解説者のプロフィール

石原新菜(いしはら・にいな)
1980年長崎県生まれ。イシハラクリニック副院長。2006年帝京大学医学部卒業後、同大学で2年間の研修医を経て、現職。漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療に当たる。クリニックでの診察のほか、講演、テレビ、ラジオなど幅広くメディアでも活躍。著書に『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム)など多数。
ショウガの多彩で優れた薬効は確認済み!
当院には、さまざまな不調を抱える患者さんがいらっしゃいますが、皆さんに共通しているのが、「体の冷え」です。
体が冷える大きな原因は、誤った食習慣です。食べ過ぎや、水分のとり過ぎのほか、白砂糖たっぷりのお菓子などは、冷えの要因となるので要注意です。
患者さんの多くは、体温も低く、35度台のかたも珍しくありません。そうした状況を受けて、私は皆さんに、体を温めることの重要性を説き、食生活の見直しを指導しています。
そのなかで、皆さんに強くお勧めしているのが「ショウガ」です。ショウガは、体を温める最強の食材といっても過言ではありません。
体を温める薬効をもたらすのは、ジンゲロールやショウガオール、ジンゲロンなどの辛み成分です。あのショウガ特有の辛みには、血管を広げて、血行をよくする作用があります。
さらに、ジンゲロールには、血液中の中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを減らす作用があり、動脈硬化の予防・改善にも有効です。
つまり、ショウガは、血管を広げて、さらにきれいにしてくれる作用があるわけです。この働きで、冷えが取れていき、さまざまな症状が改善していくのです。
ショウガの薬効は、それだけではありません。殺菌作用、アレルギーや炎症の抑制作用、血圧や血糖値の降下作用など、多彩な効果が確認されています。
漢方の世界でも、ショウガは非常に重宝されています。当院では、約150種類の漢方薬を扱っていますが、その7割以上に生薬(漢方薬の原材料)として、ショウガが含まれています。
ショウガには、それだけ優れた薬効が認められているということです。
皮つきのすりおろしを熱いうちに入れよう!
私も、日々の食生活で、ショウガを積極的に取り入れています。生のショウガなら、毎日100~150gは食べているでしょうか。皆さんに驚かれますが、ショウガはそれだけ使いやすいのです。
摂取量の目安は、1日に20~30gで十分でしょう。とはいえ私のように食べ過ぎても問題ありません。FDA(アメリカ食品医薬品局)の発表では、「ショウガは副作用のないハーブ」とされています。
私自身、ショウガのおかげで、体はいつもポカポカ。平熱は37度前後で、毎日絶好調です。
効果的なとり方としてお勧めなのは、生のショウガを、皮つきのまますりおろして使うこと。有効成分は、皮との境目に集中しているからです。
私の場合は、すりおろしたショウガを紅茶に入れて飲んだり、みそ汁に入れて「ショウガみそ汁」にして食べたりしています。
みそ汁も、最近、生活習慣病の予防・改善に役立つ、老化を防ぐ、ガンのリスクが下がるなど、さまざまな健康効果があると注目を集めています。
また、ショウガと同じように、血管拡張作用や、コレステロールを減らす効果も期待できます。冷えを取り除くという点で、ショウガみそ汁は、最高の組み合わせといえるでしょう。
みそ汁に入れる分量は、生のショウガを親指1本分くらい(10~20g)が目安です。ショウガを入れるタイミングは、お鍋で煮込んでいる途中でも、お椀によそったあとでも、いつでも構いません。
ただし、みそ汁がなるべく熱いうちに、ショウガを入れるようにしてください。なぜなら、辛み成分であるジンゲロールは、加熱することでショウガオールに変わり、体の芯から温める力を発揮するからです。
生のショウガをすりおろすのは大変だという人は、もっと手軽に、チューブ容器に入った生ショウガを使ってもいいでしょう。添加物が含まれていますが、まずは継続して摂取することが大切です。
ちなみに、患者さんにショウガをお勧めすると、「私は胃が弱いから食べられない」というかたが意外と多くいらっしゃいますが、それは誤解です。ショウガには、健胃作用もあるので、胃腸が弱い人にこそ食べていただきたい食材です。
ぜひ、毎日の食生活にショウガを上手に取り入れて、冷えを撃退しましょう。
ショウガみそ汁の作り方
【材料】(2人分)
・ショウガのすりおろし…10~20g
・みそ…大さじ1/2
・だし汁…300ml

【作り方】
◎みそ汁を飲む直前に、ショウガを加える。
※できるだけみそ汁が熱いうちにショウガを入れる。
※ショウガは乾燥させた物や、チューブ状の商品でもよい。
[別記事:ショウガみそ汁で手足ポカポカ! 脂肪の燃焼を促進してやせる効果も→]

この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。
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