副鼻腔炎や花粉症などによって炎症が起こっている場合、鼻腔内にたまった細菌、ウイルス、花粉、膿などを除去する必要があります。鼻うがいをする際は生理食塩水、重症である方の場合、重曹を使って鼻うがいをしてみましょう。【解説】北西剛(きたにし耳鼻咽喉科院長・医学博士)

解説者のプロフィール

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北西剛(きたにし・つよし)

きたにし耳鼻咽喉科院長。医学博士。1966年、大阪府守口市生まれ。滋賀医科大学卒業。2005年、生まれ故郷である守口市に、きたにし耳鼻咽喉科を開設し、現在に至る。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本気管食道科学会専門医。日本アーユルヴェーダ学会理事長。日本胎盤臨床医学会認定医・理事。阪神タイガースネット検定合格。『慢性副鼻腔炎を自分で治す』(マキノ出版)など著書多数。
▼きたにし耳鼻咽喉科(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

塩や重曹を溶かせば鼻がツーンとしない!

アレルギー性鼻炎、特に花粉症は、本来は体を守るための反応でもあるので、根治は非常に困難です。したがって、薬の助けを借りて、なんとかうまくつきあっていくことも大切です。

また、副鼻腔炎に罹患した場合も、慢性化すると改善には困難が伴います。

こうした鼻のトラブルの対策には、耳鼻咽喉科で治療を受けることに加えて、日ごろからセルフケアを行うことが重要です。なかでも「鼻うがい」は非常に効果的な方法です。

私は、鼻づまりや鼻水、後鼻漏(鼻汁がのどに垂れる症状)などの鼻の症状で来院した患者さんのほとんどに、鼻うがいを勧めており、すばらしい効果を上げています。

副鼻腔炎や花粉症などによって、鼻腔内で炎症が起こっている場合、症状の改善には、鼻腔内にたまった細菌ウイルス花粉などを除去する必要があります。

通院して処置すれば、それをきれいにすることができますが、毎日耳鼻科に通うのも大変です。

そこで、鼻をかんだりうがいをしたりするわけですが、それだけでは、異物や膿の除去は十分にはできません。

そこで役に立つのが鼻うがいです(やり方は下記参照)。鼻うがいは、普通のうがいなどでは直接働きかけることができない鼻腔内を、生理食塩水で洗浄する方法です。

鼻うがいをする際は、必ず塩を溶かした生理食塩水で行います。生理食塩水は、血液や組織液と浸透圧が等しい約0.9%の物です。これを用いて鼻を洗うことで、ツーンと水が痛むことが少なくなります。

鼻うがいは、できるだけ下を向いて行ってください。上を向いて鼻うがいを行うと、中耳に水が入り、中耳炎などを引き起こすリスクがあるので、十分注意してください。

また、副鼻腔炎などの症状が重症であるかたの場合、重曹を使って鼻うがい
をしてみましょう。重曹が、鼻水や膿の粘度を下げ、排出を促す力を高めてくれます。

鼻うがい用には、スーパーなどで市販されている食用の重曹が使用できます。分量は、生理食塩水を作る際に、重曹を2.5g加えて、同様の手順で行ってください。

「鼻うがい」のやり方

【用意する物】
うがい液を入れるプラスチック製の液体容器(先端が細くなっているドレッシング用など)
※薬局などで、鼻洗浄用のボトルを購入してもよい
イヤホンパッド(シリコン製の物)
塩…5g
ぬるま湯500ml

画像1: 「鼻うがい」のやり方

液体容器の先端に、イヤホンパッドを取りつけ、中に塩とぬるま湯を入れて、よく振って溶かす。

画像2: 「鼻うがい」のやり方

洗面台に顔を突き出し、あごを引いて、ボトルを鼻の穴にあてる。
「あー」と声を出しながら、ボトルを押して水を出し、鼻腔内を洗う。

においがわかる!鼻呼吸も普通にできる!

鼻うがいが、特に効果を発揮した症例をご紹介しましょう。

Sさん(50代・男性)は、数年来、副鼻腔炎をくり返してきた患者さんです。朝、目が覚めるといつものどがひどくヒリヒリすると訴えていました。これは、寝ている間ずっと口呼吸をしているせいでしょう。

さらに、後鼻漏に悩まされているほか花粉症にもなっており、常に鼻炎が続いているような状態でした。3年くらい前からは、嗅覚障害も発症していました。

詳しく診察した結果、慢性副鼻腔炎と花粉症だけでなく、のどの奥の上咽頭に炎症が起こる「慢性上咽頭炎」にも罹患していることがわかりました。そこで、通院治療に加えて、ご自宅で毎日の鼻うがいをお勧めしたのです。

Sさんは、鼻うがいを毎日きちんと続けてくれました。それが奏功して、数ヵ月後には副鼻腔炎や花粉症の諸症状が劇的に改善しました。においもわかるようになって、後鼻漏も解消。鼻での呼吸も普通にできるようになったのです。

鼻うがいは、いってみれば、鼻のトラブル全般に対応できるセルフケアです。

慢性・急性の副鼻腔炎花粉症などのアレルギー性鼻炎好酸球性副鼻腔炎慢性上咽頭炎など、ほとんどの鼻の疾患に対して、非常に有効です。

Sさんのように継続して行えば、鼻づまり鼻水頭痛嗅覚障害後鼻漏のどの違和感など、多くの症状が軽快していくでしょう。また、通常ののどのうがいと並行して行えば、カゼやインフルエンザの予防にも大いに役立ちます。

安価で簡単な鼻うがいを、ぜひ実践してください。

画像: この記事は『壮快』2020年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年2月号に掲載されています。

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