寒天の食物繊維は便秘を解消するだけではなく免疫力を高め、カリウムやカルシウム、マグネシウムも含まれるため、降圧効果や骨粗鬆症予防も期待できるのです。また、みそ汁を1日3杯食べると乳ガンの発生率が40%低下するというデータを厚生労働省が発表しています。【解説】鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

鎌田實(かまた・みのる)
1948年、東京生まれ。東京医科歯科大学卒業後、諏訪中央病院医師として、患者の心のケアも行う地域一体型医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。諏訪中央病院院長を経て、現在は名誉院長。日本チェルノブイリ連帯基金理事長、日本・イラク・メディカルネット代表、地域包括ケア研究所所長、東京医科歯科大学臨床教授。『鎌田式「スクワット」と「かかと落とし」』(集英社)など、著書多数。

免疫力を高めて体内の慢性炎症を防ぐ

46年前、私が、長野県茅野市の諏訪中央病院に赴任したとき、住民の皆さんは健康とはいいがたい傾向にありました。特に、脳卒中による死亡率はとても高い数値でした。

その状況を受けて、私は地域のかたと健康づくりの活動を始めました。その当時、塩分の摂取量を調べると、1日に18gもとっている人が多くいることに驚いたものです(1日の塩分摂取量の目安は、男性は8g未満、女性は7g未満)。

ちなみに、長野のみそ汁は、塩分が1杯1.8gくらいありました。全国一般の家庭では、1.2gくらいといわれているので、とても高い数値です。

しかし、そんな状況でも、「みそ汁を食べることをやめましょう」という気にはなれませんでした。多くの健康効果が期待できるみそは、ぜひとってほしい食品だったからです。

そこで提案したのが、具だくさんみそ汁でした。

野菜をたっぷり入れることで、その分、汁気を減らすことができます。必然的に塩分量も減り、半分以下の0.7gまでになったのです。しかも、野菜にはカリウムが豊富な物が多く、ナトリウムの排出を促し、降圧効果も期待できます。

具だくさんみそ汁は、健康づくり活動を大きく前進させる力となりました。そこに、さらに貢献したのが寒天です。

茅野市は、棒寒天の生産地です。昔ながらの製法で、自然の寒気を利用して、テングサなどの海藻を凍結乾燥させて作っています。この寒天をみそ汁に加えた「寒天みそ汁」は、すばらしい健康効果があるのです。

まず、寒天の食物繊維の含有量は、全食品中のトップです。食物繊維は便秘を解消するだけではなく、腸内環境を改善し、免疫力を高める効果をもたらします。

さらに寒天は、ミネラルも豊富で、カリウムカルシウムマグネシウムも含まれています。降圧効果のほか、骨粗鬆症予防も期待できるのです。

また、寒天を継続して食べると、コレステロールを下げ、血糖値が上がりにくくなるとされています。体内の慢性炎症を防ぐことに加えて、動脈硬化や認知症などの予防にも役立つと考えられます。

一方のみそにも、優れた効能があります。気になる塩分ですが、共立女子大の研究では、1日3杯食べる人も、1日1杯の人も、血圧の変化に違いはなかったというデータが報告されています。みその塩分は、ほかの料理の塩分よりも、血圧への悪影響が小さいのです。

さらに、みそ汁を1日3杯食べると、乳ガンの発生率が40%低下するというデータを、厚生労働省が発表しています。

卵やサバ缶を加えればたんぱく質補給に役立つ

こうして健康づくり運動を根気よく続けた結果、長野県の野菜の摂取量は日本一となり、ついには男女とも日本一の長寿県となったのです。

ちなみに、寒天みそ汁の作り方は、とても簡単です。棒寒天は、使用する分を水に浸けて、前もってやわらかくしておきます。みそ汁を作る際、ちぎって入れ、1分ほど中火で温めればいいでしょう。

最近は、特に独り暮らしのお年寄りで、1個のコンビニ弁当を2回に分けて食べ、1日の食事としているかたもいるそうです。

しかし、そうした食事を続ければ、栄養不足に陥ってしまうおそれがあります。栄養が足りず、虚弱状態(フレイル)になれば、認知症のリスクも大幅にアップしてしまいます。

具だくさん寒天みそ汁のよいところは、自炊をしないかたでも、簡単に作ることができる点です。卵を落としたり、サバ缶を加えたりすれば、高齢者に不足しがちなたんぱく質の補給にも役立ちます。

たっぷりの食物繊維とビタミン、ミネラルを取ることができますから、ぜひ、寒天みそ汁を定期的にとる習慣をつけてほしいと思います。

むろん、寒天みそ汁が勧められるのは高齢者だけではありません。働き盛りで忙しく、食事をきちんととれないというかたにもお勧めです。朝に1杯の寒天みそ汁を食べる習慣がつけば、健康度が大きくアップするでしょう。

寒天みそ汁の作り方

【材料】(2人分)
・棒寒天…1/2本(糸寒天の場合、ひとつまみ)
・みそ…大さじ1/2
・だし汁…300ml
そのほか、好みの具材をなるべく多く入れる。

画像: 【寒天の栄養】鎌田實医師が提案 長野県を長寿日本一に導いた寒天みそ汁の作り方

【作り方】
鍋に具材とだし汁を入れ、火にかける。棒寒天は水に浸けておく。
煮立ったら寒天をちぎって入れ、中火で1分ほど煮る。
火を止めて、みそを溶き入れ、器に盛る。

[別記事:【寒天の健康効果】血糖値、血圧、体脂肪率の改善に メタボ外来の医師が推奨→

画像: この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。

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