解説者のプロフィール

駒形依子(こまがた・よりこ)
こまがた医院院長。東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科などを経て、2018年、山形県米沢市にこまがた医院を開業。「子宮が大好きすぎる産婦人科医」として、西洋医学・東洋医学の視点から、患者さん自身で行える子宮のケア方法を多く提案している。著書『子宮内膜症は自分で治せる』(マキノ出版)が好評発売中。
ブログ「気まぐれ産婦人科医のひとりごと」https://ameblo.jp/zzz859225/
むくみとたるみは睡眠中の冷えが原因
「冬になると、顔がむくみやすくなる」「肌の乾燥だけでなく、たるみもひどくなった」と実感しているかたは、少なくないはずです。
その原因は、睡眠中の冷えにあります。いくら寒くても、頭まで布団をかぶって眠るわけにもいきません。ですから、頭部が冷たくなって血流が悪くなってしまい、体の余分な水分が皮膚の下にとどまって、むくみが生じます。
また、顔が冷たくなると、ほおなどの筋肉がこり固まって、動きにくくなります。そのため、筋肉によって皮膚が引き上げられなくなり、たるんでくるわけです。
冬のむくみとたるみを防ぐには、睡眠中の頭部の冷えを解消することが大事です。
それにはまず、綿の枕カバーを使のは控えるようにしましょう。綿は、肌触りはいいのですが、気温が低いときには冷たくなってしまう素材のため、頭部を冷やすことにつながるのです。
ですから私は、フリース素材のマフラーやひざ掛けなどを折り畳んで、枕代わりに使うことをお勧めしています。
加えて、寝るときに腰の下に電気毛布を敷くなどして、体を温めます。その理由は、寝返りしやすくするためです。
私たちは、寝ている間に体の向きを変えていますが、こうして寝返りを打つことで、昼間の疲れを解消しているのです。同時に、体がさまざまな方向に動いて、血流も促されています。
ところが、寒さを我慢して布団に入っていると、体に力が入るうえ、寝返りをしなくなってしまいます。
睡眠中に体を温めるポイントは、足もとではなく、腰です。
寝ている間は、体内にこもった熱を足の裏から発散させることで、体温を調整しています。そのため、足だけを温めていると、体温調整がうまくいかなくなって、疲れが取れにくくなるのです。
加えて、足よりも腰を温めたほうが、寝返りがしやすくなります。ぜひ実際に試して、違いを確認してほしいと思います。
朝起きたときのむくみやたるみを解消するには、「胸鎖乳突筋はがし」と「肩甲骨はがし」をお勧めします。肩甲骨から上の筋肉をほぐすことが効果的です。下項にやり方を紹介していますので、ぜひお試しください。
肩甲骨に付着している筋肉が硬くなってしまうと、リンパ液や血液の流れが悪くなり、老廃物を排出する力が低下します。特にスマートフォンを長時間使う人は、筋肉と筋肉がくっつき、硬くなっているのです。
肩甲骨はがしを行って筋肉が動きやすくなると、うっすらと汗をかくほど体が温まります。これはリンパ液や血液の流れがよくなった証拠で、その場で顔のむくみやたるみが消えることもあります。
2カ月で首がほっそりして二回りスリムになった例も
今回紹介したメソッドは、毎日、すべてを行う必要はありません。
また、「やらなくてはならない」などと、義務的に思わないでください。すべてをがんばろうと気合を入れると、逆に長続きしないものです。
「布団から出てトイレに行くついでに」「ドライヤーをするついでに」「化粧水を塗るついでに」と、何かのついでに、気になる部分をほぐすことを習慣化するといいでしょう。
肩甲骨から上の筋肉をほぐすメリットは、顔のむくみ・たるみが解消するだけでなく、全身の老廃物が排出されやすくなって、体の内側から健康で美しくなるという点にもあります。
私は婦人科・漢方内科の医師として、不妊症や生理トラブルに悩まされている患者さんを診察しています。
患者さんたちには肩甲骨はがしなどのセルフケアをやってもらうのですが、症状の改善だけでなく「肌がキレイになりました」「やせられました」といったうれしい報告もいただいています。
例えば、不妊症で受診された40代のある女性は、最初にお会いしたときには、全体的に太っているという印象で、首回りが太くなり、肩が盛り上がるようにぜい肉がついていました。
それが、セルフケアを始めてもらって2カ月ほどで、首回りがほっそりし、二回りもスリムな体形に変身され、指導をした私のほうが驚きました。
顔のむくみやたるみは、年齢的な問題ではなく、冷えによって老廃物がたまっている証拠と考えてください。
顔や体を冷やさないようにする小さな工夫やセルフケアで解消できます。そうした工夫やケアで、毎日を健康で楽しく過ごしてください。
「顔のむくみ・たるみ解消セルフケア」のやり方
胸鎖乳突筋はがし
胸鎖乳突筋の場所
胸鎖乳突筋は、首の前側で両わきにある


❶首の後ろ側にある太い筋肉を、親指と人さし指で挟んで、全体的によくもみほぐす

❷首のつけ根を、両わきから両手でつかみ、よくもみほぐす

❸鎖骨の上のくぼみに、人さし指・中指・薬指の指先を入れて、押してほぐす

❹耳のつけ根を人さし指と中指で挟み、上下に3〜5回ほど動かしてほぐす

❺④の人さし指と中指を耳たぶの下に移動させ、指先を当てて、小さく円を描くように3〜5回ほど動かしてほぐす

❻額に手のひらのつけ根(掌底)を当て、円を描くように動かしながらほぐす

❼右側の胸鎖乳突筋を、左手の親指と人さし指で挟んで、よくもみほぐす。左側も同様に行う
胸鎖乳突筋はがし

準備体操❶
両腕を上げて首の後ろで手を組み、両腕を左右にゆっくり傾けながら、わきをしっかり伸ばす

準備体操❷
上げた腕をできるだけ後ろに伸ばす
※どちらも3〜5回ほど、無理のない範囲で行う

❶ひじを曲げて、左右の肩をそれぞれ痛みが出ない程度に回す。左右差がある場合は、回しにくいほうを多めに回してみる

❷両方の腕を回して、肩がいちばん上がったところで止める

❸そのまま肩甲骨を限界まで寄せた状態で、いったん肩を下げた後に、両方の腕をゆっくりと後ろへ3〜5回ほど回す

この記事は『ゆほびか』2020年3月号に掲載されています。
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