでしょうか。実際、美容皮膚科などでも、シワやたるみには皮膚に対してのアプローチが主に行われています。

しかし、シワの根本的な原因は「骨の縮小」にあります。皮膚の土台である骨が衰えて縮むことで、シワやたるみが起こるのです。

また、厚生労働省によると、介護が必要になる原因の第3位が「骨折」なのだそうです。ちなみに1位は、「関節の障害」です。関節は骨と骨のつなぎ目なので、確かに骨そのものとは別と言えなくはありません。

ですが、実際のところ、「骨の障害」が介護要因の最大の理由と言って差し支えないでしょう。

つまり、骨の衰えがさまざまな弊害を引き起こすのです。逆に言えば、骨を強く丈夫に保つことができれば、人は若さを維持して、さまざまな病気を予防できるのです。

骨が生み出す電気で私たちは動いている

では、どのようにして骨を若く保てばいいのでしょうか。

私たちは歩く、運動をする、掃除や洗濯をするといった日常の行為を通じて、知らず知らずのうちに骨に圧力と衝撃を与えています。

実は、こういった圧力や衝撃を感知すると、骨はマイナスの電気を発生させます。このように、衝撃や圧力を与えると物質が電気を発生させる現象を、「ピエゾ電気効果」といいます。

そもそも、生命は電気によって動いています。ピンと来ないかもしれませんが、私たち人間も、その電気エネルギーで日々の生活を営んでいるのです。

ですから、骨以外の器官でも、電気は作られています。例えば、内臓や皮膚、脳や心臓は、食品に含まれる栄養素から「ATP」というエネルギーを取り出し、そのエネルギーでカリウムという物質を移動させて電気を作ります。

このように、骨以外の器官が電気を作り出すシステムは実に複雑で、私たちが意図的にどうにかすることは難しいのです。

一方、骨は圧力や衝撃を与えるだけで電気が生まれるわけです。そう考えると、いかに骨が優秀な発電機か、お分かりいただけるのではないでしょうか。

こうして骨が作り出した電気は、体を動かすエネルギーとなるばかりか、骨自身の新陳代謝(新旧の入れ替わり)を促進し、骨を強化してくれます。このピエゾ電気効果こそ、骨の威力の真骨頂といえます。

骨が生み出す電気エネルギーこそが、私たちの健康と若さを決定するカギとなるのです。

ピアノ教師をしている母の骨は若い

骨が生み出す電気の力を、いかに効率よく引き出すか。私もその方法をまとめた書籍を出しています(『世界一効率よく若返る!1日5秒骨トレーニング』(ビジネス社))。

骨の「トレーニング」というと大仰ですが、実は骨への小さな刺激でも、大きな効果が得られるのです。例えば、ピアノを弾くこと。

私の母は現在60代ですが、母の骨も年齢以上に強く、しなやかさがあります。母のレントゲン写真を見ても、骨の隙間を表す黒い影がほとんど見られず、骨の状態が非常にいいことが分かります。

そんな母は、実は現役のピアノ教師です。ピアノを弾くことで指先の骨に刺激が加わり、それが母の骨の若さにつながっているのでしょう。

鍵盤をたたくような小さな刺激でも、先述したピエゾ電気効果は十分に得られます。

画像: ピアノやキーボードをたたくといった小さな刺激でも、骨への刺激になる

ピアノやキーボードをたたくといった小さな刺激でも、骨への刺激になる

今は高齢の方もスマホやタブレットを扱うのが珍しくない時代になり、指への「たたく」刺激が激減しています。

だからこそ、たまには意識的にパソコンのキーボードを打ってみる、あるいはピアノなどの楽器に触れてみるなどの、指先への刺激を取り入れてみましょう。これだけでも、ピエゾ電気効果が発生し、頭の回転もよくなります。

このように、日ごろからきちんと骨に刺激を与えていれば、年齢を重ねても元気に過ごすことができます。一方で、骨や脳を何の対策もせず衰えるがままにしていたら、骨折をはじめ、認知能力や全身の免疫力にも重大な影響を及ぼしかねません。

ぜひとも、骨への小さな刺激から、健康を考えていただければと思います。

[別記事:1日1分「骨たたき」のやり方→

画像: この記事は『安心』2020年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年3月号に掲載されています。

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