解説者のプロフィール

オザワエイコ
手づくり調味料研究家。編集者。自家製調味料の仕込み教室「かもしラボ」主宰。2000年頃から自家製みそを仕込み始める。2008年から安全、安心でおいしい素材を求めて家庭菜園をスタート。以来、自分で育てた食材を使った自家製調味料の試作を重ねている。著書に『だからつくる調味料』(ブロンズ新社)がある。
「かもしラボ」http://www.kamoshilabo.com
ショウガと米麹の薬効が一度にとれる調味料
私は、みそ、しょうゆはもちろん、ケチャップ、中濃ソース、ユズコショウ、ラー油、塩みりんなど、さまざまな調味料を自分で作っています。
また、手づくり調味料の講座を開催して、調味料を手づくりする楽しさや、手づくり調味料のおいしさを皆さんにお伝えしてきました。
そんな私が、常備調味料として切らさずに作っているのが、「ショウガ麹」です。ショウガ麹は、塩麹(米麹と塩、水で作る調味料)をアレンジしたものです。
以前は、塩麹にショウガのすりおろしやみじん切りを入れたものを作って、常備していました。しかし、これだと塩辛過ぎたので、いつしかあまり使わなくなっていました。
ショウガは、どの家でも残りがちですよね。私もそうで、料理で使ったショウガが残ることが多く、そのまま保存すると、乾燥してカピカピになったり、逆に傷んだりすることもありました。
そんなあるとき、料理で使ったショウガが余ってしまいました。「どうしようかな」と考えていたとき、塩麹より塩分量を少なくして、水を加えずに、ショウガの水分だけで米麹と合わせた「ショウガ麹」にしてみたらどうかとひらめいたのです。
そこで早速作ってみると、これがおいしくて便利なことを発見!いろいろな料理にも使えますし、余りがちなショウガの利用法にもなって、まさに一石二鳥だったのです。
しかも、ショウガ麹は、時間とともに発酵熟成し、味がなじんで、うま味もどんどん増し、ショウガの辛味もマイルドになって、味わいの変化も楽しめるのです。
また、発酵食品なので、日持ちがします。冬なら常温で大丈夫ですし、冷蔵すれば半年ほどは持ちます。しかも、その場ですぐに料理に使えます。
加えて、ショウガと米麹が一度にとれるので、両方の素材の健康効果も期待できますし、うま味があるので、塩の代わりに使うことで、減塩にも役立つと思います。
冷えがなくなり体力もついた
ショウガ麹は、塩麹ほど塩味が強くなく、ショウガの風味もあるので、肉や野菜にとてもよく合います。
ショウガ麹の一番簡単な使い方は、野菜の即席漬けです。家にある野菜を切って、ショウガ麹でさっとあえて10分ほどおくだけ。おいしい即席漬けが、簡単にできます。
今の季節なら、カブや白菜がおいしいですし、キュウリ、キャベツ、大根など、どれもおいしくできます。
肉料理は、下味にひとさじ加えるだけで、味が決まります。鶏の唐揚げ、肉だんご、ギョーザ、豚肉のショウガ焼きなどがオーソドックスな使い方です。肉に使うと、たんぱく質が分解されるので、肉が軟らかくなり、うま味も引き出されます。
ショウガは、昔から日本人になじみのある食材で、材料を選びません。それに麹のうま味が加わって、味がまろやかになるので、ショウガを使う料理だけでなく、いろいろな料理に合います。
ですから、レシピに「塩」とあったら、その代わりにショウガ麹を使ってみてください。使う量は、味を見ながら、塩と同量から倍量が目安です。
ショウガ麹の作り方は簡単です。すりおろしたショウガ、麹、塩を1:1:0.5の割合で混ぜるだけ(作り方は下記参照)。
作ったらすぐに使えますが、2週間ほど寝かせると、味がこなれてきます。また、時間がたつほど熟成(発酵)が進み、おいしくなります。
ショウガは、皮をむいてもむかなくてもいいですが、皮をむいたほうが、辛味が少なくなります。
ただ、ショウガの処理のしかたは、みじん切りよりも、すりおろしをお勧めします。ショウガ麹は、ショウガの水分だけで仕込むので、みじん切りだと、水分が出てきません。
また、作ったショウガ麹を瓶などに入れるときは、中に空気が入らないように、上からスプーンで押さえ、みっちり詰めます。料理に使うときは、カビや雑菌の繁殖を防ぐために、きれいに洗ったスプーンを使ってください。
私は、毎日のようにショウガ麹などの麹食品をとっているおかげか、長年の冷え症が全くなくなりました。昔は、手足が冷えて、夜の寝付きが悪かったのですが、今はすぐに眠りにつけます。
また、体力もついてきました。夏は、炎天下でよく畑仕事をしますが、熱中症にもならず、夏バテもしません。
ショウガ麹は、講座の生徒さんたちにも好評です。一度作った方は何度もリピートし、常備されているようです。
本当に、あるととても便利なので、ぜひ作ってみてください。食卓が変わりますよ。
簡単!混ぜるだけ!「ショウガ麹」の作り方
レシピ考案・料理・スタイリング/オザワエイコ

【材料】(ショウガ100g分)
ショウガ……100g
塩……50g
米麹(どちらか一方を使用)
・生麹で作る場合……100g
・乾燥麹で作る場合……50g
※スーパーなどで売られているものは、ほとんどが乾燥麹です。
【作り方】
❶米麹の準備をする。

生麹の場合
手でバラバラにほぐす。

乾燥麹の場合
60℃のお湯50ml(分量外)をかけて混ぜ、30分~1時間ほど置いて戻す。
※食べてみて、米麹の芯がなくなっていればOK。戻した後は、だいたい100gになる。
❷ショウガは皮をむいてすりおろす。
※皮をむくのは、辛味がマイルドになるのと、出来上がりの口当たりがよくなるため。気にならなければ、皮をむかずにすりおろしてもよい。


❸①と塩を合わせてよく混ぜる。


❹②と③を合わせてよく混ぜる。


❺清潔な保存瓶に、空気が入らないように、上から押しながら詰める。ふたをして、冷蔵庫で保存し、発酵熟成させる。

▲作りたてのもの。

▲1ヵ月ほどたったもの。色が濃くなり、うま味も増している。
※塩の代わりに料理に使うとよい。量は、塩の量と同量~倍量程度が目安。
※作ってすぐに使えるが、2週間ほどおくと、味がこなれてくる。
※保存中に混ぜる必要はない。
※冷蔵庫で6ヵ月保存可能。
「ショウガ麹」活用レシピ
ショウガ麹鶏だんごと白菜のクリーム煮

【材料】(2人分)
[だんごだね]
鶏ひき肉……100g
長ネギ(みじん切り)……5cm分
ショウガ麹……小さじ1
片栗粉……小さじ2
[具]
ハクサイ(ざく切り)……50g
シメジ(小房に分ける)……1/4パック分
赤パプリカ(薄切り)……1/8個
水……300㎖
鶏ガラスープの素……小さじ2
豆乳……100㎖
塩・コショウ……各適宜
【作り方】
❶だんごだねの材料を合わせて練る。
❷鍋に水を入れて煮立て、①を一口大に丸めて入れ、中火で加熱する。アクが出たら取る。
❸①に火が通ったら、具の材料と鶏ガラスープの素を加え、ふたをして中火で火を通す。水分が少なめなので、こげないように注意する。
❹具に火が通ったら豆乳を加え、塩・コショウで味を調える。ひと煮立ちさせたら出来上がり。
ショウガ麹そぼろのアジア風めん

【材料】(2人分)
[肉そぼろ]
豚ひき肉……150g
ショウガ麹……大さじ1
しょうゆ……大さじ2
みりん……大さじ2
[たれ]
ゴマ油……大さじ2
しょうゆ……小さじ2
オイスターソース……小さじ1
ナンプラー……小さじ2
干しエビ(刻む)……小さじ1/2
中華めん(生)……2玉
パクチー(ざく切り)……1/2袋分
長ネギ(白髪ネギにする)……1/4本分
クルミ(砕いておく)……小さじ1
【作り方】
❶肉そぼろの材料を全て鍋に入れ、菜ばし4本で混ぜながら中火にかける。ダマにならないように素早く混ぜつつ、肉がポロポロになり、水分が飛ぶまで加熱して、そぼろを作る。
❷たれの材料を混ぜ合わせておく。
❸中華めんをたっぷりのお湯(分量外)でゆで、水洗いして水気をしっかり切ったら、②であえて器に盛る。
❹③に①、パクチー、長ネギ、クルミをのせる。全体を混ぜながらいただく。
ショウガ麹ドレッシングの和風サラダ

【材料】(2人分)
木綿豆腐……1/4丁
アボカド……1/2個
ミニトマト……4個
キュウリ……1/2本
芽ヒジキ……大さじ1
ミックスビーンズ……100g
[ドレッシング]
ショウガ麹……小さじ1と1/2
しょうゆ……小さじ1
サラダ油(またはゴマ油)……大さじ1
酢(またはレモン汁)……大さじ1
タマネギのみじん切り(水にさらして絞っておく)……大さじ1
〈作り方〉
❶木綿豆腐は水切りして1cm角に切る。アボカドは種を取って皮をむき、1cm角に切る。ミニトマトは4つ割りにし、キュウリは角切りにする。芽ヒジキは水(分量外)で戻し、水気をよく切っておく。
❷ドレッシングの材料を全て混ぜ合わせる。
❸ボウルに①とミックスビーンズを入れ、②であえる。
ショウガ麹と酒かすのクラッカー

【材料】(作りやすい分量)
小麦粉……10g
酒かす(あれば)……10g
ショウガ麹……15g
サラダ油……大さじ2
水……大さじ2~3
砂糖……適宜
【作り方】
❶ボウルに小麦粉を入れて手でぐるぐる混ぜ、ふわっと空気を含ませる。
❷①に酒かす、ショウガ麹、サラダ油を加え、手で酒かすをつぶしながらぐるぐる混ぜる。粉と油のかたまりがポロポロしてきたら、両手をすり合わせるようにして、かたまりをほぐしながら混ぜる。
❸生地に油がなじんだら、生地の硬さを見ながら水を少しずつ全体に振り入れ、手でぐるぐる混ぜる(この時点で生地がベタベタしていても大丈夫)。
❹③をまな板などの台に出し、半分に切って上に重ね、手の甲で軽く押してなじませる。生地の向きを90度ずつ変えながら、同じ工程を3~4回くり返す(この工程で、クラッカーに層を作る)。
❺④をめん棒で2mmの厚さに伸ばし、好みの型で抜くか、好きな形に切る。フォークで適宜穴を開け、半分は好みで砂糖を上に振る。
❻天板にオーブンシートを敷いて⑤を並べ、170~180℃のオーブンで、20~25分ほど、焼き色がつくまで焼く(こげやすいので注意)。取り出して、天板の上で冷ます。

この記事は『安心』2020年3月号に掲載されています。
www.makino-g.jp