食べ物の通過を遅くして、消化器を守るためのクッションに適しているのは、たんぱく質と食物繊維、脂質を多く含む食品です。納豆とみそ汁は、脂肪肝や動脈硬化、糖尿病、高血圧などの予防にも役立ちます。【解説】浅部伸一(自治医科大学附属さいたま医療センター消化器科医師)

解説者のプロフィール

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浅部伸一(あさべ・しんいち)
自治医科大学附属さいたま医療センター消化器科医師。1990年、東京大学医学部卒業後、同大学附属病院、虎の門病院、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科准教授などを経て、現在はアッヴィ合同会社で新薬開発に従事。『酒好き医師が教えるもっと!最高の飲み方』(日経BP)などの監修書がある。

納豆のネバネバが胃粘膜を保護して炎症を抑える

[別記事:納豆!寒天!ショウガ!みそ汁レシピ→

私は、消化器内科のなかでも肝臓が専門です。そのため、「健康的なお酒の飲み方」についてお話しする機会が多々あります。その際、悪酔い・二日酔いの予防にいい食品として、お勧めしているのが納豆です。

「酒は百薬の長」ということわざのせいか、酒(アルコール)が刺激物であることを知らない人が少なくありません。お酒が肝臓に負担をかけることは知っていても、食道や胃の健康を損なうという認識は薄いようです。

消化器を守るために、飲酒前の食事や、酒の肴には、消化に時間のかかる物がお勧めです。

胃にクッションを置き、食べ物の通過を遅くして、アルコールの吸収を穏やかにするためです。クッションに適しているのは、たんぱく質と食物繊維、脂質を多く含む食品です。

そして、この三つの栄養素を兼ね備えているのが、納豆なのです。

納豆の原料である大豆は、別名「畑の肉」。良質のたんぱく質が豊富です。たんぱく質は、胃と腸でアミノ酸に分解されてから、肝臓に運ばれます。アミノ酸は、肝臓の解毒作用やアルコール代謝促進など、肝機能を向上させる作用があります。

食物繊維に関しては、水溶性と不溶性の両方をバランスよく含んでいます。

さらに大豆は、油がしぼれるほど、脂肪が豊富です。大豆油は、マヨネーズなどの原料になっています。

たんぱく質と脂質を多く含むという点では、チーズや鶏の唐揚げもいいでしょう。ただし、カロリー(エネルギー)と塩分が高い点が問題です。

おつまみの定番、枝豆も大豆なのでお勧めです。それにも増して、私が納豆をお勧めするのは、発酵によって生じたネバネバが胃粘膜を保護して炎症を抑え、翌日の胃の不快感を緩和する効果も期待できるからです。

最近は、みそ汁に納豆を入れる「納豆みそ汁」も人気のようです。アルコールの利尿作用による脱水の予防に、お酒の前、もしくは同時並行で、納豆みそ汁を飲むのもいいと思います。

納豆が嫌いでも、みそ汁に入れると食べやすいという人もいます。納豆が苦手な人は、試してみるといいでしょう。

忙しい現代人に最適な健康食

納豆とみそ汁は、脂肪肝や動脈硬化、糖尿病、高血圧などの予防にも役立ちます。

脂肪肝と診断される人の多くは、「食べ過ぎ」です。特に糖質の摂取量が多く、「天丼+ざるそば」「ラーメン+チャーハン」など、「糖質+糖質」の食事を好む傾向にあります。一汁三菜の定食にすると、「ご飯大盛り」にしてしまうのです。

満腹感を得たいなら、ご飯を軽めにして、納豆をプラスするのがお勧めです。納豆は腹もちがよく、米に比べて糖質が少ないので、脂肪肝や糖尿病、高血圧の予防になります。

納豆やみそは、大豆を納豆菌や麹菌で醸したものです。菌によって作り出された物は、毒にも薬にもなります。人間にとって害があるのが腐敗、益があるのが発酵ともいえるでしょう。

納豆とみそが、古くから食べられているということは、安全性が確認されて、「人間にとって益がある」と考えられているということでしょう。

毒にも薬にもなるといえば、抗生物質が挙げられます。抗生物質は、カビや細菌が分泌した物質で、ほかの微生物などを抑える作用があります。

そのため、感染症の治療に使われますが、昨今、濫用によって、有益な腸内細菌まで殺してしまうことが問題になっています。

私自身、患者さんにも自分にも、薬は必要最低限しか使いません。薬によって、腸内環境が乱れると、免疫機能まで乱れてしまうからです。そして、納豆やみそ汁、ヨーグルトなど、腸内細菌を元気にするような食品を積極的にとっています。

私は関西出身で、実家では納豆を食べたことがありませんでした。東京に出てきて、初めて納豆を食べ、大好物になりました。「納豆ご飯をおかずに納豆ご飯を食べる」こともあったほどです。

今も、朝食には納豆とご飯、みそ汁が定番です。昼食には、自家製ヨーグルトを持参することも。発酵食品をとると、体調がいいように感じます。

最近では、納豆やみそなど、大豆の発酵食品に含まれるポリアミンという成分が注目されています。

ポリアミンの効能の一つが、抗炎症作用です。炎症性サイトカインという物質を抑制し、動脈硬化を防ぎます。ポリアミンの抗炎症作用については、自治医科大学附属さいたま医療センターの早田邦康教授らの研究で報告されています。

多方面から私たちの健康長寿を支えてくれる、納豆とみそ。これらを同時にとれる納豆みそ汁は、忙しい現代人に最適な健康食といえるでしょう

[別記事:納豆!寒天!ショウガ!みそ汁レシピ→

画像: この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。

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